オーストラリアの「最後の秘境」のさらに先へ…【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】
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    2024.09.21

    オーストラリアの「最後の秘境」のさらに先へ…【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】

    オーストラリアの「最後の秘境」のさらに先へ…【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】
    世界の歴史は冒険の歴史でもある。最近ふとそんなことを思いました。

    台湾の先住民族がインドネシアやマレーシアで混血したあとポリネシアに渡り、ポリネシアンたちはそこからさらに南はニュージーランド、東はイースター島、北はハワイへとの大海原を移動した。

    チンギス・カンの時代のモンゴル人たちは、東は中国、西はヨーロッパへと遠征した。

    大航海時代、ヨーロッパ人たちはきっとあると信じた「新世界」を目指して大海原へと船出した。

    …そもそもアフリカで生まれた人類が世界中に広がっていった。

    そんなことを考えると、「もっと冒険せなあかんぜよ、日本人」と思うわけです。

    どうも。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。

    オーストラリア最後の秘境(?)アーネムランドに潜入【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】 | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

    【アーネムランド旅vol.2】そこには「夢の国」と「夢の跡」がありました

    前回の【アーネムランド旅vol.1】で訪れた人口約1200人の街ガンバランヤを出発。我々海外合同取材班一行は四輪駆動車でさらに奥地へと向かいました。

    橋のない川をいくつか渡り未舗装の道を突き進むことなんと5時間! 私たちはようやく目的地である「コバーグコースタルキャンプ」という宿泊施設に到着しました。

    5時間もの移動をやけにあっさり書いていますが…まあ、道中観光地らしい場所はどこにもなく、また道路も電柱がないどころか未舗装なので、「とにかく暗くならないうちに安全に到着すること」が最優先だったのです。

    てなわけで特筆できるできごとはスイギュウに遭遇したことくらい。笑

    なにもかも超「開放的」な宿に宿泊!

    日の入りには間に合わなかったけど、夕陽を眺めながらここでウェルカムドリンク。

    冒頭の写真もここからの風景です。

    さてこの「コバーグコースタルキャンプ」、宿泊するのは8棟ある常設のサファリテント。

    こちらが外観。暑さを避ける高床式ですね。

    シングルベット二つのみの家具。

    電気は基本的に太陽光発電なのでエアコンも冷蔵庫も部屋にはなく、小さな読書灯があるだけです。

    食堂兼リビング兼キッチンはサファリテントではない恒久的な建造物ですが、なんと壁は3面しかない(つまり1面はなにもない)開放的なものです。

    開放的と言えばシャワーとトイレもです。部屋にはついておらず、外を30秒ほど歩いていかなければならないのですが、これほど大自然を眺められるシャワーとトイレはそうはないでしょう。

    大海原を眺めながらのシャワーです。

    こちらがトイレの入口。

    これ以上、開放的な用足しは「草むら」しかないでしょうね。

    というわけでまったく洗練はされていません。でもここは「便利さ」を楽しむ都会ではありません。ただただ「大自然」を楽しむ…というよりも「大自然に包まれる場所」です。

    ちなみにガンバランヤの村を出てからはwi-fiもなくスマホも電波が届きません。つまり強制的に「デジタルデトックス」状態になります。

    ちなみに最寄りのスーパーマーケットはどこにあるのか訊いたところ「ガンバランヤ」との答え。つまり前回紹介した私たちが丘に登って壁画を鑑賞した村です。はい、車で5時間です。

    もう、吉幾三さんもビックリのへき地です! ただ幸いなことに水は地下50メートルから汲みあげてるとのこと。

    太公望たちの「夢の世界」

    さてさて、ではなぜこんなへき地にこんな不便な宿があるのか。「大自然を満喫するため」なら最寄りの村およびスーパーマーケットから5時間も離れなくてもいいでしょう。というか、そもそも最寄りの村であるガンバランヤ自体がかなりの大自然に囲まれた場所なのですから。

    ここに人気がある理由。それは「大物が釣れる海」があるからです。はい、ここのメインのアクティビティーは「海釣り」です。釣り好きの富裕層たちがチャーター飛行機でやってきて(陸路だとダーウィンから休憩時間を含めて約10時間)、1~2週間とにかく釣り三昧の日々を過ごして、またチャーター飛行機で帰る。そんな場所です。

    というわけで我々海外メディア合同取材班も翌日モーターボートで海(バン・ディーメン湾)に出てみました。とはいえ、このメンバーはいずれも釣りの経験はほとんどない。それでも3匹のタラをサクッと釣り上げることができました。

