そんな「雪山」のイメージの強いウィスラーですが、地元バンクーバーに住む人の間ではじつは「夏のアウトドアリゾート」として大人気。今回は、そんなちょっと意外な「夏のウィスラー」の姿をお届けします。
「あの名門スキーリゾートは、夏はアウトドア天国だった!
爽快! 絶叫! 夏のウィスラーで「ラフティング」
ウィスラーは「ウィスラー山(標高2182m)」と「ブラッコム山(標高2284m)」の2つの主要な山から構成される雄大なマウンテン・リゾート。カナダの西海岸側、バンクーバーの北に位置します。
そんな「北の方」ですから、「ウィスラーに行くなら冬。目的はスキー」と筆者も思い込んでいました。しかし長くバンクーバーに住む友人たちに聞くと「冬より夏のウィスラーの方がむしろ好き!」という人が多いのです。
スキー場なのになぜ? と不思議に思いましたが行ってみて納得。夏のウィスラーには、山の地形を生かしたワイルドなアクティビティが大充実しているのです。
山頂の絶景、ハイキング、サイクリングにマウンテンバイク、ツリートレッキングにオフロードカーなど、楽しめるアクティビティは実にさまざま。中でもおすすめしたいのは、美しいエメラルドグリーンの渓流で楽しむ豪快な「ラフティング」です。
カナダで「ホワイトウォーター・ラフティング」にトライ!
ラフティングとは、特別に設計された丈夫なゴム製のボートで川を下るアウトドアスポーツのこと。「ラフト(raft)」とは「いかだ」や「ゴムボート」のことを指す英語です。ラフティングに使うゴムボートは空気室が大きく、岩や障害物にぶつかっても大丈夫な作りになっています。
1つのボートには6~8人程度の参加者とガイド1人が乗り、ガイドの指示に従って「パドル」と呼ばれるスティックを操作しながら川を下ります。川の水の流れはランダムなので、ボートはあちこちに方向を変えながら進行することもあれば、岩などの障害物に接近することも。そこで、ガイドのかけ声に応じてチーム全員で力を合わせ、全身を使ってボートの向きやバランスをコントロールしながら進んでいくのが醍醐味です。
ウィスラーで楽しめるのは、ラフティングの中でも特に「ホワイトウォーター・ラフティング」と呼ばれるもの。「ホワイトウォーター(whitewater)」は「急流」のことを指す言葉です。
川の流れは、速さや難易度に応じてクラス1からクラス6までの段階があるのですが、主にクラス2以上の急流が「ホワイトウォーター」と呼ばれます。数字が大きくなるほど冒険的な要素が強く、技術が要求されるラフティングとなります。
目にも涼やか。エメラルドグリーンの渓流
ウィスラーでラフティングが楽しめる人気の場所は「グリーンリバー(Green River)」という名の川。この川の流れは「クラス2~3」に分類されます。初心者でもトライでき、かつ急流のスリルも味わえる、実にほどよい難易度です。
川に着くと、まず目に飛び込んでくるのはエメラルドグリーンの水の色。
ラフティングガイドの説明によると、山頂付近の雪解け水はたくさんの木々の葉をかすめながらこの川に到達するため、葉の緑色の成分が水にとけこむからこのような色になるのだそう。また、雪解け水は多様なミネラル分などを含むこともあるため、白っぽいエメラルドグリーンになることもあります。これが、見た目にもなんとも涼しげなのです。
ウィスラーでのラフティングは、気温が上がって山頂の氷が溶け、川の水位が上がる夏だけのお楽しみ。気温や気象状況にもよりますが主に6月~8月がシーズンで、特に気温が上がった直後や、川が支流と合流する場所では水量が増え、迫力も満点です。ボートに同乗するガイドは、そうした水量の変化や地形なども考えてコース取りをしているのだとか。
筆者が小学生の子どもと一緒に参加した日もちょうど気温が上がり、水量が増えたタイミング。スピードが出る箇所があることも予想され、とてもワクワクしていました。
ラフティングをはじめる前には、パドルの動かし方やボートのつかまり方、ガイドの指示に応じた体の動かし方などを練習します。ライフジャケットやヘルメットなどの安全のための装備をきちんと身につけることとともに、恐怖心がない状態で参加することが大切です。
とはいえ大自然が相手ですから、アクシデントはつきもの。実際、筆者の子どもにも思いがけない出来事が起こりました。
チーム全員で力を合わせて、全身でボートを操作せよ!
