オートキャンプでは味わえないクセになる冒険感
自転車用のキャリアやラックを使わず、バッグを直接フレームやハンドルなどに装着。そこにキャンプ道具を積み込み、キャンプツーリングに出かけることを「バイクパッキング(Bikepacking)」という。最小限の道具を厳選し、できるだけ装備を軽くすることで、移動途中の走りも楽しめるアドベンチャー感のある遊び方だ。最近では定義も緩くなっていて、ラックを使ったパッキングスタイルでも、バイクパッキングと呼ぶ人もいる。
いずれにせよ、機動力の高い自転車で移動するため、自動車より自由に、歩くより速く、しかも人力だけで旅を楽しむワクワク感を味わえる。要は自転車で自走キャンプすること自体が日常とかけ離れた冒険であり、それが楽しいわけだから、自転車や道具の積み方、ましてや呼び方に執着する必要はない。
とはいいつつ最新ギアは気になるもの。そこで使ってみたかった憧れの最新ギアを輸入代理店からお借りした。バイクは、コナのグラベルバイク「ローブLTD」。そこに、ドイツの防水バッグブランド=オルトリーブがリリースする「バイクパッキングシリーズ」のバッグを装着。総額41万6900円(自転車+バッグ)となかなかゴージャスな仕様だ。
普段は、20年近く乗り続けている古めかしいバイクを使い、大型のフロントラック&バッグをメインに、サドルバッグとフレームバッグにも荷物を振り分けて自転車キャンプを楽しんでいる。レトロなキャンプツーリングスタイルと、最新のバイクパッキングスタイルでは、なにが違うかをレポートしたい。
バイクパッキングに相応しいバイクと、使いやすいバッグ
目的地は、自宅から約35km離れたキャンプ場。途中、道路がかなり荒れた広域緑道、河川敷など、ダートやそれに近い路面を走る区間も多い。目的地のキャンプ場は都市型で、自転車で15分も走れば大型スーパーがある。キャンプは1泊2日。キャンプ道具は、必要最小限のものを厳選。
食材やアルコール類(ビール、ワイン)は、キャンプ場に到着後、設営してから買いに行けるので、積載したのはキャンプギアだけ。少ない着替えと撮影用の機材は、バックパックに収納した。
グラベルバイクは、キャンプツーリングのためにある
コナ/ローブLTDについては、以下の記事で詳しく紹介しているので簡単に。
このバイクは、アルミよりも格段に乗り心地がいいクロモリスチール製のフレームに、振動吸収性に優れたカーボン製のフロントフォークを組み合わせている。フレームとフォークには、市販のバッグなどを装着するためのネジ穴がたくさん用意されている。変速機はフロント2×リア11段。ブレーキは、制動力に優れる油圧ディスクだ。そして、タイヤは650B×47というMTBに近い太さのものだから未舗装路でも安心だ。
しかも、フレームの設計は、スピードや着順を競う極端なレース仕様ではない。キャンプツーリングや普段乗りに照準を絞った、ゆっくり乗っても楽しく体がラクな、いわば「ユル系」のスポーツバイクなのだ。低速安定性が高いから、キャンプ道具を積んでも安心して走れた。もちろん、その気になってペダルを踏めば、ハイスピードでグラベルを駆け抜けることもできる。
コナ/ローブLTD
- 完成車価格:321,200円
- 発売元:エイ アンド エフ
- ホームページ:https://www.konaworld.jp/
防水バッグだから、雨が降っても安心
バッグは、すべてオルトリーブの防水仕様。今回使ったバッグは、そこに収納していった道具とあわせて紹介する。すべてのバッグに共通して感じたことは、装着のしやすさと軽さだ。面ファスナーやストラップなど、装着する場所によって最適な装着方法が選択されていて、走行中に緩むことも、フラフラと揺れることもなかった。
どのバッグもバイクと一体になり、しかも前後の車輪の内側にすべてが収まるために、走行バランスが保たれ、ハンドリングが極端に悪くなることもない。2日間とも晴天だったため、防水性は試せなかったが、積載性のみならず走行性まで、バッグとしての完成度の高さに驚かされた。
ハンドルバーパック 9L
このバッグは、両サイドが開閉できるタイプなので、テント(ポール)などの長い物でも出し入れがしやすい。ハンドルへの装着は、まず面ファスナーのストラップで固定した上に、オレンジ色のストラップを使って固定する。この二重構造のストラップのおかげで、しっかりと取り付けられる。さらに背面には、パッドを介してヘッドチューブに回すストラップもある。走行中に不快なバッグの揺れを一切感じなかった。
