「日本のアリゾナ」、そう形容されることもある浄土平は、磐梯朝日国立公園の磐梯・吾妻地域に属し、福島県の磐梯吾妻スカイラインの中間地点の標高 1,600 メートルに位置しています。
磐梯吾妻スカイラインから続く荒涼とした赤や褐色の岩肌は在米時に何度も訪れたグランドサークルのアリゾナやユタの大地を思い出させます。
福島県には災害救助犬の訓練施設があり、私とコアは訓練後に浄土平にたびたび訪れています。「浄土平」という特徴的な名前は、吾妻小富士や一切経山(いっさいきょうざん)に囲まれた鮮やかな花々に満ちた平坦地が、厳しい山道を歩んできた登拝者にとって極楽浄土のように思えたことから名付けられたと考えられているそうです。
浄土平は標高が高いため、ひと足早く秋の紅葉が訪れます。 今回はたくさんある探勝路の中から、 紅葉に彩られた天空の湖を周遊する「鎌沼コース」をコアと歩きながら紹介します。
待ち遠しい秋の外遊びの計画にお勧め!浄土平ビジターセンターをスタートして浄土平湿原へ
鎌沼コースは、一周約 5.1km、標高差が約190m。浄土平ビジターセンターに車を停めてスタートし、所要時間 2 時間弱ほどの自然探勝路です。登山道を歩くコースでもあるのでしっかりとした靴が必要。標高が高いため気温が平地より10 度くらい低くくなるので、雨具を兼ねた上着を持っていきましょう。
浄土平ビジターセンターから、浄土平湿原のよく整備され歩きやすい木道を歩き、登山口に向かいます。体力に自信のない方は、この浄土平湿原の平坦な木道コースを歩くだけでも楽しめると思います。浄土平湿原にはバリアフリーのコースもあるので、ビジターセンターで確認してみてください。
紅葉も美しい登山道へ
浄土平湿原を抜けて、登山道に入ると、ごろごろと石が転がる登りが続きます。赤茶けた登山道の足もとには、あちらこちらにかわいらしい高山植物を見ることもできます。20~30分ほど登ると、前方右側には噴煙をあげる一切経山、後ろを振り返ると紅葉越しに吾妻小富士が見えて、その美しさに疲れも吹き飛びます。
酸ヶ平避難小屋の分岐からは、のんびり木道歩き
浄土平ビジターセンターから40 分~50分登りきると、酸ヶ平(すがだいら)避難小屋のある分岐に到達します。 大人気の一切経山や五色沼(別名:魔女の瞳)方面へのコースは、避難小屋の左側を登っていきます。こちらはハイカーがとても多く混雑しているので、犬を連れている私は空いている鎌沼コースを選びました。
酸ヶ平避難小屋から鎌沼を一周するコースは、ここからはほぼ平坦な木道になり、とても気持ち良く歩けます。のんびり紅葉を楽しみながら木道を歩いていくと、鎌沼に出られる広い場所があります。
錦秋に彩られた鎌沼は青く透き通り、まさに天空の湖のようです。 ここで休憩をしたり、お弁当を食べているハイカーもいます。コアはハイカーのみなさんとの記念撮影に呼ばれたり、SNS をしていないかと訊かれたり、ゆで卵をもらったりと人気者でした。
鎌沼を眺めながらゆっくり休憩してから、湖畔の木道コースを歩いていきます。木道コースは平坦で歩きやすく、湖に近づいたり離れたりしながら、さまざまな景色を楽しむことができます。ところどころにベンチがあり、休憩することもできます。
浄土平ビジターセンターへ向けて下山
鎌沼の木道コースが終わると、ビジターセンターに向けて下山になります。 もともと木を組んだ階段だったであろう下山道ですが、雨で土が流れてしまい、かなり段差があったり、崩れていたりと歩きにくい箇所もあるので、気をつけて下山します。本来は飛ぶように山道を駆け降りられるであろうコアは、のろのろと下山する私にリードで繋がれているので、内心、「かーちゃん、どんくさいなぁ」と思っているかもしれません。
そんな私とコアは、途中で写真を撮ったりお茶休憩したり、ゆっくり歩いてスタートから2時間半で無事にビジターセンターまで下山しました。
ビジターセンターの向かいにあるレストハウスにはお食事処もあり、真っ青な魔女の瞳ラーメンが名物だそうです。私はコアがいるので、レストハウスには入れませんが、トレッキングから戻ったらレストハウス前のキッチンカーで、コアも食べられそうなものを選んで、おやつに分けあって食べるのが恒例になっています。コアもいっぱい歩いた後に一緒に食べるおやつを楽しみにしているようです。
今回は鎌沼コースを歩きましたが、浄土平にはたくさんの楽しみ方があります。ビジターセンターで目的や体力に合わせたコースを提案してもらえますので、相談してみるのも良いと思います。私も春や初夏に訪れた時には、高山植物の開花情報を教えてもらったりします。
浄土平の紅葉の見頃は例年 9 月下旬から 10月初旬ころ。雄大な景色と紅葉のコラボレーションを歩いてみませんか?
注意しましょう!
ハイカーとすれ違う時は犬が苦手な人もいるので、犬と端に寄りましょう。
また、数年前、先代犬 Rookie と下山する時に、藪の中から熊のものと思われる強い獣臭を感じたことがありました。浄土平全域で熊の目撃情報もあるようです。必ず熊鈴を持ち、注意しながら歩きましょう。