    釣りにいそしむ面々。

    まあ、特に釣り好きでない私たちなので仮に釣果がなかったとしても、波が穏やかな湾内をモーターボートで爽快に走っているだけで楽しくてたまらなかったはず。

    さてタラを船長が船上でさばいていたので、魚好きの日本人としてはアレをお願いせずにはいられませんわな。

    「ワンピース(一切れ)だけ刺身で食べさせて」と。…こんなこともあろうかとしょうゆも持参。笑

    太陽光発電に頼っているのでそれほど大きな冷蔵庫があるわけではありません。その日に食べる分だけ釣ったらそれでおしまいです。

    というわけで太公望ではない私たちは釣りを切り上げて、ワニ探しの旅に出かけることにしました。

    「ワニの生け捕りを試みる柳沢隊長」という雰囲気で写真を撮ってもらいました。

    はい、もちろん生け捕りなんて無理です。良い子は決してマネしないように。

    でもこういう格好をしていたら「某海賊マンガ&アニメ(小学館のものではないので名前は控えますが…2つ前の画像のあたりでヒントを出しておきましたよ)みたいでかっこいい」と女性陣から大評判。ありがとう、マンガ&アニメ大国ニッポン! …ただ後ろ向きで「かっこいい」にはイマイチ納得がいきませんが。

    そしてついにワニも発見。

    のんきにあくび中…ではなく、体温調節中という説があるのは【世界遺産「カカドゥ国立公園」旅vol.3】でもお伝えした通り。

    夕飯のテーブルにはその日の釣果が並びました。

    そしてシェフが手にしているのはマッドクラブ(和名はノコギリガザミ)。鳥かごを大きくしたようなしかけで捕まえるだそう。

    とにかく釣り人たちにとってここはパラダイスです。

    他にも四輪駆動車を使った陸路のツアーでは、世界で最初に「ラムサール条約」に登録された「コーバーク半島」の湿地帯などが見どころ。

    とはいえ訪れる人が少ないからか「展望台」みたいなものはありません。

    開拓者の「夢の跡」へ

    一方でここはパラダイスの跡地でもあります。このあたりに白人が入り込み始めたのはじつは最近のことではなく、なんと18世紀初頭に3度、イギリスが居留地を作ろうと試みたのだそう。ニューギニア島など周辺に浮かぶ島々との交易の拠点として、「第2のシンガポール」を目指したのだとか。

    ガイドさんの話によると、その居留地にはのべ300名ほどが暮らしていたとか。その遺構をめぐるトレッキングコースになっています。

    案内版には「3.7キロメートルで約2時間」とのこと。

    ほぼ平坦な道のりなので歩くだけなら1時間もかからないでしょう。とはいえ途中で見どころ、および「感じどころ」が満載です。

    地下弾薬庫跡。

    フランスやオランダなどの他国の侵略に備えて砲台も設けたそうですが、結局は使うことはなく仲良く交易したのだとか。

    病院跡。

    病気になっても安心。いや、こんなところで病気になったら不安でしょうね。

    家の跡。壁に穴が開いているのは暖炉です。

    これを見てふと疑問が沸き起こってきました。このあたりは熱帯です。暖炉なんて設備的にいちばん必要ないのではないでしょうか? その質問にガイドさんの答えは「イギリスと同じ様式で生活がしたかったからですよ。やっぱり望郷の念に駆られていたんでしょうね」。

    そしてもう一つ興味深い話を教えてくれました。「じつは女性たちは当時のイギリス女性が身につけていた八重のペチコートまで着ていたんですよ。この暑い気候の中で」。

    ここでいう「ペチコート」は今の日本で使われている「スカートの内側、パンティーの外側に着用する下着」ではなく、「何層かになっている厚めのスカート」くらいの意味です。

    一年中最高気温は30度越えで、最低気温も20度越え。そんなこのあたりでも「イギリス風」の生活を守ろうとした人たちのことを考えるとなんだか無性に切なくなりました。

    当時は飛行機なんてない時代。今の私のように気軽に一時帰国なんてできないでしょうし。

    当時の人たちも海を眺めながら望郷の念に駆られていたのかな?

    残念なことに開拓者たちの物語はハッピーエンドでは終わりませんでした。19世紀初頭に疫病や何度か見舞われたサイクロンでコミュニティーは全壊。以降ヨーロッパ人の「植民地拠点」としての役目は終えました。

    そんな悲しい廃墟を、当時に想いを馳せながら歩く約2時間のトレッキングコース。ガイドさんによると年間で訪れるのはせいぜい1500人ということですが、それでもしっかり整備されていました。そして整備してくれてありがとうと思いました。

    出かける前にソワソワするのも旅。行っている最中にワクワクするのも旅。でも家に帰ってきてホッとするのも旅の一面ですよね。

    ほぼほぼ「片道切符」に近かったであろう当時の入植者たちに思いを馳せながら、また旅に出ます。

    【柳沢有紀夫の世界は愉快!】シリーズはこちら

    Cobourg Coastal Camp
    https://cobourgcoastalcamp.com.au/

    オーストラリア政府観光局
    https://www.australia.com/ja-jp

    ノーザンテリトリー政府観光局
    https://northernterritory.com/jp/ja

     

    私が書きました!
    オーストラリア在住ライター
    (海外書き人クラブ)
    柳沢有紀夫
    1999年からオーストラリア・ブリスベン在住に在住。オーストラリア関連の書籍以外にも『値段から世界が見える!』(朝日新書)、『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか?』(新潮文庫)、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)、『世界ノ怖イ話』(角川つばさ文庫)など著作も多数。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」のお世話係

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