まずは草木染めの準備をしよう
草木染めは、染める工程に入る前にいくつか準備をしなければいけません。まずは、草木染めに必要なものと、大まかな全体の流れを把握しておきましょう。
用意するもの
草木染めに必要なものは、以下の通りです。
- 染める布
- 染料となる植物
- ミョウバン
- 豆乳
- ボウル
- 2重底の鍋
- 洗い桶
- トング
- ゴム手袋
- 温度計
- 洗濯ネット
布の種類や大きさは、好みで選んで問題ありません。ただし、きれいに染めるのに適しているのは『天然繊維』です。
布の次に、染料となる植物を用意します。植物が乾いた状態なら、布と同じ重さの量が必要です。さらに、もう一つ重要なアイテムがミョウバンです。媒染液を作るために必要なもので、布への色素の定着を助けます。
草木染めの流れ
草木染めのプロセスは、大まかに以下の五つの工程に分けられます。
- 布の下処理をする
- 染液を煮出す
- 媒染液を作る
- 布を染める
- 媒染液に浸す
布はカラっと乾燥させるために、よく晴れた日に下処理をしておきましょう。
染める当日は、まず植物から染液を煮出します。できあがった染液に布を浸している間に、ミョウバン媒染液を作っておきます。
最後に布を媒染液に漬け、水洗いしてから乾燥させれば草木染めの完成です。
ミョウバン媒染液の作り方
『ミョウバン媒染液』は、普段あまり耳にする言葉ではありませんが、草木染めの仕上げに欠かせない材料です。ミョウバンの役割と、媒染液の作り方について見ていきましょう。
そもそもミョウバンの役割とは
ミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム)は、草木染めの『媒染』と呼ばれる工程で使用されます。媒染とは、布の繊維に色素を定着させ、染料の発色をよくする作業のことです。
薬品名を聞くと「使って大丈夫?」と不安になるかもしれませんが、ミョウバンは食品にも使われるため、手に触れても問題ありません。
ミョウバンから発生する金属イオンの作用により、布に色素がしっかりと結び付けられます。色持ちをよくするため、媒染工程は丁寧に行いましょう。
ミョウバンはどこで購入できる?
生(き)ミョウバンと焼きミョウバンがありますが、どちらを使用しても構いません。染め物用のミョウバンがなければ、購入しやすい焼きミョウバンを使いましょう。
焼きミョウバンは、料理にも幅広く使用されるため、スーパー・薬局・オンラインショップなどで簡単に手に入れられます。
スーパーでは、調味料や漬物コーナーに置かれていることが一般的です。余ってしまっても、ナスの色落ちや煮物の煮崩れを防いだり、山菜のアク抜きをしたりと、便利に使えます。
熱湯でゆっくり溶かす
ミョウバン媒染液を作る際には、布の重さの約10.0%の量のミョウバンを用意します。焼きミョウバンを使用する場合は、布の約5.0%の量が目安になります。
約100gの布を染める場合、生ミョウバンなら約10g、焼きミョウバンなら約5gが必要です。
水に対して約0.5%の割合で、ミョウバンを溶かしましょう。ボウルに熱湯を注ぎ、そこにミョウバンを少しずつ加えながらかき混ぜます。
熱湯を使用することでミョウバンがより早く、均一に溶けます。完全に溶けたら、媒染液の完成です。
意外と簡単!草木染めの基本的なやり方
草木染めにおいて大切な前処理から、染液の煮出し方、布を染めるプロセスまでを順序立てて解説します。各工程のポイントをチェックしていきましょう。
染める布の下処理をする
草木染めを始める前に、染める布の下処理が必要です。
- 布を洗濯する
- 豆乳1:水3の割合で豆乳液を作る
- 水で固く絞った布を約5分間漬ける
- よく乾かしておく
市販の布はのりやホコリを落とすため、先に中性洗剤でよく洗っておきます。次に、植物性の布を使う場合は、豆乳液に浸します。
布を豆乳に浸すのは、繊維に植物の色素を染み込みやすくするためです。まんべんなく染み込むように、豆乳液の中で布を広げるようにして漬け込みましょう。
植物から染液を煮出す
染料となる植物から、染液を煮出します。
- 染料となる植物を細かく刻む
- 鍋に水と1を入れて沸騰させる
- 60~90分間ほど煮込む
- 3の植物をこして染液にする
染料の植物をこす際は、ザルを使っても問題ありませんが、洗濯ネットや排水口ネットなどに入れたまま煮込めば、取り出すだけでよいので簡単です。
煮込む時間は、使用する植物によって変わります。染液が濃いほどしっかり染まるため、約30分ごとに様子を見て、十分に色を抽出できているか確認しましょう。
布を染めて媒染液に浸す
染液ができたら、次は布を染めます。染めるときのポイントは、以下の通りです。
- 2重底の鍋を使用する
- 染液の温度は40~60℃をキープ
- 理想の色より少し濃いめに染める
染液の温度が高いほど色鮮やかに染まりますが、約60℃が上限です。小まめに火を止めて、染液の中で布をかき混ぜながら煮込みましょう。
