今年は中秋の名月の翌日が満月ってどういうこと?
中秋の名月とは、旧暦8月15日の丸い月のことです。中秋を文字通り「秋の真ん中」とすれば、旧暦の8月15日の頃はすっかり秋の気候だったのでしょう。お団子やススキを飾って、虫の声を聞きながら月を見上げる……いかにも涼しげな行事です。
ところで今年の中秋の名月は、厳密には満月ではありません。満月になる瞬間は翌18日の11時34分です。
旧暦は約29日半で繰り返す月の満ち欠けを基準にした暦です。新月の日を「1日(ついたち)」として、約30日で次の新月になるので、その半分にあたる15日は必然的に満月になる……と思われるのですが、実はそうでもありません。
先ほど新月の日を1日とすると書きましたが、新月は太陽・月・地球がこの順番で一直線に並んだ瞬間を指します。0時1分であろうと23時59分であろうと、その瞬間を含む日が旧暦の一日です。新月になる時刻が遅かった場合、旧暦15日の夜に現われる月は、まだ満ち始めてから14日しか経ってないため、満ちきってないことになるのです。
これに加えて、月の軌道は、完全な円ではなく楕円形であり、いつも新月から満月までにかかる時間がピッタリ同じというわけではありません。こうした理由から、新月から15日目が必ず満月になるとは限らないのです。
そういうわけで、中秋の名月と本当の満月の日がズレてしまうのは、それほど珍しいことではありません。なお、今回は「翌日の正午」が満月の瞬間なので、その半日前にあたる中秋の名月と数時間後にあたる当日の月の形に大きな違いはなく、どちらも美しい満月に見えるのではないかと思います。今年は2日続けて「お月見」が楽しめるというわけです。
月がいつも同じ面を向けているわけ
満月の月は「ウサギが餅をついている」ように見えますが、なぜいつも月は同じ面を地球に向けているのでしょうか。それは、月の公転と自転が完全に一致しているからです。
月は地球の周りを約27日かけて一周します。これが公転です。そして、まったく同じ時間をかけて自転しています。公転と自転の周期が完全に一致しているのです。そのため、地球からはいつも同じ面しか見えません。
では、月の裏側はどうなっているのか? これまで多くの探査機が月を訪れて、その裏側を撮影しています。
月の裏側は、私たちのよく知る表側と比べると、全体に白っぽく、凹凸が少なく見えます。
表側のほうは白い部分と黒っぽい部分、コントラストがはっきりしています。この黒っぽい部分は「海」と呼ばれ、月のウサギの模様は、この海が形づくっているのです。海の正体は、火山活動で流れ出したマグマが巨大なクレーターの底に溜まったものです。
なぜ裏側のほうに海が少ないのかというと、裏側はマグマの流出が少なかったからだと考えられます。
では、なぜ表側でマグマの流出が多いのかというと、常に地球側に向いているからです。地球と月の間にはお互いの引力が働いています。常に地球のほうを向いている月の表側には、地球から引っ張られる力が大きく働きます。そのため地下のマグマが地表に引っ張られやすいと考えられるのです。日本では激しい噴火を伴いながらマグマが地上に出て積み上がり、火山を残しますが、月のマグマは比較的サラサラしていたと考えられます。そのためマグマはジワリと滲み出て、クレーターの凹みに向かって流れていったのでしょう。
近年、中国の探査機が月の裏側に降りて探査を続けています。今年は月の岩石サンプルを地球に持ち帰っており、これからその分析が待たれます。
もしも人間が月に住むとしたら裏側か?
このように月の表側と裏側では地表の性格が異なります。近年、月の探査が進み、月の南極付近のクレーター内部に氷が溜まっている証拠が得られています。南極は太陽が高く昇らないため、クレーターの奥深くではどの時間でも日が当たらない「永久影」ができやすいのです。
もし将来、人間が月に住むとしたら、南極周辺になるのではないかと予想されます。月には大気がないので、太陽光が直撃する日中の表面温度は100度Cを超えますし、太陽が当たらない時はマイナス200度Cくらいまで下がります。寒暖の差だけでなく、放射線や紫外線もおびただしい量が降り注ぎます。なるべく太陽光が届かない場所のほうが住みやすいのではないでしょうか。
月の南極は地球からは縁のあたりに見え隠れしています。今年は、地球から見えない裏側の様子を想像しながら、どうぞ中秋の名月をお楽しみください。
構成/佐藤恵菜