3回目となる今回は、「虎井(フージン)島」「吉貝(ジーベイ)島」「目斗嶼(ムードウユィ)」そして「花嶼(ホワユィ)」の4島を一挙ご紹介!
離島への旅、どの港かを要チェック
澎湖本島からは離島への船が数多く出ています。離島路線の乗り場は、本島中心部の「南海遊客中心」や本島北部の「北海遊客中心」などがあり、どの島に行くかによって乗り場が異なります。
「虎井島」と「花嶼」は「南海遊客中心」から、「吉貝島」は「北海遊客中心」からの出発。では、「目斗嶼」は?…それはのちほど。
虎井島:台湾版「猫島」で日本では味わえない体験を
澎湖本島から船で20分の「虎井島」は、人口わずか300人の島に400匹もの猫がいるといわれている台湾版「猫島」。島に到着すると、早速たくさんの猫たちに出会えます。人に慣れているのか、かなりの接写でもびくともせず。
この虎井島、「猫島」であるという以外にも、もうひとつ特徴があります。それは、北回帰線のすぐ北側にあるため、夏至の正午には真上から太陽が照りつけ、「影がなくなる」という現象を体験できること。
手元に世界地図がある方は、ぜひ台湾の位置を確認してみてください。地図などない?その場合は、のちほど「北回帰線」と検索してみてください。
台湾は、ほぼど真ん中を北緯23.5度の北回帰線が貫いています。なお、北回帰線は正確には「北緯23度26分22秒」のようですが、台湾では非常にアバウトに「北緯23.5度」だと言い切っています。このファジー感、嫌いじゃない。
澎湖諸島(澎湖県)は、台湾において北回帰線が通っている3つの県のうちの1つ。そして澎湖諸島の中で最も北回帰線に近いのが、ここ虎井島です。
「影がなくなる」現象、北回帰線よりも北にある日本では沖縄ぐらいでしか味わえません(沖縄の場合、北回帰線まで一定の距離があるので、正確には「影が『ほぼ』なくなる現象」といえます)。このため、夏至の当日にこの体験をしたいがために、わざわざ日本から虎井島まで来る人もいるほど。
今年の夏至はよく晴れました。はたして本当に影がなくなるのでしょうか?それを検証した画像がこちらです。
「影がなくなる」といっても、物体に真上から光を当てたときと同様、物体と同じ形の影はできます。例えば帽子を被っている場合、帽子のつばの広さと同じだけの影はできます。ですがその影は前後左右に伸びることはなく、直下にのみ現れています。これですよこれ、この現象!おめでとうございます、日本からわざわざ来た甲斐がありましたね…!
厳密に「北緯23度26分22秒」じゃなかろうが、さらに「北回帰線」の直下じゃなかろうが、そんなものは、地球規模でみてみたら誤差にすらならないほどの小さなことなんでしょうね…。北回帰線に最も近い島で、地球の営みに思いを馳せてしまいました。
島内にある大きな両手のオブジェにも注目。春分・秋分時には両手の真ん中に太陽が沈み、夏至ではこの手の北側に、冬至では南側に沈むよう配置されています。猫好きにも天文ファンにもおすすめしたい島です。
吉貝島: 800mの白砂ビーチがなんと貸切状態!
次に紹介するのは吉貝島。これまでの島とは異なり「北海遊客中心」から船が出ています。吉貝島は1時間もあればバイクで一周できてしまうこじんまりした島ですが、島の南部には長さ800mもの白砂のビーチが広がっています。
海の美しさが自慢の島なので、水上バイクなどのマリンアクティビティも充実しています。ですがおすすめは、海に入って全身で海を感じること!マリンアクティビティ目当ての観光客はビーチの端までは足を延ばさないので、ビーチの端は貸切状態!こんなに広い砂浜を独り占めできるビーチは、世界中探してもそうそうないのでは…?はるか先を行く息子がまるで豆粒のよう。
ビーチのすぐ近くには、大人数で使えるシャワースペースと更衣室・トイレが完備されています。しかも清潔!タープつきの休憩スペースや軽食・かき氷の販売コーナーもあるので、息子から突然「お腹空いた!」という声が飛んできても、うろたえずに済みました。お腹を満たし英気を養ったら、再び海に繰り出しましょう。
目斗嶼:想定外の乗船方法!?日本人ゆかりの灯台がある無人島
次に紹介するのは目斗嶼。吉貝島から北に7kmのところにある、澎湖諸島で最北端の島です。
今回、吉貝島と目斗嶼を巡るツアーに申し込んだところ、吉貝島の旅行会社のスタッフから「10時半になったら軽食店の前に集合してください」と言われました。時間通りに集合したものの、船らしきものは見当たりません。それどころか港らしきものもありません。船は一体どこから…?
