火打ち石で発火にチャレンジ!
編集 ハラボー。野遊び達人に、なれるかな!?
編集・ハラボー
キャンプに行くのももちろん良いけど、もっと身近に気軽に野遊びを楽しみたい! それでアウトドアスキルがアップすれば、なおうれしいですよね。そんなわけで藤原さん、まずは野外活動の基礎、火おこしをマスターしたいです!
よしきた! じゃ、河原の石で火をおこそう。この鋼で石を叩いて火花を出し、木綿の炭と草で育てると火が出るから。
師匠・藤原氏
編集・ハラボー
あっ私、知ってます。メリケンサックですよね⁉ コレでガッとやって火花をフーして……。ウオォォォォ! 急に火ィ出た! めちゃくちゃ気分あがりますね。でもコレ、ビーパルの付録にもなったファイヤースターターと何が違うんですか?
スターターは簡単に火花が出て、火花の温度も高い。だから紙や麻ひもに直に着火できる。その点、鋼の火花は温度が低いから布の炭で拾って育てないといけない。難しいのよ。
師匠・藤原氏
編集・ハラボー
と、いうことは……? 今、私はスターターで火おこしする人を超えた⁉
んっ。ま、そうなるね。
師匠・藤原氏
編集・ハラボー
てか、藤原さん。このメリケンサック買ったんですよね。
???
師匠・藤原氏
編集・ハラボー
自分で作れない点ではスターターも鋼も一緒じゃないかなと。私、完全に自分の力だけで火を出したいんです!
火打ち石発火の基本セットはこちら
メリケンサック改め火打ち金
素材は少し柔らかめの鋼鉄。素材が鋼であればヤスリや古いノコギリの刃、ペンチなどでも代用できる。身近なクズ鉄が使えるか試してみよう!
拾ったチャート
古い時代のプランクトンが堆積して固まった石。鉄より硬く、釘で引っ掻いても傷がつかない。他の硬い石で叩き割って鋭い角を出して使う。
そのへんの枯れ草
できたての火種を断熱・保温し、火種から火を移す火口(ほくち)。中心部に細く乾いた素材を集めるのが発火のコツ。
チャークロス
ガーゼなどの木綿の端切れを蒸し焼きにして作る布の炭。ガス抜きの小さな穴をあけた空き缶に布を入れ、外から加熱して炭化させる。
火打ち石で火をつける方法
1 まずは河原へGO!
やってきたのは玉石が転がる河原。このなかから火打ち石になるチャートを探す。指導するのは地味な野遊びを研究する藤原祥弘。
2 打ちつけて火花を飛ばす
昭和の男子のアイテム、メリケンサック!……ではなく、火打ち金でチャートを叩き、飛び出た火花でチャークロスを赤熱させる。
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チャークロスに火花が移ったら、クロスを枯れ草の束の中へ。包み込んで保温し、火種が育ったら細く長く息を送り込む。
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Complete!
息を吹き込むとクロスの火種は草へと移る。内部の温度が高まると草から可燃性のガスが発生。それが燃えると発火!
「自作できなきゃ鋼もスターターもライターも一緒」。業界が気づかないフリしてた欺瞞を砕くハラボー。
弓錐式で発火にチャレンジ
それなら、レベルアップといこうか……。まずはカラムシの繊維でロープづくり。手がアクで茶色に染まるけどいいな。
師匠・藤原氏
編集・ハラボー
ハイッ!
次に作るのは火切り板とスピンドル。枝を板状に削ったものと、回転するスピンドルを擦り合わせて火種を生む。ハンドピースとの摩擦を抑える潤滑油は鼻の脂。棒の上端に塗って!
師匠・藤原氏
編集・ハラボー
ハ、ハイッていいたくないけどハイッ!
道具がそろったら、弓でスピンドルを回して火種を作る。力を逃さないポーズが重要!
師匠・藤原氏
編集・ハラボー
これ、かなり、重労働。 ゴシゴシやって、できた火種を草にインっと。……出た~! 完全自力発火、できました!
総天然! これが弓錐式発火セットだ
弓
ゆるやかにカーブした長さ60㎝ほどの枝の先端にカラムシのロープの片端を結びつける。
スピンドル
針葉樹の真っ直ぐな枝を用意して両端を円錐形に尖らせる。ハンドピースを当てる側は60度ほど、火切り板に当てる側は90度程度に。
火切り板
針葉樹の枝を削り、厚み2㎝ほどの板状にする。板状に削ったらスピンドルの鈍角側が収まるよう皿状に削り、V字の切れ込みをつくる。
ハンドピース
BBQ客が捨てたホッキガイの殻をリユース。内側の滑らかな凹面でスピンドルを押さえつける。凹面がつくれれば堅い木や石でもよい。
作り方はこちら!
1 カラムシの繊維からロープを作る!
カラムシは本州以南の山野に分布。古い時代はこの草の皮の繊維から布を作った。近縁種のヤブマオも素材になる。
地上部の葉を手でこそげ落としたら、根元側から皮をむいていく。ロープに使うのは皮のほう。できるだけ繊維を長く取る意識でむく。
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皮を数本とって末端を結び、2条に分ける。左右に分けたそれぞれを指で時計回りによじり、繊維に撚りをかけていく。
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束の撚りが強くなったら束を摘む手を反時計回りに回転し、束を持ち替える。2本の束は撚りが戻る力で絡まり合う。これを繰り返す。
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2 スピンドルと火切り板を削り出す
拾ってきた針葉樹の枝を火切り板とスピンドルに加工する。スピンドルは両端を尖らせ、上端のトンガリはハンドピースの窪みに、下端のトンガリは火切り板に彫る穴に収める。
上端は摩擦が小さいほどよいので、細く尖らせて鼻の脂を塗る。
3 道具をセッティング
ポーズを制するものが火おこしを制す!
膝頭を抱き込み脇を締め、体重を肩→ひざ→脛→手首→スピンドルの順でかける。
手首がぐらつかないように脛にぴったりつける。
弓の弦は地面に対して平行を維持したまま前後させる。ムズイ!
4 弓を使って摩擦発火!
弓の弦を2回巻いたスピンドルを火切り板に合わせ、ハンドピースで押し付けつつ弓を前後させる。
序盤は慌てずゆっくりと。弓の弦全体を使って、長いストロークで摩擦面の温度を少しずつ高める。
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摩擦面から出てくる粉がこげ茶になったらスパートをかける。強く押し付けつつ素早く回転させる。
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摩擦面から白煙が上がったあと、摩擦面ではなくこぼれた粉の中から煙が出たら火種の誕生!
火種ができたら枯れ草の束のなかへ。摩擦発火の火種はチャークロスよりも大きいので立ち消えしにくい。
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Complete!
※構成/藤原祥弘 撮影/矢島慎一
(BE-PAL 2024年9月号より)