このバッグのなかには、ソロテント(スノーピーク/ラゴ1)だけを積んだ。開閉口はロール式で荷物のサイズに合わせて大きさを変えられる。エア抜きのバルブも付いているので、簡単に空気を抜いてコンパクトにできる。さらに外側のストラップを利用して、バッグの外にヘリノックスのチェアゼロと、スノーピークのチタンマグカップを取り付けた。
ハンドルバーパック 9L
- 価格:22,000円
- サイズ:幅40×高さ16×奥行き16cm
- 容量:9L
- 重量:375g
- 耐荷重:5kg
- 発売元:ピーアールインターナショナル
- ホームページ:http://g-style.ne.jp/brand_detail.php?id=21
シートパック 16.5L
ロール式で荷物の量とサイズに合わせて容量を調整できるシートパック。今回は、出発前に晴天と気温上昇が予想できたので、熱中症対策のために急遽タープ(スノーピーク/ペンタシールド)を積載。あわせて長めのポール(収納サイズ=長さ38cm)も2本用意。ほかにSOTOのミニマルホットサンドメーカー、BE-PAL付録の小型焚き火台を入れた。長い物、かさばるものの収納で威力を発揮する便利なバッグだ。こちらにもエア抜きバルブと、外付け用のバンジーコードが付属する。とにかく容量が大きく、まだまだ余裕があった。
シートパック 16.5L
- 価格:29,700円
- サイズ:幅64×高さ30×奥行き22cm
- 容量:16.5L
- 重量:456g
- 耐荷重:5kg
フォークパック 4.1L×2個
フロントフォークの左右にフォークパックを装着。このバッグは、アダプタープレートを装着しておけば、レバー操作でワンタッチで着脱できる便利品。左側には、寝袋、マット、バーナー、モバイルバッテリーを。右側には、調理器具(カップ類)、カトラリー、ナイフ、プラティパス、ライト、ランタン、洗面用品、タープ用ペグなどの小物を収納。今回は、4.1Lで丁度よいサイズ感だったが、もう少し長期になって荷物が増えた場合を想定すると、ひとまわり大きな5.8Lサイズという選択肢が用意されているのもうれしい。
自転車に装着したときに、バッグが前輪の中心より内側(体寄り)にセットできた。このため重心バランスを崩すことなく、ハンドルの操作性が鈍くならない点がかなり快適だった。いつか長距離やグラベルだけを走って移動する旅にも使ってみたい。
フォークパック 4.1L
- 価格:11,000円(1個)
- サイズ:幅17.5×高さ28×奥行き11cm
- 容量:4.1L
- 重量:290g
- 耐荷重:3kg
- 付属品:QLSsystemアダプター
フレームパックトップチューブ
4本の面ファスナーでフレームに装着するフレームパック。バッグ上部のフレームと接する部分の素材が滑りにくいもので、一度、面ファスナーのストラップを締めると緩みなく走れるところはさすが。大きなジッパーは引きやすく開閉が楽。
ここには、折りたたみテーブル、ガスカートリッジ、折りたたみ式の火バサミ、空気入れ、パンク修理セット、工具、ワイヤーロックを収納。まだ余裕があったので、荷物が増えた場合に備えてラバーストラップ2本も入れた。走行中に自転車のトラブルがあったときに対処するための道具は、すべてここに。
フレームパックトップチューブ
- 価格:22,000円
- サイズ:幅40×高さ15×奥行き6cm
- 容量:3L
- 重量:170g
- 耐荷重:3kg
バッグ以外に装着した小物
ハンドルにバッグを装着したため、へッドライトを取り付ける場所がなくなった。そこでフロントフォークの先端にあるネジ穴に、市販のライトマウントを装着して対応した。メインフレームには、ボトルケージ1個とボトルをセット。
今回は、途中、コンビニやスーパーが多いルートだったので、ボトルは1個で十分と判断したため。そのほか、万が一、帰りに荷物が入らなくなった場合に備えて、積載性を確保するケージ(小さなキャリア)をボトル台座に装着。幸い今回は出番がなかった。
冒険感を楽しめる自由なバイクパッキング
今回積載した道具の重さは約9kg。それなりに重量感はあるが、普段自分が使っている自転車と比べて、重量配分が良く、ハンドリングに変なクセも出ることなく、安定して走れた。基本設計がツーリング向きのグラベルバイクと、たっぷり積めてバランスよく走ることを両立したバッグのおかげで、重い荷物を装備して走ることが、まったく苦にならないキャンプツーリングを楽しめた。今の時代、せっかくこんな素晴らしいバイクとギアがあるのだから、それを選択しない手はないと実感した。
いくつになっても子供のころのように心躍るバイクパッキング。自転車で街を抜け出し、自力で移動するからこそ体験できる、アドベンチャー感満載のキャンプスタイルをぜひ試していただきたい。