「ここは、2015年まで“神愛館”って言うキリスト教系の乳児院だったんですよ」
チェックイン時、当時の子どもたちと保育士さんたちが写っているアルバムを開きつつ教えてくれたのはスタッフの祐斉さん。古民家やレトロビル、廃業された民宿や店舗等をリノベーションし、ゲストハウスとして再生するのは、ここ数年の流れだ。が、元乳児院というのは、全国中探しても、きっとココだけだろう。
宿の名は「豊島ゲストハウス mamma(マンマ)」。豊島は瀬戸内海に浮かぶ香川県の島だ。海を見渡せ、心地良い風が吹く場所に広々とした棚田がある。同じく美しい螺旋の棚田をもつ小豆島の土庄町に属する島でもある。野菜も魚介類も、その名の通り豊かな島だ。近年は、瀬戸内国際芸術祭開催エリアのひとつとしても知られ、訪れる人々も国内外ともに増えている。
「“神愛館”が、いろんな子どもたちを受け容れたように、みんなが、ありのまんまの自分で過ごせる場所であるようにと思って“mamma”って名づけたんです」と、スタッフのもめさん。カフェのカウンター越しに、そんな話を聴く。
宿の共有スペースがカフェとして宿泊者以外にもオープンにしているmamma。「きゃー!きゃー!」と、もめさんの小さいお子さんふたり(保育園ぐらいの歳の兄妹)がカフェのテーブルの間を駆け巡る。自由だなぁ。自分もただひたすら遊んでた頃があったな~と、ふたりを見て思い出す。注文した小豆島産の純米酒「ふわふわ。」を片手に。
島内の美術館等のすべての観光スポットが休館日という、寒い12月の火曜日のこの日。ゲストは私ひとりだった(そんな日だから、当たり前と言ったら当たり前なのだが…)。寂しいなぁと、思っていたものの、「何かあったら声かけてくださいね~」と、スタッフさんが代わる代わる、ちょこちょこ話しかけてくれる。おかげで、さっきまでの寂しさは何処へやら。各スタッフさんのmammaに辿りつくまでの人生ストーリーなんかも教えてもらう。人の生き方に触れるコトが好きな私は、楽しくて楽しくて、気が付いたらカフェにあった日本酒4種を飲み干し、仕上げに島レモンを使った自家製リモンチェッロまで手を出していた(コレがまた、まろやかで呑みやすくて、キケンなのである! )。呑みたいモノを呑みたいだけ呑む。私も、ちびっこに負けず劣らず、けっこう自由じゃないか。自由な気もちにしてくれる空気がココには、あふれている気がするのだ。