ノルウェー人も憧れる「ヨトゥンヘイム国立公園」
ノルウェーは日本とほぼ同じ国土面積を持ちながらも、その人口は日本の25分の1ほど。そのほとんどが、首都オスロとその近郊に集中しています。それ以外の土地は、手付かずの山や湖、森などに囲まれており、夏はハイキング、冬は神秘的なオーロラ鑑賞などが楽しめる自然好きにはたまらない国なのです。
そんな雄大な自然を誇るノルウェーのなかでも、とくに美しいといわれているのが、「Jotunheimen National Park(ヨトゥンヘイム国立公園)」です。西ノルウェーに位置するこの地域は別名「巨人の住処」とも呼ばれています。面積1,151平方kmもの広大な国立公園内には、北ヨーロッパ最高峰のガルホピッゲン(標高2,469m)をはじめ、標高1,900m超の山々が250座も連なるノルウェー屈指の山岳地帯です。
今回チャレンジする標高1,634 mのBesseggen(ベッセゲン)も、このヨトゥンヘイム国立公園内にあります。色の異なるふたつの氷河湖に挟まれた尾根を歩くコースはフォトジェニックで、その美しさから年間6万人もの登山者が訪れます。
今回歩いた「ベッセゲン」のトレッキングルート
ベッセゲンへ登る方法はふたつあります。
ひとつは片道だけを歩くコースで、イェンデスハイムからメムルブ小屋まではフェリーに乗って移動し、そこからベッセゲンへ歩いて登ります。約14kmの稜線を7〜8時間かけて歩くコースで、フェリーを利用すれば時間も体力も軽減できるうえ、日帰りも可能なもっともポピュラーなコースです。
フェリーは、7時45分と9時30分の2便のみなので事前に予約をするのがおすすめ。フェリー料金は、1人240NOK(約3,300円)で、乗船時間は20分ほどになります。
※1NOK=13円計算(2024年8月14日時点)
もうひとつは、私たちがチャレンジした1泊2日の周回コースです。フェリーには乗らず、初日はイェンデスハイムからメムルブ小屋まで湖沿いを約10km歩いて、メムルブ周辺でキャンプ。2日目はベッセゲンに登頂してからイェンデスハイムへ戻る約25km、標高差1,400mという、なかなか体力を使うロングトレイルになります。
1泊2日でベッセゲンをトレッキングしてみた
登山口には大きな駐車場があり、乗用車から大きめのキャンピングカーまで100台以上の駐車が可能です。駐車料金は24時間利用で150NOK(約2,000円)。自動精算機は、クレジットカードのみ支払いが可能です。
駐車場からフェリー乗り場までの約2kmには、シャトルバスも走っていますが、まだ体力満タンだったので歩いてスタートしました。20分ほど歩いたらフェリー乗り場に到着です。
フェリーを利用すれば約10km歩かずに先へ進むこともできますが、私たちは湖沿いルートを歩く周回コースに挑戦しました。テント泊なので荷物も多く、重たいですが頑張って歩きます。
このルートは、イェンデ湖に沿って1本道を進んでいきます。フェリーを利用する人がほとんどなので、道中はとても空いていて、エメラルドグリーンに輝く湖の美しい景色をゆっくりと楽しみながら散策することができました。標高差もほとんどない平坦な道が続きます。途中、森のなかの細い道を行くときもあれば、ゴツゴツした岩場が現われたり、少し進むたびに違う景色を見せてくれるワクワクのハイキングルートです。
地図上では簡単そうに見えましたが、重いリュックを背負いながらの10kmの道のりはなかなか長く感じ、目指すフェリー乗り場のメムルブまでは休憩も入れて4時間半もかかってしまいました。メムルブ周辺はフェリー乗り場のほかに、テント場、水場、トイレ、そして、宿泊可能なペンションもあり、登山者にはうれしい設備が整っています。
今夜はもう少し登ったところでワイルドキャンプをする予定なので、水を補給してからさらに進みます。メムルブを越えると急な登りが始まります。標高が上がるほどに景色が少しずつ開けてきて、イェンデ湖の全容と背後に広がる山々の光景が展開してきました。
湖を眺めながらの極上テント泊
メムルブから1時間ほど登って、景色が抜群な湖を見おろすエリアに到着。テントを張れそうなスペースを見つけてワイルドキャンプをしました。大自然に囲まれた高台に張ったテントからは、5つ星ホテル顔負けの絶景を楽しめます。
夜ご飯はお湯を注ぐだけで簡単にできるフリーズドライのボロネーゼ。ノルウェーの大自然に囲まれながら美味しくいただきました。
6~8月にかけて、ノルウェーは太陽が沈まない「白夜」を迎えます。私たちがキャンプたのは8月で、太陽が沈むのが22時過ぎ。次の日はベッセゲンに向けて登らなくてはいけないので、まだ明るい時間に就寝しました。
ノルウェーでは、どこでもワイルドキャンプができる!
