七夕の夜に注目の天体現象「準惑星ケレスが”衝”」! ところで「準惑星」「衝」とは?
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    2024.07.06

    七夕の夜に注目の天体現象「準惑星ケレスが”衝”」! ところで「準惑星」「衝」とは?

    準惑星ケレス。球体でクレーターもたくさん見える。© NASA / JPL-Caltech / UCLA / MPS / DLR / IDA / Justin Cowart

    七夕は織り姫と彦星が出会う夜……今年はちょっとマニアックに準惑星ケレスの「衝(しょう)」に注目してみましょう。準惑星についてもご紹介します。

    織り姫と彦星のデート中に、いて座では……

    七夕は、こと座の1等星ベガと、わし座の1等星アルタイルが主人公です。ベガが織り姫、アルタイルが彦星です。7月の初旬、21時頃にはまだ東の空にありますが、夜中にかけてグーッと天高く昇ります。

    さて、織り姫と彦星がランデブーしている頃、天の川を南に下っていくと、いて座のあたりで、注目の天体現象があります。火星と木星の間を回っている準惑星ケレスの衝です。

    7月7日21時の南東の空。七夕の主役は、天の川をはさんだこと座のベガとわし座のアルタイルだが、今年は天の川を南に下って、いて座に注目。準惑星ケレスが衝を迎えている! 下はその拡大図。(画像:ステラナビゲータ/アストロアーツ)

    衝とは、地球の外側にある惑星が、太陽の反対側に来る時です。地球からの距離が一番近くなるので一番明るくなります。惑星ではないけれど、火星と木星の間にある準惑星をこの目で見るチャンスはなかなかありません。

    といっても、明るさは7等級。双眼鏡か望遠鏡がないと見ることはできません。そもそも「準惑星」って何? と思う人も多いでしょう。

    リュウグウより大きいが冥王星より小さい、その名はケレス

    太陽の周りを回る天体で「惑星」がつくものとしては、惑星、準惑星、小惑星があります。もっとも大きな違いは大きさです。基本的には惑星>準惑星>小惑星の順番です。

    国際天文学連合ではこれまでに5つの天体を準惑星として認めています。準惑星ケレスの直径は約950kmです。一番大きな準惑星は直径23700kmの冥王星で、このほかにエリス、マケマケ、ハウメアという準惑星がありますが、いずれも大きさは、直径1000kmを超えています。つまり、ケレスは準惑星の中で一番小さいということになります。 

    ところで準惑星とは何でしょうか? ここには冥王星のちょっと悲しいドラマがあります。

    冥王星が準惑星になったのは2006年。それまでは地球や水星、金星、火星、木星、土星、天王星、海王星と並ぶ9番目の、太陽から一番遠い惑星でした。

    2015年にハッブル宇宙望遠鏡がいろいろな角度から撮影した冥王星。©NASA,ESA and M. Buie (Southwest Research Institute)

    しかし、技術が進んで冥王星より遠くの天体を観測できるようになると、冥王星クラスの大きさの天体がゴロゴロあることがわかってきました。これらをすべて惑星にカウントしていたら、とんでもなく増えてしまいます。

    ちなみに、水星直径は4880km。地球の衛星の月でも3500kmあります。2400kmの冥王星が惑星というには小さすぎることも指摘され、冥王星を惑星カテゴリーから外そうという話になったのです。

    それまでは太陽を回る軌道をもつ惑星以外の天体のうち、尾を伸ばす「彗星」を除いたものは、みな「小惑星」と呼ばれていました。しかし小惑星には、日本の探査機「はやぶさ」が向かったイトカワ、リュウグウといった直径数百メートル規模の天体も含まれます。しかも、こうした天体は球体ではなく、いびつな形をしています。冥王星がいくら小さいからと言って、これらいびつな小惑星と一緒にしていいものか?

    うした経緯から、国際天文学連合は、太陽を回る軌道をもち、かつ球形である天体を「準惑星」とすることにしました。球形を保っていることは、ある程度の質量を持つ証明になるのです。冥王星はこのカテゴリーに落ち着くことになりました。

    「矮惑星」をやめて「準惑星」になったワケ

    日本語の「準惑星」という用語には、ちょっとややこしい事情があります。

    実は、英語で「小惑星」はasteroid(アステロイド)と呼ばれます。asteroidaは「ほぼ」という意味なので、asteroidは「ほぼ星」という意味です。ほぼ星、とはどういうことでしょうか?

    木星や土星などの惑星を望遠鏡で見ると、地球から近いために丸く面をもって見えますが、恒星はポチッと点にしか見えません。小惑星も小さすぎて望遠鏡で見てもポチッと点しか見えないので、“ほぼ星”です。彗星はボオッと尾が引いていますが、小惑星にはそれもありません。一見、星に見えるということで、ほぼ星、asteroidと名づけられたのです。

    一方、準惑星の英語はdwarf planet dwarfはこびと、矮小といった意味ですから、これぞまさに「小惑星」と呼べるのですが、日本では天文用語のdwarfを「矮」と訳すことが多いため(例えばwhite dwarf=白色矮星)当初は「矮惑星」という用語を使っていました。しかし、いかにも言いにくい、書きにくい、イメージもイマイチということからか、後に日本学術会議が正式に決めた訳語では「準惑星」に改められたという経緯があります。

    という少々人間くさいドラマを持って生まれた準惑星。七夕の夜に織り姫、彦星を見つけたら、準惑星ケレスという小さな惑星にも注目してください。

     構成/佐藤恵菜

    私がガイドしました!
    星空案内人
    廣瀬匠

    星空案内人 天文系ライター。株式会社アストロアーツで天文ニュースの編集などに携わる。天文学の歴史も研究していて、パリ第7大学で古代インドの天文学を 扱った論文で博士号を取得。星のソムリエ®の資格を持つ案内人でもある。アストロアーツより、宇宙の不思議に出会うモバイルアプリ「星空ナビ」が好評発売中。

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