4ヶ月だけ観光できる謎だらけのスポット!オーストリアのカールバッハに潜入【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】
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    2024.08.14

    4ヶ月だけ観光できる謎だらけのスポット!オーストリアのカールバッハに潜入【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】

    4ヶ月だけ観光できる謎だらけのスポット!オーストリアのカールバッハに潜入【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】
    どうも。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。今回は「オーストリア」からお届けします! はい、「ラリア」ではなく、「オーストリア」。ヨーロッパにある歴史ある国です(当地では「カンガルーはいません」というギャグがよく使われるのだとか。笑)。

    さて今回の旅で訪れたのはモーツアルト生誕の地としても有名な「ザルツブルク」と、その東に位置する「ザルツカンマーグート地方」(オーバーエステライヒ州とザルツブルク州とザルツブルク州またがるエリア)です。これ、全部タイトルに入れるとB’zの「愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない」みたいなK点越えの話になるので、便宜上【ザルツブルクとその周辺旅】としています。

    【オーストリア・ザルツブルクとその周辺旅vol.1】この日の旅は「秘境」への「廃墟ツアー」!?

    ザルツカンマーグート地方はこんな「ザ・風光明媚」な場所です。アウトドア好きなら間違いなく「ほれてまうやろ」感満載のエリア。

    さてさてそんなザルツブルク旅もいよいよ最終日を迎えました!なんで【ザルツブルクとその周辺旅vol.1】が旅の最終日の話から始まるのかというと、20249月末で終了するイベントもこの中で紹介したいからです!

    その日の朝、我々海外プレスツアー(メディアツアー)一行は「トラウンキルヒェン」という街に向かいました。ザルツブルクの東、列車を1回乗り換えて最短約1時間半の場所です。

    到着したのが「トラウンキルヒェン」の「トラウン湖」。ボート乗り場は「ザ・快晴」。

    素晴らしい旅を予感させてくれる好天です。

    そんな中、映画「マトリックス」を連想させるような海老反りの像。相変わらずたとえが古いな。

    前日の朝軽いギックリ腰を発症して背筋が鉄板のように固まっている私には、うらやましくてたまらないかったですが。笑

    さらには「仕込んでいるのか?」と疑いたくなるようなハクチョウ一家のお出迎え。慌てて撮影したけど見切れちゃったから…やっぱり「仕込み」じゃないようです。笑

    そんな最高の旅日和の中、船で「トラウン湖」を横切ります。

    絶好の探検日和の中、いよいよ上陸!

    そんなこんなで到着したのが湖の対岸。

    上陸後もご覧の天気で一同意気揚々! ところが…。

    ここは「カールバッハ(Karbach)」という場所なのですが、グーグルマップなどで検索しても出てきません!しかもグーグルマップでは「トラウンキルヒェン」からここまでの「航路」も表示されない!

    ただ単に湖をわたっただけなのに「秘境」というよりもまるで「異次元世界」に迷い込んだような話ですが…理由はのちほど判明します。

    船着き場にあった案内板。ここが「カールバッハ」であることも、「トラウンキルヒェン」などへ輸送してくれることも明らかなのですが…。

    じつはここの山は石灰岩の採掘場下にある処理場跡である模様。ということは「廃墟ツアー」ということなのでしょう。

    いろいろな建物が点在しています。

    すぐに我々一行は「安全確保のため」という理由で蛍光色の安全反射ベストとヘルメットを着用させられました。するとなぜか空模様まで「仕込んでいるのか?」と疑いたくなる絶妙のタイミングで荒れてきました。まさに「風雲急を告げる」状態。

    「危険地帯」とは言わないが、「多少のアクシデントはあるかもしれない程度の場所」には向かうということで、ちょっとワクワク。

    アートに彩られた異世界へ

    建物の中にはアートが展示されています。無骨な作業場の建物とアートのアンバランス。「マッドサイエンティストの秘密の実験室」感がなかなか良いです。

    別の小屋にあった石灰岩採掘場の模型。ここにもアートあり。

    安全ベストとヘルメットに身を包んだ我々は探検隊気分でさらに奥地に進みます。

    鉄パイプで組まれただけの階段。

    トロッコの配線跡と鉄柵。

    右側のベルトコンベアかなにかにかけられたまま放置されているハシゴ。

    棄て去られた「廃墟」感がさらに増します。いったい我々はどこに連れていかれるのでしょうか。

    到着したのはトタンの壁の一部が剥がれ落ちた建物。

    そこに吸いこまれていく探検隊一同。

    ガイドさんの案内があるとはいえ、「入っていいのか? 倒壊しないか?」という疑問が。「ああ、そのためのヘルメットか」と一瞬安心しかけたけど、倒壊されたら焼け石に水。

    ちなみにこのあたりでは朝の「好天」から一変して、嵐のような強く冷たい風が吹きすさぶ「荒天」になりました。「廃墟ツアー」らしいおどろおどろしい雰囲気を高めてくれるのはいいけど、マジで倒壊しないか心配。

    トタンの壁の一部が落ちている割には意外と清潔に保たれている内部。このあとその衝撃の理由が明らかに!…仰天ニュース系のテレビのかっ!笑

    次に我々が向かったのは採掘した石灰岩をトロッコだかベルトコンベアだかで運ぶトンネルの中。

    ここでも光を使ったアートが展示されていました。トンネルの奥から光が順繰りにこちらに向かってくるという作品。

    「廃墟にアート」の驚くべき理由が判明!