ラフティングでは川の流れにボートが翻弄され、ときにボートが大きな岩にぶつかったり、急流で斜めになってひっくり返りそうになったりも。川の段差のある場所で一瞬ボートがジャンプして宙に浮くことや、水面を連続してバウンドするようなこともあります。
大きな揺れがあるときには、ガイドから「Hold on!(つかまって!)」、「Get down!(伏せて!)」などの指示が。そうしたときには、パドルをボートの底に置いて指定の動作を取るなどの素早い動きも要求されます。
パドルを前向きに漕いだり、後ろ向きに漕いだり、パドルから手を離してボートにつかまったりと忙しいのですが、みんなで協力して難所を乗り切ったときのチームの一体感は最高です。
ええっ!? ラフティング中に、子どもが川に落下!
ラフティングは、川下りの距離や流れのスピードなどから設定される難易度に合わせて参加可能年齢が設定されています。このウィスラーのグリーンリバーでのラフティングは「10歳以上で体重40キログラム以上であること」が参加条件。
参加者の多くは大人の友人グループや、中高生くらいの子どもとその親などの家族連れ。私と一緒に参加した小学生の娘はこのボートの最年少メンバーでしたが、過去に日本国内の埼玉県・長瀞でのラフティング経験があったので怖気づくこともなく、順調に楽しんでいました。
しかし、事件は起こります。
川が支流と合流し水量が増えたところでボートが不規則に大きく揺れ、なんと娘ともう一人の大人の参加者が川に落ちてしまったのです!
しかし、そんなときでもアクティビティガイドは手慣れたもの。
目にもとまらぬ速さで、まず子どもを引き上げて救出、続いて大人をボートに引き上げました。他の乗組員も協力し、落ちた人に手を貸してボートの上に引っ張り上げます。落ちたのも一瞬の出来事なら、救出されたのも一瞬。あっという間の出来事でした。
ボートから落ちた子ども本人も「水が冷たくて気持ちよかった!」とむしろ楽しんでいたくらい。この一件で、ガイドたちが相当の経験や訓練を積んでいることが感じられました。
そのようなアクシデントも楽しみながら、ボートはときにスピードあげ、ときにゆったりと、絵画のような景色の中を進みます。ゴールまで楽しいライドが続きます。
このグリーンリバーでのラフティングは、準備や説明の時間を含めて約2時間半のアクティビティ。実際にボートに乗っている時間は1~1時間半程度、距離にして約5kmの川下りです。
思ったより行きやすい! ウィスラーへは直通バスが便利
オリンピック会場になるほどの本格的スキーリゾートと聞くととても遠そうなイメージですが、ウィスラーはバンクーバーの中心地から車やバスで2時間の距離。バンクーバー国際空港からでも約3時間で到着できます。いずれも便利な直通バスが出ており、運賃もバンクーバー中心地からの往復で50カナダドル(5280円)前後、空港からの往復で85カナダドル(8970円)前後と比較的手頃です。(時期や時間帯によって多少異なります。2024年8月調べ)
バンクーバーから日帰りでも行けてお楽しみいっぱいのウィスラー。夏はラフティングだけでなくさまざまなアウトドア・アクティビティがあり、音楽イベントなども開催され、夜も9時過ぎまで明るいのでたっぷり遊べます。寒い冬と違って軽装なので荷物も少なく、思ったより気軽に行けますよ。
そして、クラス2~3の「グリーンリバー」を制覇したなら、クラス3~4のさらなる急流「エラホリバー(Elaho River)」や「スコーミッシュリバー(Squamish River)」でのラフティング、全長20kmの未開の自然の中を行くラフティングツアーなどさらにワイルドな自然を味わえるコースもあります。筆者親子も次はこれに挑戦したい!
豪快で爽快なウィスラーの絶景ラフティング、ぜひお試しあれ。
ウィスラー公式観光サイト:ツーリズム・ウィスラー https://www.whistler.com/
日本語でのツアー手配:ジャパナダ エンタープライズ https://japanada.com/
空港や市街地からの直通バス:YVRスカイリンクス https://yvrskylynx.com/
海外への教育移住や子連れ旅行について情報を発信するフリーライター。ライフスタイル、カルチャー、旅、子育て、海外移住、英語学習などに関する多数の記事を雑誌・Webメディアに執筆。海・川・湖などの水辺が大好き。海水魚についてちょっと詳しい二児の母。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員