【佐藤ジョアナ玲子のアマゾン旅 vol.3】アナコンダが出現する深い森の隠れ家と、木舟の屋根づくり
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    2024.10.05

    【佐藤ジョアナ玲子のアマゾン旅 vol.3】アナコンダが出現する深い森の隠れ家と、木舟の屋根づくり

    【佐藤ジョアナ玲子のアマゾン旅 vol.3】アナコンダが出現する深い森の隠れ家と、木舟の屋根づくり
    皆さん最近、川下ってますか?川で遊びたい、川を旅したい、そんな思いを抱えながら悶々と過ごしていた私ですが、ついにアマゾン川を訪れることに。

    なんといっても私の夢は、世界各大陸の川を下ること。アマゾン川はハズせない憧れの川。とにかく大きいアマゾン川だから、そこで出会うものも規格外に大きくて、驚きの連続でした。

    今回はそんな川下りの旅に出発する前に訪れた、とある森の隠れ家での出来事をお話します。

    アナコンダが出る家とは!?

    アマゾンの森

    木舟に屋根を取りつけてくれる大工がいると聞いてやってきた、アマゾンの森。

    アマゾン川下りの旅を夢見て私が訪れたのは、ペルーの町プカルパ。そこで念願の木舟(私の愛しいペケペケ号。名前の由来は前回の記事にて)と小さな船外機を手に入れて、出発の準備は万端!かと思いきや、周りの人たちはまだちょっぴり心配そうな顔。アマゾン川下りの旅に肝心なものを忘れているというのです。

    【佐藤ジョアナ玲子のアマゾン旅 vol.2】旅に必要なものは現地調達!ペルーの小さな町で旅の相棒「船外機」を手に入れた

    「ねえ、まさか屋根なしで川を下るつもり?」

    日差しが強いアマゾン川では、日よけ無しで川を下るなんて無理だそうで、確かにほかの船を見ると屋根が付いているものばかり。

    私としては、川下りで下流へ行くにつれて川幅が広くなれば、きっと風が出る。屋根があると、余計に風の抵抗を受けるのでは…。と、あえて屋根なしで行くつもりでいたのですが、私はアマゾンのド素人。地元の人が「屋根を付けろ」って言うんだから、ここは素直に地元の意見に従うべし。

    そうと決まれば話は早く、船の屋根づくりのエキスパートのところに会いに行こうと、連れてこられたのが森の中。なにやら森を開拓して住んでいる変わり者のイタリア人がいて、しかし時々ヨーロッパへ帰ったり留守にするので、森の番人として一緒に住んでいるおじいさん一家がいるのだとか。そのおじいさんこそ、子供のときからアマゾン川で暮らし、アマゾン川と共に歳を重ねてきた男。彼の手にかかれば、船の屋根づくりなんて余裕のよっちゃん!

    屋根が付いている現地の船

    これは森の持ち主が所有している船。やっぱり屋根が付いている。

    敷地内の森にはいくつかの小屋が建っていて、私のような旅人を受け入れるための部屋まで用意されていました。扉は蚊を防ぐための二重扉。窓の網戸も隙間なし。丁寧な仕事に、屋根づくりへの期待が高まります。

    アマゾンの森の隠れ家の室内

    アマゾンの森の隠れ家。

    ところでこのお宅、アレが出るらしいのです。黒くて、ヌラっとしていて、音もなく忍び寄るアイツ。

    いえ、ゴキブリではありません。アナコンダです。

    家の敷地で犬を襲ったアナコンダの皮

    家の敷地で犬を襲ったというアナコンダが皮になって飾られていた。

    こちらが以前、小屋のすぐ裏に現われたというアナコンダの皮。動物の皮は保存する過程で少し縮むものですが、それでもこの大きさ!長さはもちろん、腹回りの太さを見るに、私なんて簡単に丸呑みにされてしまいそうです。

    このアナコンダが出没したとき、最初に発見したのは飼い犬たち。一匹が襲われ、それを見たほかの犬が加勢して退治したとか。アマゾンで飼うなら、チワワみたいに小さくて可愛い犬よりも、大きくて強い犬を飼いたですね。

    巨大ブルーベリー

    アマゾンのおやつに巨大ブルーベリー。

    ただ暮らすだけで体力を使いそうなワイルドな環境。そんなアマゾンの森を覗いてみて意外だったのは食生活。お肉をモリモリ食べるのかなと思いきや、そういう人ばかりでもないのだそう。

    というのもこの森を切り盛りしているイタリア人は、アマゾンに自生してる植物の研究に取り組むために移り住んできたそう。自分で植物を育ててみたり、お茶にしてみたり。植物の世界に没入するために、お肉もあまり食べないのが信条だとか。そんなお家で出てきたおやつのブルーベリーは、なんと直径が私の指2本分。巨大なヘビと巨大ブルーベリーで、アマゾン川の生命力を感じました。

    ペルーの大工さんに材料を届ける

    旅の相棒のマキシーちゃん

    旅の相棒マキシーちゃんと一緒に、屋根の材料を買い出しに。

    話を川下りの準備に戻すと、ペルーのアマゾン地域で大工仕事を頼むときは、どうやら依頼主が材料を買って持ち込むパターンが珍しくないそうなのです。支払いとしては、職人さんからお客さんに伝えられる金額は工賃のみで、材料費は別。作業を進めるうちに足りないものが出てきたら、一旦作業を止めてその都度請求されたりするのが現地スタイル。

