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魚を鮮度よく美味しく食べるには、目利き、手当て、処理が大事!
「海辺へキャンプに行くなら、市場まで足を伸ばして、いい魚を手に入れてほしいよねぇ」
そう話すのは、釣り、料理、食文化……と、あらゆる面から魚食を研究する西潟正人さん。
「最近は魚の熟成が流行っているけど、キャンプで魚を食べるなら鮮度の維持のほうが大切。買った瞬間からできるだけ劣化をさせないよう手を尽くそう」
魚の鮮度を保持するために行なう工夫を「手当て」と呼ぶ。使う道具にこだわるよりも、手当てに注力したほうが魚を良い状態に保てる、と西潟さん。
「まずは鮮度のいい魚を目利きする。鮮度ばかりは手当てで挽回できないから真剣に選ぼう」
市場で売られる魚は氷の入った塩水に浸かっている。購入の際は同じものを用意しておき、買った魚をすぐに浸ける。
「でも、浸けっぱなしも良くないんだ。持ち帰ったらすぐに下処理をして、身が氷に直接触れない状態で冷蔵しよう。粘液と血を身に残さないこと、極力水けを取り除くことが大切だね」
さばいた身から出る水分は除きたいが、乾燥させるのもいけない、と西潟さん。
「空気に当てると乾くし酸化も進む。身は必ずラップなどで覆いたい。食べる直前まで鮮度を保てれば、山でだって刺身が食べられる。保冷と保湿こそ、魚を美味しく食べる秘訣だね」
教えてくれた人
魚食研究家 西潟正人さん
魚をテーマに取材・執筆。各地で魚食普及に引っ張りだこのお魚用心棒。最新刊は『京浜急行沿線 とびきりの魚屋&酒の肴』(フォト・パブリッシング)。
「ちょっといい魚」は市場で買おう!
「キャンプのメインディッシュを作るなら、ぜひ市場で魚を買ってイチから調理してみて。海辺の街なら一般向けの朝市が立つし、水揚げされた魚がすぐに並ぶ鮮魚店もある。各地域の卸売市場には一般客を受け入れているところもある。発泡スチロールの箱に大量の氷と3%程度の塩水を入れた水氷(潮氷とも)を用意しておき、買った魚をすぐに浸けよう」(西潟さん)
発泡で十分。というか、発泡がいい!
青魚はヒスタミンと寄生虫の中毒に注意!
サバなどはヒスタミン中毒を引き起こしやすくアニサキスなども多い。
生食するならUVライトで照らして寄生虫を光らせて取り除くか、冷凍処理済みを入手したい。
鮮魚を買うならここに注目!!
目の透明感
透明感があって張りのあるものが○。目が濁っていたり血が滲んでいないものを選ぶ。
小顔かどうか
小顔で肩まわりにかけてぐっと肥大し、尾にかけてスッとすぼまるものが総じて良品。
エラの鮮やかさ
鮮度が良い魚はエラが鮮紅色。鮮度が落ちるに従い、灰色っぽくくすんでいく。
体の状態
死後硬直が解けておらず、身にパンッとした張りがあるもの、体表の模様が鮮やかでくっきりしているものが良い。
おしりがきれいか
鮮度が落ちると排泄口が破れたり、内容物がしみ出したりする。排泄口の周囲がきれいなものを。
【下処理の基本】血とぬめりを取る!
❶鱗をはがす
体表の鱗を鱗取りで剝がす。「ヒレの周辺や顔まわりは残りやすい。細部こそ丁寧に」。
❷エラの付け根を切る
左右のエラ蓋が合わさるあたりに包丁を入れて、エラの下側の付け根を切り落とす。
❸腹を肛門まで開く
エラから肛門まで開く。腹鰭を両断せずに腹鰭周辺の骨を避けて開くのが西潟流。
❹膜を切り血合いを露出
エラの上側の基部を切り落とし、背骨の直下にある白い膜ごと血合いを切り開く。
❺内臓を取り腹を洗う
エラと内臓を除去して洗う。「洗う回数は極力少なく。しかし洗うときは念入りに」。
❻水けを取る
「粘液と血はにおいの元。残さず拭こう」。腹に吸水紙を挟み、滲み出た水分を吸わせる。
さばいた魚は袋に包んで冷蔵する
「処理が済んだら水けは禁物。水を抜いた氷の上に新聞紙やビニールを敷き、袋やラップで包んだ魚を置く。身に直接氷が触れないように注意。コンビニの氷ではセブン-イレブンのものが溶けにくい」
【三枚おろしの方法】キャンプ地で手間要らず!
❶頭とカマを切り取る
後頭部に刃を入れ、胸鰭と腹鰭を頭側に残して切る。「大きく取ってカマは焼こう」。
❷背鰭に沿って切り開く
頭側から背鰭の際に刃を入れ、尾まで皮を開く。中骨に沿って背骨まで刃を入れる。
❸しり鰭に沿って切り開く
魚を180度回転させ、しり鰭に沿って皮を開く。続けて中骨に沿って背骨まで開く。
❹腹骨を断って身を取る
腹骨に刃先が当たったら、身を引き起こして腹骨の根元を切る。これで片身が取れる。
❺腹骨をはずす
身に残った腹骨をすき取る。骨だけでなく、内臓と身を隔てる膜も残さずに取り去る。
❻血合い骨を取る
三枚に分かれたが半身には血合い骨が残っている。血合い骨の両側を切って骨を除く。
【極薄皮引き】しなる包丁で
❶身の端を一片切って皮を出し、布巾で皮をつまんで身と皮の間に刃を入れる。
❷皮を引きつけながら包丁を押し出して身と皮を分ける。「刃が長くて、力をかけるとしなる包丁が皮を引きやすいね」。
【洗わず三枚】秘技!アジの身だけ取る
❶未処理のアジの頭を落とす。
❷背鰭側から刃を入れ、背骨に到達したら腹骨を切らないように注意しつつ身を切り分ける。
❸内蔵を腹骨に包んだまま三枚にできた。
❹身の端から指を入れゼイゴごと皮を剥く。
吸水紙とラップで包んで冷蔵する
「さばいた魚は空気に触れる面から劣化するから、皮は調理の直前までつけておいたほうが身が傷みにくいね。背身や腹身に分けたら、吸水紙、ラップの順で包んで、たっぷりの氷で保冷する」
道具が魚を旨くする! いつかそろえたい七つ道具
「骨抜き、鱗取り、小出刃は必須。次に柳刃包丁、その次に大ぶりな出刃を買い足す。刺身をよく造る人は盛箸もあるといいけど、キャンプならBBQの串で代用してもいい。木の箸より断然きれいに盛れるよ」
良い吸水紙で効率UP!
解体と保存で活躍する吸水紙。キッチンペーパーでも良いが、専用品は吸水力が高く、不織布タイプは身を包んだときに繊維が貼り付かない。
※構成/藤原祥弘 撮影/高橋郁子
(BE-PAL 2024年11月号より)