    …いや、待て待て待て。ちょっと待て。さっきからなんで廃墟にアート?奇妙で独特の雰囲気を醸し出しているのはわかるのですが…。あとなんで建物内の施設は埃をかぶってないの?疑問点は素直にガイドさんに訊きます。

    「いや、ここ廃墟じゃないですよ~。今も使われている施設です」。なんとも意外な返事が来ました。詳しく訊くと「現在も山の上では実際に石灰岩の採掘が行われていて、これらの施設も使われているんです」とのこと。

    「いやいやいや、そんなところに入ってきていいんですか?」。作業の邪魔でしょうし。

    「月曜日から木曜日は作業員たちが来て仕事をしますが、金曜日から日曜日まではアート鑑賞を兼ねたツアーを行っているんです」

    確かに訪れたのは土曜日です。

    「とはいえ今だけ限定なんですけど。そして上陸できるのは基本的にはツアー参加者だけです」。この上陸ツアー、2024519日から929日まで限定とのこと。「しかも安全上の理由から自由に歩き回ることは許されなくて、必ず我々ガイドとともに定められたルートを進んでもらっています」

    グーグルマップに地名も航路も出てこないのにはそういう理由があったのです!ちなみに当然月~木曜日は採掘場の作業員たち限定で乗船できるとのこと。

    というわけで安全上の理由により、こんなワクワク感溢れる階段の先は立ち入り禁止です。

    じつは今回のプレスツアーは「バート・イッシュル/ザルツカンマーグート」が今年「欧州文化首都」に選ばれたので、それを紹介するという意図で招待を受けたもの(バート・イッシュルはザルツカンマーグート地方の中核都市)。「欧州文化首都」というのは欧州連合(EU)から指定を受けた都市が、一年間にわたり文化行事を展開する制度です。近年は毎年23都市選ばれるのが常とのこと。

    そして「欧州文化首都」はテーマを決めてそれに関する展示やらイベントやらを行うのですが、「バート・イッシュル/ザルツカンマーグート」のそれは「塩」。というのはこのあたりは7000年前から岩塩の採掘がおこなわれていて、昔は特に内陸部では塩は貴重なものであったため、非常に栄えたことからこのテーマが選ばれたとのことです。ちなみにザルツカンマーグートやザルツブルクのザルツ(Salz)はドイツ語で塩の意味。

    さて「塩がテーマなのになんでまた石灰採掘場?」という素朴な疑問が頭に浮かんだ人もいるかもしれないが、訊くのはヤボというものです。…はい、すみません。私、聞きそびれました。とにかく。

    そっかあ。廃墟じゃなかったのか。笑

    そういえば上陸直後に結構新しめで「廃墟」感などどこにもなく、「現役で使われている」感満載のパワーショベルを背景に自撮りしたことを想い出しました。

    廃墟には似つかわしくない新しさ。…この時点で変だと気づけ、私。

    今後もずっと公開し続けてほしいという願いを込めて

    だがしかしです!せっかくこんなにユニークな施設があるのだから「期間限定」でしか公開しないのはもったいない。こうした石灰採掘場兼処理場に足を踏み入れる機会はそうはなく、ワクワクする人も多いはず。

    願わくはもう少し道を整備して山頂方面にある採掘場を見ることができるようにすれば、アトラクションとして人気を呼ぶでしょうし。

    ちょっと偉そうにすると「ジャーナリストの使命」って「事実を書く」ことだけではなくて、「こうしたほうがいい」と提言することだと私は信じているのでそんな話をガイドさんにしていたところ、目の隅に不思議な光景が。なんと誰もいない道をトレッキングポール片手に歩いている男性を発見したのです。

    「ああ。年に一度マラソン大会があって、その試走で訪れているんですよ」

    なんだ、来ることはできるのか。まあ、湖の対岸ということは陸続きだし。というわけで興味がある人はぜひ。

    今度来るときは永続的に一般公開されていますようにという願いを込めて。アディオス! いや、それはスペイン語か。アウフ・ヴィーダーセーエン!

    「島」ではないし「廃墟」でもありません。でも「船でサクッと渡れる異世界」ということで、私はここを「オーストリアの猿島」と呼ぶことにしました。それで猿島くらい人気の観光地になったらいいな。

    【柳沢有紀夫の世界は愉快!】シリーズはこちら

    オーストリア政府観光局

    https://www.austria.info/jp/

    欧州文化首都バート・イッシュル/ザルツカンマーグート(同観光局)

    https://www.austria.info/jp/service-and-facts/about-austria/anniversary-year/european-capital-of-culture-salzkammergut-2024

    私が書きました!
    オーストラリア在住ライター
    (海外書き人クラブ)
    柳沢有紀夫
    1999年からオーストラリア・ブリスベン在住に在住。オーストラリア関連の書籍以外にも『値段から世界が見える!』(朝日新書)、『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか?』(新潮文庫)、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)、『世界ノ怖イ話』(角川つばさ文庫)など著作も多数。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」のお世話係。

     

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