ノルウェーには「Allemannsretten(アレマンスレッテン)」という言葉があり、「誰もが自由に自然を探索して楽しむ権利がある」という意味の自然享受権が存在します。いくつかのルールを守ればどこでも自由に自然のなかを散策し、キャンプ(ワイルドキャンプ)をすることも可能です。そのため、ノルウェーでは多くの人がテントやキャンピングカーなどを使ってアウトドアライフを楽しんでいるそうです。
さらなる絶景を求めてベッセゲン山頂へアタック!
夜は風もなくビックリするぐらい静かで快適に過ごせました。テントを撤収し、早朝からベッセゲンへ向けてアタックです。この日も爽快な晴れ空で、遠くまで山々が見える抜群の視界に恵まれました。この日は、標高差約1,100mを登るため、かなりハードですが、頑張っていきます。序盤からゼーゼーと息を切らすような急坂を登り切ると、ひとつ目の小さな湖に到着。そこから平坦な尾根を歩きます。両側を湖に挟まれたなんとも美しいルートです。
いくつかのアップ・ダウンを繰り返してベス湖へ到着。ベス湖はイェンデ湖と違って、水の色は濃いブルーです。ベッセゲンの頂上から見る、このふたつの湖のコントラストがとても幻想的で、フォトスポットとしても知られています。
ルート最大の難所でヒヤヒヤの岩登りに挑む
ベス湖を過ぎると、今回歩いたベッセゲントレイルで最大の難所=「リッジ」と呼ばれる岩登り場へとさしかかりました。ここから先は両側が断崖絶壁。手と足を使って岩場をよじ登らなくてはいけないヒヤヒヤするようなエリアです。私は高い場所が苦手なので下を見ないようにしながら、一歩一歩慎重に岩をつかんで進みました。
岩場で高度もありますが、専門的な用具や技術も必要ないため、10歳ぐらいの子供から犬連れの方までが登っていました。ビクビクしながら登っていたのは、私だけ!?(笑)。
重いリュックのせいでハードでしたが、スリルを味わいながらもなんとかベッセゲンの頂上へ到着できました。ここから見る景色は「絶景!」の一言です。「登った人にしか味わえない景色」と達成感が交わった、なんともいえない高揚感でいっぱいになりました。
頂上に着いたら終わりではありません。ヘトヘトでしたが、ここからさらに7kmほど歩いてイェンデスハイムの駐車場へ歩かなくてはいけません。幸いこの先は下りのみ。魅力的な景色を堪能しながらゆっくりと下山します。
ノルウェーの奥地散策は感動の連続だった
ノルウェーのなかでもとくに美しいといわれる総距離約25kmのベッセゲンのトレッキングルート。道中から見る景色は感動の連続。ロングコースをヘトヘトになりながらもなんとか歩ききると、そこには圧巻の景色が待ち受けていました。1泊しながらトレッキングするもよし、フェリーを利用して日帰りで楽しむのもあり。世界各国から多くの人が集まることが納得の素敵な場所でした。