その中で、ひときわ人気を誇るのが、部員数70名を誇る生物部。今回は生物部の中でも川をフィールドとしている、昆虫班&魚類班の活動にお邪魔した。
少年よ、大志を抱け!定点観測場所でガサガサ三昧
夏休み真っ只中、集まったのは中高合わせて5人の部員。
「定点観測はいつも少数精鋭。毎週末行なっているので、行ける人が手を挙げて行く形です」
とは、顧問の宮下彰久先生。
「普段は高校生が中学生を引率してくれるから、僕はほとんど行かないんですけどね」
と、朗らかに笑う。必ず先輩が連れていき、川のここは入ってOK、ここはダメ、と自分たちの経験から教えている。今日は、今年で15年目となったハグロトンボの生態調査だ。
「最初はくにたち郷土文化館が主催で行なっていた市民参加型の調査隊に参加したんですが、3年目から生物部昆虫班が引き継ぐことになり、2009年以来継続しています」
「あ、いたいた!」
ハグロトンボを見つけては網を振り、個体をチェック。
「あ、ちょっと傷めちゃった」
と、1匹捕まえた宮下先生。
「マリオ(宮下先生のあだ名)がノックアウトした!」
「大丈夫かな?」
フランクな関係が窺える。
「オニヤンマ捕まえたよ〜」
調査を終えた途端、自由に駆け回る生徒たち。どうやら、調査と捕まえたい昆虫は違うよう。
その後は魚類班と合流し、定点観測場所でガサガサ三昧。
「今は水をコップ一杯取って調べれば、その中にあるDNAでどんな魚がいるかわかっちゃう。だから大学生ほど、水に入らなくなるのかもしれません。でも、中高生の間に実際にフィールドワークすることで、暑い、冷たい、痛い、いろんな感覚を味わえる。生き物を好き、という気持ちに体験が混ざることが大切で、それでこそ生き物を楽しいと思えるんです」
最近は危ないという理由で、外に出る生物部が減ってきているという。自然は体験してなんぼ。少年よ、大志を抱け!
15年継続中!
昆虫班のライフワーク!用水路でハグロトンボの生態調査
現役部員は70名ほど。宮下先生とLINEでつながっている部員は総勢85名(卒業後も残っている大学生もいるため)。昆虫班、クモ班、鳥類班、魚類班、両生爬虫類班に分かれて活動中。
伝統その一
「捕虫網の使い方」
虫が網に入った瞬間、開口部を垂直に立てる。
↓
開口部を下向きに
180度回転させ、網を折り返す。
↓
さらに網を90度回転させ、昆虫を捕獲する。
今日は全部で15匹確認!
捕まえたハグロトンボの黒い後翅裏面に白い油性ペンで捕獲番号をマークし、雌雄や成熟度を記録して逃がす。都市化される水域での実態調査。
網を片手に里山風景が残るフィールドへ
6月〜10月の毎週日曜日に昆虫網を振り回す姿は、ご近所さんの風物詩でもある。「15年で周囲の環境はガラッと変わりました」(宮下先生)。
ハグロトンボは羽化後成熟するまで、林の樹木に止まって過ごす。そのため、用水路に沿って広がる近隣の林のなかも調査。
追い払わないよう、全員でゆっくり下流から上流へと歩き、約800mの調査域を調べる。捕獲担当と記録係に分かれて作業を分担。
たまにちょっと脱線
オニヤンマ
魚好き集まれ!
魚類班の調査はガサガサを駆使した定点観測
魚類班は淡水班と海水班に分かれる。基本は身近な生き物観察だが、長期休みともなると、沖縄や北海道まで遠征するグループも。夏合宿では、4日間飽きることなくガサガサ三昧!
伝統その二
「ガサガサ漁法」
上部が平らなタモ網を川下に差し込む。片側は草むらに密着させて、逃げる隙間を作らない。
↓
川上から水中をバシャバシャと揺らして、網の中に魚を追い込む。その際、網は動かさないこと。
本日の収穫!
タカハヤとカワムツをゲット! ほかにアブラハヤやコイの姿も。
ヌマエビと、最近少し減ってきたというホトケドジョウ。
興味に合わせ、班を掛け持つ生徒も多い。中3ともなると、涼しくなっても調査に加われるよう、ウェダーを導入する生徒も。
※構成/大石裕美 撮影/山本 智
(BE-PAL 2024年9月号より)