今回はスウェーデン最高峰の「Kebnekaise(ケブネカイセ)」に挑戦。登頂するには往復60kmを3日かけて歩かなくてはいけないため、長時間歩ける体力は必須。しかし、アクセスしにくい場所だからこそ手つかずの大自然が織りなす絶景が広がっており、北欧のハイカーが「いつかは登りたい!」と憧れる山のひとつです。
そんな北極圏内にあるロングトレイルを2泊3日でトレッキングしたレポートです。
目指すはスウェーデンの最高峰「ケブネカイセ」の頂
ケブネカイセはスウェーデン北部の北極圏内に位置し、標高2,097mとスウェーデン最高峰です。緯度の高い地域に位置するため標高2,000m台といえども、その頂上は氷河に覆われていて、夏でも気温は5度C前後と低いです。
一番近い都市は「Kiruna(キルナ)」で、この周辺はオーロラ鑑賞ができるスポットとしてとても人気が高く、多くの観光客が訪れます。
今回歩いた「ニッカルオクタ」ルート
ケブネカイセへ登るには、「Abisko National Park(アビスコ国立公園)」から南下してケブネカイセを目指すルートと、最短ルートの「Nikkaluokta(ニッカルオクタ)」があります。私たちはポピュラーなニッカルオクタを選択。最短といっても往復60km、標高差2,400m、2泊3日を要するロングトレイルは健脚向けです。
高度な登山技術は必要ありませんが、頂上は氷河に覆われているためアイゼンの着用が必須で、ある程度の登山経験が必要になります。1年を通して歩けますが、冬場は積雪で危険度も上がるため、7月から9月上旬までが最適です。
3日間の行程
- 【1日目】ニッカルオクタの登山口からスタート。ケブネカイセ・マウンテンステーションまで約19km(約6時間)歩きテント泊。山小屋の利用もできます。
- 【2日目】山頂往復約18km(約10時間)を歩きます。登頂後、ケブネカイセ・マウンテンステーションへ戻りもう1泊。
- 【3日目】ケブネカイセ・マウンテンステーションからニッカルオクタへ戻ります。距離約19km(約6時間)。
【1日目】ニッカルオクタからベースキャンプのケブネカイセ・マウンテンステーションへ
スタートはニッカルオクタから。キルナの街からは車で1時間ほど。登山口の有料駐車場は、1日50sek(約700円)でした。ニッカルオクタの建物前にはリュック用のはかりがあったので計ってみました。3日分の食料、テント、寝袋、マット、ウェア、アイゼンなどの重装備です。旦那のリュックが16kg、私のは13kgでした。8時半ごろにケブネカイセ・マウンテンステーションへ向けて出発。
トレッキングした日は9月14日と紅葉の時期でしたが、ハイキングシーズンの終盤だったため、ほかのハイカーは見当たらず静かなスタートとなりました。初日は約19kmを歩きますが、標高差はわずか約200mと起伏の少ない道が続きます。トレイルもよく整備されているので楽に歩けますが、リュックが重いのでゆっくりペースで休憩を入れつつ進みます。
木々に囲まれた森林地帯を1時間ほど歩くと、目の前が一気に開けて壮大な自然が広がりました。んな絶景を楽しみながらゆっくりと進みます。
スタートから6km地点にはボート乗り場があり、ボートに乗れば6kmの道のりをショートカットできます。料金は1人片道450sok(約6,400円)。なかなか高額なので、私たちはトレイルを歩くことにしました。
登山道には標識もあるので迷うこともありません。ケブネカイセ・マウンテンステーションまでは、1kmごとにカウント式の案内板があり、とてもわかりやすかったです。
初日のキャンプ地「ケブネカイ・セマウンテンステーション」へ到着
ケブネカイセ・マウンテンステーションへ無事到着!所要時間は、お昼休憩と短い休憩を含んで約6時間。マウンテンステーションは宿泊施設のほかに、レストラン、売店、ダイニングスペース、サウナまであり、とてもくつろげそうです。
- 2025年の営業予定:【冬期】2月27日~4月21日、【夏季】6月12日~9月21日
敷地内でキャンプする場合は、1泊350sek(約5,000円)かかりますが、建物から150m離れればどこでも無料で設営してOKとのこと。私たちは1kmほど離れた場所で野営することにしました。スウェーデンには「Allemannsretten(アレマンスレッテン)」という自然享受権があり、いくつかのルールさえ守れば、どこでも自由にキャンプができます。
2日目はハードな山登りとなるので早めに就寝しました。
【2日目】ケブネカイセ山頂へ向けてアタック
2日目はケブネカイセ山頂を目指します。往復約18km、標高差1,800m、約10時間とハードな行程です。山頂まで登って、またこのベースキャンプに戻るので、必要のない装備はテント内に残し、食料、水、防寒具、アイゼンなどをリュックに入れて登ります。昨日より荷物が軽いので歩くスピードもアップ!
