てなわけで我々が向かったのは「イエローウォーター」。そこでその名も「イエローウォータークルーズ」という1時間半~2時間のボートクルーズを楽しむのです。
どうも。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。
【世界遺産「カカドゥ国立公園」旅vol.3】ワニと野鳥とハスの楽園「イエローウォータークルーズ」へ
「イエローウォーター」というのはこのあたりの「川および氾濫原」の名称。「氾濫原」とは「毎年雨が多い時期には川から水が氾濫し、湖のようになる場所」というくらいの意味です。
雨が多い季節とほとんどない季節がある熱帯。「氾濫原」が広がるのは「洪水」のような「災害」ではなく、毎年やってくる「年中行事」みたいなものです。場所によって8メートルくらい水位が変わるのだとか!
平底のクルーズ船に乗って約1時間半の桃源郷への旅に出発。
今回の船長さん。名前を訊いてメモしたけど、紛失しました。すみません。
ちなみにこのイエローウォータークルーズに参加するのは確か5回目くらい。そのうち1度は夕方取材で乗ったあと「明日の朝もぜひ!」とお願いしたものです。
「船好きの少年かっ!」とツッコミを入れられそうですが、じつはこれが大正解! いちばんオススメの乗船時間帯は夕陽も素晴らしく、鳥たちの姿も夕映えする日没前なのですが、早朝の静かで幻想的かつ荘厳な雰囲気も捨てがたいのです。
たぶんイエローウォータークルーズを夕方遅くに体験される方々はこの近くに宿をとると思うので、できれば早朝もあわせて2回体験することを強くオススメします! ホント、イエローウォーターのまったく違った表情を楽しめますから。
ハスが彩る「極楽浄土」の世界
さてこのイエローウォータークルーズでのいちばんの呼び物はやっぱり「巨大イリエワニとの遭遇」。でもメインイベントは取っておくことにして、まずはその他の魅力を紹介しましょう。
まずはハスです!
白や紫の美しい花を見ていると…これはもうやっぱり西洋的な「天国」ではなく東洋的な「極楽浄土」「彼岸」の心の安らぎを感じます。
【世界遺産「カカドゥ国立公園」旅vo.1】で、〈初めてそこに行ったとき「あっ、ただいま」とふと口から洩れて〉いた場所があると書きました。「世界最後の日にはここで死にたい」と思った場所だとも。
それがじつはこのイエローウォーターなんです。このハスたちの「極楽浄土」「彼岸」らしさが、そういう気分にさせるのかもしれませんね。
ところでハスとスイレンの違いはご存じでしょうか。意外と知られていないんですよね、これは。
スイレンは水面に直接浮かぶように花が咲きます。一方ハスは水面からすっと茎が立ち上がっているのが特徴なんです。
野鳥とリフレクションの鮮やかな世界
美しさという点では野鳥たちも負けていません。特に鮮やかなのは日本でも見られる鳥ですがカワセミ。
そしてオーストラリアの北部や北東部に生息するジャビルー(セイタカコウ)と呼ばれる大型の鳥。はい、コウノトリの仲間です。体長最大150センチ、羽を広げた幅は230センチにもおよぶそう。
もう一つイエローウォーターの魅力を上げるとリフレクション、つまり水面への写りこみ。
日没直前のクルーズだったので、船長さんは船を停めてくれてしばし夕陽鑑賞。私の「世界最後の日にはここで死にたい」という気持ち、ちょっとわかっていただけたでしょうか。
そしてワニにとご対面!
咲き誇るハスの花、彩り鮮やかな鳥。そんな「まさに極楽浄土」という穏やかな景色の中に突如現れる野獣がイリエワニです。オスの体長はときには6~7メートル(メスはその半分)にもなるモンスター。平和で極楽な世界だからこそ、その荒々しい見た目が際立ちます。
さてワニは基本的には自分の「なわばり」的なものを守るそう。そして「イエローウォータークルーズ」では前に出航した船から目撃情報を得るので、船長たちは見どころをつかんでいます。
とはいえワニたちも移動するし水に潜ることもあります。
まったくワニを見られないということはないと思いますが、どれほど大きい個体を見られるかはそのときの運次第の部分もあります。
ところでこの船には同乗しなかったのですが、【世界遺産「カカドゥ国立公園」旅vo.1】と【同vo.2】で大活躍してくれたガイドのデイヴィッドからおもしろい話を聞きました。ワニが食べているものを調べたところ1970年代は魚がメインだったのに、現在は野生化したノブタが多いとのこと。食性が変わってきているのです。
魚が減ったというよりも野ブタが増えすぎたのでしょう。大型の肉食獣はワニくらいしかいないので。
その日の夕食は前回紹介したクイーンダロッジのレストランで。
バラマンディをカルパッチョで食べたのは初めてですがくせがなくておいしかったです。よくよく考えたらスズキの仲間なので、カルパッチョに適していて当然。
これが滋味があって、みんな「ビーフよりおいしいくらいだね」と大満足でした。
かつてはここの宿も食事ももっと簡易なものだけだったのに、今ではどちらも一流のものが楽しめるようになりました。そういえば出発地のダーウィンもかつては「バックパッカーの聖地」だったのに対して、今では高級リゾートが建ち並んでいます。
まあ時代は変わるもの。そんな中、イエローウォーターだけは今も昔も極楽浄土風の「楽園」であり、「ワニの王国」です。
【柳沢有紀夫の世界は愉快!】シリーズはこちら!
オーストラリア政府観光局
https://www.australia.com/ja-jp
ノーザンテリトリー政府観光局
https://northernterritory.com/jp/ja
イエローウォータークルーズ
https://app.respax.com/public/kt/?site=KT&categoryId=1