縄文時代の人気食材を、現代風にアレンジしてクッキングに挑戦!
でんぷんだけを取り出せば美味しく食べられるのだ
教えてくれた人:ドングリおじさん 藤原祥弘(上の写真左)
ドングリ拾って40年。ドングリかじって30年。ドングリでんぷんで暮らすことを夢見る野外生活技術研究家。
教わった人:ドングリねえさん 編集 マチダ(上の写真右)
巨悪を追う週刊誌とファッションの先端を行く女性誌を経て、なぜかビーパル配属に。30年ぶりにドングリに再会。
片栗粉に近いドングリのでんぷんは料理に使える
マ:(ボリボリボリ……)炒ったドングリが食べられるなんて知らなかった!日本酒飲みながらつまみたい味だわ〜。
藤:それはドングリ界でも特に美味しいスダジイの実。ギンナンとクリの間の感じですよね。それでは、こっちもどうぞ。
マ:ウヘっ!渋っ!口のなかがしょぼしょぼする〜。
藤:それはコナラ。含まれているタンニンが多いから渋い。コナラやシラカシは炒っただけでは食べられません。
マ:ネズミは生で食べるのに…。
藤:ところがネズミも平気なわけじゃなくて、耐えながら食べているそう。たまにタンニンに負けて死ぬ個体もいるとか。
マ:命懸けでドングリ食べてる!
藤:しかし我々には知恵がある。タンニンの多い種でも、中身を水にさらしてでんぷんだけを取り出せば美味しく食べられます。精製したのがこちら!
マ:へ〜。これがドングリのでんぷんなんだ。なんだか片栗粉に似てますね。
藤:そうなんですよ。いろんな植物からでんぷんが採れるけど、ドングリのでんぷんはコーンスターチやタピオカでんぷんより片栗粉に近いんです。
マ:……ということは?
藤:片栗粉代わりに料理に使えるわけです。それではこれで、麺とお菓子をつくりましょう!
舌で感じた、ご近所ドングリ図鑑
「大人になっても夢中になるね!」食べられると知って、採集に勢いが出る食いしん坊マチダ。
スダジイ(上の写真、右から2個目)は…「旨!」
本州、四国、九州、沖縄に分布。関東以南の海沿いに多く、幹周りが10mを超える巨木になることも。常緑樹。
マテバシイ(同・下)は…「可」
原産地は九州南部から沖縄と考えられているが、現在は関東以南に広く植えられている。日本固有種の常緑樹。
クヌギ(同・左端)は…「渋!」
本州、四国、九州に分布。薪炭に利用され低山に多い。樹液をよく出し、虫を養う。落葉する。
シラカシ(右端)は…「渋!」
本州、四国、九州に分布。関東では防風林として家の周囲や神社の境内に植えられる。常緑樹。
コナラ(左から2番目)は…「渋!」
北海道、本州、四国、九州に分布。雑木林を代表する木のひとつだが、全国的にナラ枯れ病が進行中。落葉する。
採るぜ! ドングリでんぷん
堅果類の皮を割る道具「栃へし」を使って梃子の力でドングリを割る。
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鬼皮を除去し(渋皮はそのままでもOK)水と一緒にミキサーにかける。
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ペースト状になったらサラシに包み、水をはったボウルのなかで揉む。
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乳白色の液を沈殿させて、上澄み液を捨てて水を換える。何度か繰り返す。
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ボウルの底に残ったでんぷんを乾かして割り、白色部だけを採取する。
ドングリころころ……どんぐり粉でつくるドングリ冷麺
ドングリでんぷんと強力粉を1:1の比で合わせ、ふるいにかけて混ぜる。ふるった粉に少しずつ水を加え混ぜ合わせていく。
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粉がそぼろ状になったら強く握ってみる。ぎりぎり塊を保つ水分量なら水加減は十分。手で押して練り合わせ、2時間寝かす。
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寝かせたタネを薄く延ばし、製麺機にかけて麺にする。機械がなければまな板、麺棒、包丁でなんとかしよう!
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5分ほど茹でて麺に透明感が出たら冷水でしめて麺が完成! 別に用意したスープや具材と組み合わせる。
シンプルな秋の滋味! シイの実ごはん
クリごはんのシイの実バージョン。スダジイの実をフライパンで乾煎りして鬼皮を弾けさせ、中身を取り出して渋皮を剥く。米を火にかけ、沸騰したらシイの実を加えて炊き合わせる。好みで炊飯時に出汁や塩を加えてもGOOD。
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味を楽しむならこれ! ドングリもち
クズもちのドングリ版。ドングリでんぷんを4〜5倍の水に溶き、小鍋に注いでヘラでかき混ぜながら弱火で加熱する。液に粘りと透明感が出たら火から下ろして冷やす。固まったら好みの大きさに切り出し、きな粉と黒蜜をかける。
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Complete!
できた! ドングリ定食
担当ハラボーより
ドングリロケで肥ゆる秋なのです
“冷麺”のキラーワードに釣られ、ノコノコと撮影にお邪魔しました。調理中もスダジイを摘まむ手が止まらず、ポリポリポリポリ・・・・・・。そしてでき上がった冷麺は、コシがあって絶品!秋の味覚の代表格は実はドングリなのかも、とドングリを見る目が変わりました。
最後に……里山クイズ!
Q この帽子を持つドングリの名前は?
A
正解はコナラ。お椀型で表面はうろこ状の帽子(殻斗)を持つ。ドングリは長さ2㎝前後で、ミズナラよりも小さくほっそりとしている。
道端に落ちているドングリとその帽子のペアを探してみるのも、秋ならではの手軽な里山遊びだ。
※構成/藤原祥弘 撮影/矢島慎一
(BE-PAL 2024年12月号より)
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