    今回の大工さんは森の中に住んでるので、作業に取り掛かろうにも材料はなにも持っていません。と、いうわけで私は一旦町へ戻り、指定された材料を買って届けることに。お買い物に付き合ってくれたのは、今回一緒にアマゾン川を下ってくれる旅の相棒マキシーちゃんです。

    まず買うのは、船の屋根に張るための防水シート。現地で床下の建築材料などとして使われている防水シートを勧められました。

    「5mください」

    とお願いすると、残りの在庫がギリギリらしく「いいよ。このロール、全部丸ごと売ってあげる」とお兄さん。5mあってもなくても、同じ値段で売ろうというのです。

    一応地面に広げて計ると、6mある。ラッキー!と思いきや、「いやいや、あれは冗談だよ」と前言撤回のお兄さん。きっかり5m分だけ渡されました。

    チェーンを買いに行った金物屋さん

    チェーンを買いに金物屋さんへ。

    買い物はまだまだ続きます。女の子の買い物は長いのです。

    屋根には使わないけれど、買い忘れていた細かい道具も買い揃えます。例えば、チェーン。旅の途中、船着き場に舟を停める際に盗まれないように南京錠をかけておくのです。

    材木店内

    材木店は地元の人しか知らないみたいで、ネットで探しても地図が見つかりませんでした。

    そして最後に立ち寄ったのが材木店。屋根を支える柱が必要です。コロナ禍以降、木材の値上がりは世界中で問題になっているのだとか。ここペルーでも例外ではなく、出費が痛い。そして買ったら買ったで、今度はこれを作業現場までどうやって運ぶのか?

    プカルパではほとんど車が走っていなくて、タイで見かけるようなトゥクトゥクによく似た三輪バイクの乗り物が一般的。このトゥクトゥクはなんでも運べる優れものなのです。というか、身の回りにある道具だけで無理やりにでも解決するのが現地の人の能力で、長い木材も上手いこと固定して運んでしまいました。

    朝5時起きのDIY

    屋根を付けてくれる大工さん

    屋根を付けてくれる大工さん。船が水に浮かんだまま作業をします。

    こちらが今回、我がペケペケ号に屋根を取り付けてくれる大工のおじいさん。出身はコロンビアで、川の近くで生まれ育ち、子供のころから舟のDIYに親しんできたので、「屋根なら任せておけ」と自信満々。

    「明日は朝5時から作り始めるよ」

    ええーっ。朝5時。南米の人って、のんびりしているようで、ほんとうは働き者なんだなあ。よくよく聞くと、お昼以降は暑くて外に出られないので、午前中にしか作業ができないのだとか。

    木材に山刃・マチェットを振る大工さん

    木材に山刃・マチェットを振る大工さん。

    持ってる道具は、必要最低限。錆びたノコギリ、取っ手がグラグラのトンカチ、巻き取り機能が壊れた巻き尺、そして山刀のマチェット。たったの4つだけ。

    木材を大きく切るときはノコギリだけど、溝を作ったり細かい作業はマチェットを振り下ろして削るように切っていきます。マチェットは、庭では草刈りや害獣退治、台所ではココナッツや野菜を切ったり、そして、ときには大工仕事にも活躍するなど、アマゾンでは万能の道具なのです。

    屋根を支える柱の長さはおおざっぱ。釘は舟に直接打ち付けるから、水漏れしないかヒヤヒヤ。だけどやっぱり経験値がものをいうのでしょう。失礼ながら「大体こんな感じかな。あっ、ちょっとズレちゃったけど、まあ良いか」みたいな軽い調子で作業しているようにしか見えないのに、本当に屋根が完成しちゃいました。

    いざ、出発!

    船に乗っていざ、出航

    舟に乗っていざ、出航!だけど私、なにか忘れていない?

    屋根が平たいので、雨が降ったら水が溜まりそうなのが若干心配ではありますが、まあ乾季なので大丈夫でしょう。

    今度こそ、ほんとうのほんとうに出発の準備が整ったのだと、うれしくて早速漕ぎだした私。ところでこの写真の撮影者は誰かというと、今回一緒に旅をしてくれる相棒のマキシーちゃんです。つまりなんと私、旅立ちへの興奮のあまり、マキシーちゃんが乗っていないまま出航しかけてしまうという、しょっぱなから信頼関係を失うミスを犯してしまいました。

    アマゾン川下りの始まり

    ようやくアマゾン川下りの始まりです。

    ペルーに到着してから、こうして実際に舟で出発できるようになるまで、要した期間は3週間。

    普通だったらそれだけでひとつの遠征が完結しそうなくらい、長い時間です。舟を探して村を巡り、やっと舟が見つかったと思ったら、修理をお願いしたり屋根を付けたり。ちょっとずつしか旅が進まないのも、アマゾンらしさなのかもしれません。

    途方もない年月をかけて育まれてきた森。アンデス山脈から海へ向かって、何千kmも旅する川の水。ちょっとずつ、しかし確実に動いているのがアマゾンなんだから、きっと私の旅も少しずつ動くはず(次回へ続く)。

    私が書きました!
    建築学生
    佐藤ジョアナ玲子
    フォールディングカヤックで世界を旅する元剥製師。著書『ホームレス女子大生川を下る』(報知新聞社刊)で、第七回斎藤茂太賞を受賞。中日新聞の教育コラム「EYES」に連載。ニュージーランドとアメリカでの生活を経て、現在はハンガリーで廃材から建てた家に住みながら建築大学に通っている。

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