まずは、標高1,706mのビエランバリ山頂まで登り、そこから下ってから、ケブネカイセ頂上を目指します。急な登り下りを繰り返すため体力を消耗します。
30分ほどで東西に分かれる分岐点に到着。一般の登山者が利用できる「West Trail(西コース)」を進みます。東コースは、氷河を歩き、鎖つきの崖を登るためガイドツアー専用となります。
西コースは、アップ・ダウンが激しい反面、雪がない時期であれば危険な箇所もなく、体力に自信があれば誰でも登れると思います。
このトレイルは、とにかく川を渡る箇所が多いです。川幅は様々で、橋がある場所もあれば、石の上をピョンピョン飛んで渡れる場所もあります。春から夏前の時期は山からの雪解け水で水量も増え、流れも早くなり、渡れずに引き返す人が出るそうなので注意が必要です。
私たちは秋に行ったので水位も低く楽に川を渡れましたが、もう少し川の流れが強かったら難しかったかもしれません。
1時間ほど歩くと、いよいよ急な登りが始まります。ここからは少しゴツゴツした岩場になります。
コース途中には、赤い丸印が描かれた目印があります。短い間隔でたくさん記されていたので、コースから外れる心配もなく、とても歩きやすかったです。
豊富に流れる川の水を給水
ケブネカイセのトレイルには、途中、水場=川がたくさんあり、補給に困ることはありませでした。この地域の川の水はとてもきれいで、そのままでも飲めるそうですが、念のため「SAWYER (ソーヤー)」のミニ浄水フィルターを使いました。浄水器は、ロングトレイルで飲み水を確保するためのマストアイテムです。
橋を渡ると長い石造りの階段が始まります。階段を過ぎると、ひとつ目のピーク「ビエランバリ」山頂へと続くジグザグの急登が見えてきます。ゴツゴツした石の道で、頂上が見えないほどの急坂で、このトレイルで一番の難所でした。
せっかく登ったばかりすが、ここから「Kaffedalen(カフェダレン)」の谷底まで約200m下り、そこからケブネカイセの頂上を目指してまた急斜面を登ります。
壮大なスケールのケブネカイセに登頂
道中2つの避難小屋を通り過ぎ、最後の小屋に辿り着くと、氷河に覆われたケブネカイセが見えてきました。山頂まで約50mは氷河の上を歩くので、アイゼンを装着して慎重に登ります。
念願だったスウェーデン最高峰、ケブネカイセに到着!山頂に広がる360度の絶景は圧巻でした。
約7時間をかけてようやく登頂できましたが、長い帰り道があるので、短時間だけ景色を楽しんで来た道を下山します。
疲れが溜まっていたためか、ベースキャンプまで約4時間半かかり、20時ごろに帰着。出発から13時間も経っていたので、ヘトヘトの状態でテントで眠りにつきました。
【3日目】スタート地点のニッカルオクタへ
3日目は少しゆっくり起床し、テントを撤収してから登山口のニッカルオクタへ戻りました。ルートは初日と同じ道を歩きます。食料が減った分リュックは少し軽いですが、連日の山歩きで疲れていたので、ゆっくりペースで景色を楽しみながら歩きました。
約6時間歩いてようやくニッカルオクタへ到着。重いリュックを背負い約60kmのロングトレイルを3日間歩き疲れましたが、スウェーデン屈指の壮大なスケールの自然を堪能できました。
長時間歩いてでも行くべき「ケブネカイセ」
ケブネカイセトレイルは、雄大な自然の中をゆっくりと歩き、迫力満点の最高峰を登り、山々が織りなす絶景を堪能できる魅力の詰まった場所でした。体力に自信がなくても大丈夫。ケブネカイセ頂上を目指さず、マウンテンステーションまで行って山荘でのんびり過ごしたり、周辺を散策するだけでも楽しめますので。スウェーデンならではのダイナミックな景観を間近に感じられる特別な体験になることでしょう。