ヤマトタケルノミコトゆかりの場所につくられた亀戸の富士塚【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.74】
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    2024.08.29

    ヤマトタケルノミコトゆかりの場所につくられた亀戸の富士塚【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.74】

    ヤマトタケルノミコトゆかりの場所につくられた亀戸の富士塚【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.74】
    東京23区内、特に山手線の内側はビル街や飲食店街、住宅街ばかり。そう思っている人が多いかもしれません。でも、目を凝らせば東京都心にも「山」はあります。そんな東京の山の世界を、日本で唯一のプロハイカーである斉藤正史さんが案内します。

    FILE.74は、江東区にある亀戸の富士塚です。

    第74座目「亀戸の富士塚

    今回も、JR平井駅南口登山口から出発

    JR平井駅南口登山口。

    今回目指すのは亀戸富士(富士塚)です。地図を見て確認すると、とても悩ましい。

    なぜ悩ましいかといえば、亀戸富士の場所が悩ましいのです。名前から推測すると登山口(最寄り駅)はJR亀戸駅のように思えますが、ルートを調べてみると、どうもJR平井駅から歩いた方が近そうなのです。

    外は、30度を超える気温です。できるだけ道のりは短い方が良いと考え、亀戸富士なのにJR平井駅を登山口にしたのには、こんな理由がありました。

    実は、道のりもFILE73逆井の富士塚に行く道のりと途中まで一緒です。前回のルートは、動画を撮り直しました。そこで、この動画を活用しようと考えたのでした。さて、この試みはうまくいくのでしょうか?

     

     

     

     

    平井駅南口からの通り。ネタが豊富そうに見えるのですが…。

    前回諦めた駅の直ぐ脇を通る平井駅前通りを歩いていきます。撮影当初、絶対にネタのある道だと確信して歩いた記憶が蘇ります。

    もう一度歩き直してみるものの、やはり特に何かがあるわけでもありません。わかっていて見どころのない道を歩くのは、どこか複雑な気持ちになります。平井駅前通りを鳥喜 平井駅前店で曲がると、恐怖の住宅街ルートが始まります。何もないというか、「無」とは何かという深遠な問いに吸い込まれるようなルートなのです。

    住宅街から前回のルートとの合流地点のローソン江戸川平井3丁目店に進みます。ここまで来ると、前回同様、平井南小学校を進み、突き当りを左に曲がります。一番最初の信号機まで来ると逆井の富士塚方向には進まず、今度はまっすぐ進みます。

    ここからいよいよ未知の領域の亀戸富士ルートです。信号を渡ってすぐ、橋と大きな川が見えてきます。これが旧中川とふれあい橋です。

    開放的な川と橋にホッ

    旧中川からはスカイツリーも見えます!

    江戸時代以前の中川(現在の旧中川)は、古利根川を上流として、途中で元荒川と合流し、綾瀬川・堅川・小名木川と通じながら、江戸川にそそいでいました。

    江戸時代に入り、水害の頻発していたこの地区の村を守るため、8代将軍徳川吉宗は、1725(享保10)から14年間をかけて、散在していた池や沼を利用して、ひとつの流れをつくりました。そのため、「九十九曲り」とよばれる屈曲の激しい川となったそうです。なぜこの川が中川と呼ばれたかというと、隅田川と江戸川の間を流れるからだそうです。

    中川の沿岸には、足立・葛飾・江戸川の各区が発展してきました。しかし、ひとたび大雨に降られると洪水が発生し、沿岸地帯は大きな被害をうけてきたそうです。1916大正5から中川改修工事が行われ、1930年(昭和5年)に荒川放水路(現荒川)および翌年に中川放水路(現中川)が完成しました。

    旧中川は本来、中川の本流でしたが、この改修工事により、中川が二つに分断されました。そして、1966年(昭和41年)に分断された中川の下流部分を「旧中川」と名付けたそうです。

    水害が多かった旧中川は、人工的に水位を地盤面より下げる整備により、安全な河川に生まれ変わりました。現在は、区内有数のさくらの名所となっています。旧中川に架かる「ふれあい橋」は、江戸川区と江東区とを結ぶ人と自転車のための橋です。両地域の交流が一段と深まるようにとの願いをこめてふれあい橋と命名されたそうですよ。

    ふれあい橋の中央からの眺めも最高です。

    いざ亀戸方面へ

    ふれあい橋をわたり、大きな団地を歩いていきます。公園も整備されていて、子供たちの遊ぶ声が聞こえてきます。普段、子供に接する機会があまりないので、元気な遊ぶ声を聞くとなんだか明るい気持ちになります。住宅街を過ぎ、京葉道路を渡ると、亀戸緑地公園へと進んでいきます。ここでいつのまにか江東区、そして亀戸に入っていたこと知ります。

    亀戸緑地公園のアーチ。バラかな?

    涼やかな亀戸緑地公園には、休憩している人がたくさんいましたので、邪魔をしないように歩いていきます。公園の出口に出ると、道路の向かい側に現れたのは、亀戸浅間公園でした。ここには亀戸浅間神社と隣接する形で富士塚があり、実は公園の中に富士塚は設置されているんだそうです。

    亀戸浅間公園

    亀戸浅間神社に隣接しており、その昔、富士山が望めたといわれる富士塚の周りを造成して作られた公園です。

    亀戸浅間神社

    その昔、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が東夷(アズマエビス)ご征討で相模から上総へ船で向うときに「こんな小さな海なら、駆けて跳び上がってでも渡れる」と海を渡りました。ところが海の中程までくると突然暴風が起こり、日本武尊の船は海を渡ることが出来なくなってしまいました。

    その時、日本武尊の妻、弟橘媛(オトタチバナヒメ)という姫が「これは、日本武尊のお言葉に怒った海神の仕業だ」と言い、日本武尊の身代わりに自らの身を海に投じました。すると暴風はたちどころに止み、船は無事、岸に着くことができました。

    後に、弟橘姫の笄(こうがい)と呼ばれる刀装具と櫛(くし)が奥湾に漂着したそうです。漂着物のうち、笄が現在の亀戸9丁目(旧神社跡)付近に漂着したと言われています。これをお聞きになった十二代景行天皇はたいへん悲しまれ、ここに笄を埋め、祠を立てて祀ったそうです。

    1855年(安政2年)の大地震で亀戸神社の社殿が倒壊したそうですが、1878年(明治11年)に、富士山より溶岩を運んで富士塚を築き、その上に神社が再建されたそうです。残念ながら、富士塚の上に再建された社殿は、1997年(平成9年)に東京都の再開発により現在の場所に移設されたそうです。

    亀戸富士

    かつての富士塚の名残。

    今まで塚の上に「富士塚跡」の石版が置かれていたそうですが、2014年に富士山が世界遺産に認定されたのを記念して「亀戸浅間神社」の富士塚が再建されました。山をかたどったデザインはかわいいですね。塚の周りにはかつて富士塚だった頃の名残も残されています。

    かわいいデザインの現在の富士塚。

    これまで江戸川区内で紆余曲折を経て今も残る富士塚いくつも見てきましたが、江東区の富士塚も時代の流れに翻弄されながらも地元の方々に親しまれているのかもしれません。

    次回は江戸川区の小岩富士です。

     ※今回紹介したルートを登った(歩いた)様子は、動画でもご覧いただけます。

    私が書きました!
    プロハイカー
    斉藤正史
    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。最新情報はブログを。

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