サルバトーレ・クオモさん
20代前半で中目黒に自身の名を冠したイタリアンレストランの1号店をオープン。ナポリピッツァを日本に広めた第一人者として知られる。’21年に大分県に移住し、地元の果物を原料とするSDGsプロジェクトをスタート。
ナポリピッツァの伝道師は現在、大分県に移住していた
日本で本場のナポリピッツァを一躍有名にしたのがサルバトーレ・クオモ氏。彼がプロデュースしたお店は、現在国内外に250店舗以上に及ぶ。そんなクオモ氏が’21年に大分県に移住し、現在は研究所を立ち上げ、新プロジェクトに取り組んでいる。
「以前は福岡と東京を行き来していましたが、ピザに使うイースト菌の研究をしたくて、果物が美味しい場所を探していました。そんなとき出会ったのが大分県日田市。その田園風景や土壌、水質の良さに惹かれました」
ところが、実際移住し、生活していくなかで、地元の農家の実情を知ったと話す。
「日田はナシの産地なんですが、畑のあちこちにナシが山積みになっているんです。最初は何か作っているのかと思ったんですが、1週間経っても10日経っても放置されたままなんですよ」
農家の人に聞いたところ、傷物や熟しすぎたものは拾いきれなくて捨てている、といわれた。
「もったいない、と思いました。料理人はお客さんに提供するものじゃなく、帰ってくる皿を見ます。それが料理人に対する評価なんです。料理人なら調理したものを捨てたくありません」
過熟した果物はお店では売れないが、料理人にとっては最高の素材。これを生かすために、地元の人たちと協力し、研究所「LAB3680」を始動させたのだ。
「いちばんいい状態の果物を急速冷凍することで、素材として長期間保存できるようにしました。それを必要な分だけ解凍してジャムやソースを作ります」
いったん凍らせることで注文に応じて使えるので、ロスが出なくなるし、それは生産者の生活の保証にもつながるのだ。
「子供とキャンプに行ったら、木の実や山菜などを摘んでみるといい。この木はトゲがある、青い実はまだ摘めないなど、楽しみながら自然を知ることができます。そして、収穫したものでジャムを作るには何が必要でどうやって作るかなど、原料から知ることが大切です。
また、残った食材でいろいろ作ってみましょう。ハーブを使ってボルペッティ(ミートボール)を作ったり、余ったトマトでトマトソースを作るのも手。子供とのコミュニケーションにもなるし、フードロスについて一緒に考える機会にもなりますよ」
週末にはカフェも営業中
LAB3680では九州の食材を使用したピッツァやジェラートを開発中。それらを食せるカフェブランドもフランチャイズ展開している。
地元食材で地産地消に貢献
日田市で栽培された唐辛子とニンニクを使用した唐辛子オイル(¥2,500)。ほかにジャムやマスタードを開発、販売している。
微生物群の働きを利用した有機資材と自家製堆肥を使用した無農薬栽培にも挑戦中。どんなに不ぞろいな野菜も料理に活用できる。
摘んだ果物や熟れすぎた果物はジャムに利用する。クオモさんは同量の砂糖と煮込み、少量のレモン汁を入れるだけ。煮沸消毒した保存瓶に入れて、瓶ごと熱湯で煮て脱気する。
余ったハーブの活用法
ハーブが香るボルペッティ
ハーブはひき肉と混ぜるだけでにおい消しになるので、余ったらミートボールや皮なしソーセージに。味に奥行きが出て、ワインとも好相性。
材料(4人分)
合いびき肉…600g
ニンニク…10g
パセリ…5g
ローズマリー…1g
バジル…2g
塩…7g
こしょう…1g
パルミジャーノチーズ…20g(なくてもOK)
余ったパン…60g
牛乳…100㎖(余ったお酒と水3:7でも)
卵…1個
オリーブオイル(サラダ油でも可) …70㎖
作り⽅
❶パンを牛乳に浸す。15分ほどおくと柔らかくなるので、肉に混ぜやすくなる。
❷ハーブとニンニクをみじん切りにする。そこに塩とこしょうを加えてよく混ぜる。
❸ひき肉に、②と軽く水気を切ったパン、パルミジャーノチーズ、卵を加えてヘラでよく混ぜる。5〜10分ほど寝かせてから、もう一度よく混ぜる。
❹ひとつ60gの玉を12個ほど作る。フライパンに油を敷き、火をつけて油を温める。油の上に肉を並べて中心部分を軽く押し、火の通りを良くする。
❺強火で両面に焼き色をつけたら蓋をして中火で4〜5分加熱する。中まで火が通ったら、よく油を切り、お皿に盛り付けて完成。
ハーブの割合は600gの肉に対し、最大10g。とくにローズマリーやタイムなどの香りが強いものは1g以上入れないようにする。
パンがビシャビシャになるようであれば、軽く水気を切ってから使う。
※構成/大石裕美
(BE-PAL 2024年11月号より)