煮込む時間は約20分間が目安で、長く煮るほど色味が濃く出ます。乾かすと少し色が落ち着くので、「少し濃いかな」と思うくらいの色に染めるとよいでしょう。
布が鍋底や壁面に当たると染めムラが出やすいため、パスタ用などザル付きの鍋がおすすめです。
きれいに仕上がる!草木染めに適した素材
草木染めを思い通りに仕上げるには、適した素材選びが欠かせません。そこで、草木染めに適した素材と、染料におすすめな植物・食材について詳しく紹介します。
草木染めに適した素材
草木染めで染まりやすいのは、以下のような天然素材でできた生地です。天然繊維は、染料をしっかり吸収し、美しい色合いを長持ちさせる特徴があります。
- 植物繊維:コットン・リネン
- 動物繊維:シルク・ウール
- 化学繊維:テンセル・レーヨン
テンセルやレーヨンは化学繊維ですが、木材から作られているため草木染めができます。しかし、同じ化学繊維でも、ナイロンやポリエステルのような合成繊維は染まりません。
なお、草木染めでは、繊維のたんぱく質に色を付けます。そのため、シルクやウールなどの動物繊維には、豆乳液に漬ける下処理は不要です。
ただし、動物繊維であっても、脂や汚れを取り除く必要はあるので、染める前の洗濯は必ず行いましょう。
染料におすすめの植物・食材
草木染めの染料には、身近に手に入る植物や食材を利用することで、多彩な色合いを楽しめます。染料におすすめなのは、以下のような植物です。
- 黄系:タマネギの皮・ヒマワリの花・マリーゴールドの花
- 緑系:ヨモギ・赤しそ・レモングラス
- 赤系:アボカドの皮・紫キャベツ
黄色系の色合いを出すためには、ヒマワリやマリーゴールドがおすすめです。鮮やかな黄色からオレンジ色まで、幅広い色に染まります。
若草のような明るい緑色に染めるなら、ヨモギがぴったりです。レモングラスは、ベージュがかった落ち着いた緑色になります。
赤系の色を出すには、染液にクエン酸を混ぜるのがポイントです。赤しそは普通に染めると緑色になりますが、クエン酸を入れるとピンク色になります。
染め方いろいろ!草木染めの上級テクニック
染める前の生地に細工をすると、さまざまな模様を付けられます。意外なデザインが浮かび上がることもあるので、基本の染め方を覚えたらぜひチャレンジしてみましょう。
子どもも簡単に作れる「輪っか絞り」
生地に輪っかの柄を入れる方法です。やり方はとてもシンプルなので、初めて草木染めをする子どもにもおすすめです。まずは、以下の材料を用意しましょう。
- ビー玉(スーパーボール)
- 輪ゴム
輪の中心にしたい部分にビー玉を置いて包み、根元を輪ゴムでしっかりと留めます。染色液に漬けた後、ビー玉を取り除くと、周囲にきれいな輪っか模様が現れるでしょう。
ビー玉を包んだ根元にもう1個ビー玉を加えて絞れば、2重の輪っかができます。
思いがけない柄になるかも「板締め絞り」
同じ柄が並んだパターンデザインにしたい人は、板締め絞りに挑戦してみましょう。板締め絞りに使う材料は、次の2点です。
- 割り箸
- 輪ゴム
まず、生地をじゃばら状に折り畳みます。折る幅は割り箸よりも短くしておきましょう。次に2本の割り箸で生地を挟み、上下の割り箸の端を輪ゴムで留めます。
後は基本通り染めれば、割り箸で圧迫したところだけ白く浮き上がった模様になるでしょう。平行に置いたり斜めに置いたりと、どのように挟むかによって異なる模様が生まれます。
華やかな模様になる「渦巻き」
タイダイ染めでよく見られる渦巻き模様も、草木染めで作れます。2トーンの渦巻き柄は派手になりすぎないので、シンプル派の人も取り入れやすいでしょう。使う材料は次の2点だけです。
- 輪ゴム
- ひも
生地を平らな場所に広げたら、渦の中心にする部分を指でつまみます。つまんだまま左右どちらかに向かって、生地を全て巻き込むまでねじりましょう。
丸まった生地を、輪ゴムを数本使ってきつく縛ります。輪ゴムは切れやすいため、染めている途中でほどけてしまわないように、さらにひもで固定すると安心です。
好きな柄を描ける「縫い絞り染め」
自分の好きなデザインに染めたい場合は、縫い絞り染めという方法があります。縫い絞り染めで使う道具は、次の3点です。
- チャコペン
- 針
- 糸
まず、生地にデザインの下書きをします。直接描くのが難しい場合は、紙にマジックなどではっきりデザインを書き起こし、生地を重ねてチャコペンで写すとよいでしょう。
次に針と糸を使い、下書きに沿って並縫いしていきます。最後に糸の端を引き絞ると、輪ゴムで留めたときのように圧力がかかり、縫った部分が白抜きで浮き上がります。
まとめ
草木染めは、自然の恵みを生かした伝統的な布の染め方です。一度やり方を覚えてしまえば、難しいことはありません。
染料や染める時間によって色味が変わるので、毎回違う仕上がりになるのも草木染めの魅力です。輪っか絞りや板締め絞りなど、細工を施すのも面白いでしょう。
草木染めの染料には、身近なものを利用できます。いつも捨ててしまう野菜の皮などを使って、草木染めをしてみてはいかがでしょうか。