「本当にここでいいのかな?」と戸惑っていると、これまでに乗った船とは明らかに異なる、テーマパークのアトラクションに登場しそうな船がやってきます。そして徐々にスピードを落とすと、吉貝島のビーチに横付け。
「じゃあみなさん、乗ってくださーい!」旅行会社スタッフからの号令。え、ここからこれに乗るの?!
そう、港なんていう贅沢なものはなく…。この船は吉貝島のビーチと目斗嶼のビーチを行き来しているのです。
船というよりも水上バスに揺られること約30分。目斗嶼のシンボルである灯台が見えてきました。
目斗嶼の灯台は、日本統治時代に日本人が澎湖諸島で最初に作った灯台です。1899年に建設が始まり、1902に完工しました。
目斗嶼灯台の高さは40m。無人島である目斗嶼の岩礁の上にそびえ立つ灯台には、「孤高」という言葉がよく似合います。黒白のツートンカラーは、遠くからでも灯台の存在がすぐにわかるように工夫されたもの。
一般公開されていない灯台なので敷地内には入れませんが、敷地内には看守の執務室や宿泊室があるのが見えました。1902年に完工したこの灯台、じつは今でも現役。看守が6人体制で駐在し、付近を航行する船舶の安全を守っています。
花嶼:灯台以外なにもない島 船は1日1往復
灯台つながりでもうひとつ。「花嶼」も紹介しておきましょう。澎湖諸島の最西端に位置する花嶼の灯台は、台湾交通部のウェブサイトで「台湾最西端の灯台」と紹介されています。「台湾で最も〇〇」というキャッチフレーズがつく場所であれば、行かないわけにはいきませんよね…?
花嶼に向かう船は1日1往復のみ。乗船時間は1時間。おなじみ「南海遊客中心」から出ています。港に着くと西側の丘に灯台があるのが見えますが、確認できるのは、灯台に向かう道と、そうでない道の2本のみ。え、2本のみ…?
島の端から端までは歩いて1時間程度。軽い起伏がありトレッキングに最適です。途中、壁に「民宿」と書かれている家と、自家用っぽい冷蔵庫で飲み物を売っている家がありましたが、それ以外はほぼなにもなし。これまで数々の離島で目にしてきたセブンイレブンもファミリーマートも、ここには存在しません。あるのは悠久の時の流れのみ。
私たちが訪れたときには、船は8時半に澎湖本島を出発し、9時半に花嶼に到着。花嶼出発は15時半でした。港から灯台まで往復したあと対角線上の端まで歩いたとしても、時間はまだまだたっぷりあります。
ここまでのんびりした時間を過ごしたのは、一体どれぐらいぶりだろう…。ただぼーっとしていただけなのに、花嶼を発つ頃、身も心もすっきりしていることに気がつきました。大自然に身をゆだね、この島の「なにもなさ」を楽しみましょう。
最終回となる4回目は、大自然が織りなす神秘的な現象をご紹介します!
静岡県出身。一児の母。民間企業、国際協力団体(北京駐在)などを経て、2013年から行政機関で勤務。2023年4月から台湾駐在。夫を日本に残し、「ワーママ駐在員」として小学生の息子と共に台湾で暮らしている。帰国時は主に静岡県内でキャンプ・グランピングを楽しんでいる。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員