ガソリン仕様で高い評価を得ていた積載性や使い勝手の良さ、そして基本フォルムを損なうことなく、EVならではの魅力をトッピングしています。
※記事中の写真はすべて、施設の使用許可を受けて撮影しています。
積めて寝られる人気軽バンが電気自動車になって登場!
「N-VAN e:」ってどんなクルマ?
「2040年までにEV・FCEV(燃料電池車)の販売比率をグローバルで100%にする」という目標を掲げるホンダにとって「N-VAN e:」は、EV戦略の先頭を走る重要な1台です。
開発のベースは、ホンダ特有の「センタータンクレイアウト」を採用し、低くフラットな床と広い荷室と、抜群の使い勝手を実現してアウトドア派にも指示される軽商用バンの「N-VAN」。EV化にあたり、これまでガソリンタンクがあったスペースに薄型駆動用バッテリーやIPU(インテリジェントパワーユニット)などを移植。実用性にはほとんど影響していません。
荷室の奥行き、左右幅、荷室高などはほぼ変わらず、最大積載量は300kg(エンジン仕様の4WDモデルと同じ)を実現。クロスカブ110も積載できるほどの広さは健在です。
グレードは4種類。ビジネスでの積載性を最優先に考えたシングルシーター仕様の「e:G」と、運転席の後ろに補助用のリアシートを備えた2人乗りタンデムシート仕様の「e:L2」、パーソナルユースには4名乗車可能なグレード「e:L4」と「e:FUN」があります。
「e:L4」はヘッドライトの形状が四角いハロゲンヘッドライト仕様(¥2,699,400)」で、「e:FUN」は丸型のLEDライトを備え、アウトドアシーンでより存在感を示せる仕様です(2,919,400円)。
EV化されても積み込むことにこだわった
EV化を果たしても、「センタータンクレイアウト」の効果は絶大です。大きな駆動用バッテリーやIPUなどを無理なく移植でき、荷室床面地上高(地面から床までの高さ)は15ミリほど高くなっていますが、実用的にはまったく気にならないレベルです。
さらに助手席側ドアと左側のスライドドアを開ければ、センターピラー(開口部の中央にある柱)のない大きな開口部が現れます。
大型のテールゲートの実用性の高さと、左側のこの大きな開口部、そして自由度の高い動線があれば、大きめのキャンプギアなどの積み下ろしに苦労することはありません。
そして運転席以外のシートには、背もたれを前に倒してシートを座面ごと床に収納できるダイブダウン機構が付いています。すべて収納すれば車中泊には最適といえるほどのフラットな床面の空間へと変身。
オートバイや自転車だけでなく、タープやテントのポール類や脚立といった長尺物も、スムーズに積載可能。“積む”に徹底した使い勝手は、やはりアウトドアには強力な武器になります。
簡素にしてツール感溢れる内装デザインがアウトドア気分を盛り上げる
基本的なフォルムも大きく変わったところはありません。外観でEVらしいといえばリサイクル素材の樹脂製フロントグリルに「普通」と「急速」の充電ポートを備えている点。なお、このグリルはホンダ車の廃棄バンパーをリサイクルして作られた素材です。
外観に対し、EV化によってインテリアは少し雰囲気が変わりました。操作パネルからシフトセレクトレバーがなくなり、シビックなどに採用されている「エレクトリックギアセレクター」に変更。全体としてすっきりした印象です。
特徴的なのはコンテナから発想を得たという「縦型のビードデザイン」の樹脂パネルが、強烈に自己主張している点です。簡素で実用に徹したワイルドな内張りのデザインと素材感は荷室の壁へと連続し、車内全体がまさにコンテナの中にいるような独特な雰囲気に包まれます。
同時に縦溝デザインと素材は、荷物の積み下ろしによるキズを防いだり、目立たなくする効果もあります。まさに「徹底して使い倒してくれ」と主張するかのような作り込みによって独特のツール感を醸し出し、アウトドア気分を盛り上げてくれます。
専用のカーナビアプリで電欠の不安を解消
運転席はアイポイントも高く、スクエアなボディのお陰もあり、見晴らし良好。シフトセレクターのDボタンを押し、足踏み式のサイドブレーキを解除してスタートすると、最高出力47kW(64PS)のモーターは低速からの力強い加速感で、スムーズに加速します。
ただし、モーター自体は静かでも商用バンならでは走行音や風切り音はそれなりに感じます。このあたりは乗用車として仕上げられたEVの静粛性には適いません。それでも早朝のキャンプ場や住宅街などでエンジン音を気にせず走れるのはうれしいポイントです。
また、重い駆動用バッテリーを積むことで車両重量は170kgほど増加していますが、むしろそれが低重心となり、コーナリングでの安定感が向上。左右の揺れ、加・減速時の前後の揺れ、回生ブレーキングでの前のめり感、そして飛び跳ね感などは少なくなって乗り心地は、しっとりとしています。
一方で気になるのは245km(WLTCモード)という一充電あたりの走行距離です。実走行距離をカタログ値の80%とすれば、196km。搭載した29.6kWhのバッテリーは50kWの急速充電施設で、充電残量警告灯が点灯してから充電量80%まで約30分かかります(気温など諸条件により差があります)。
ホンダではそうした不安に応えるため2024年の冬からEV専用のカーナビアプリ『EVカーナビ by NAVITIME』との機能連携を実施予定です。これはEVの車種ごとの航続距離予測を算出し、バッテリー残量の少なくなるポイント付近にある充電スタンドを自動で経由地に追加して、ルート検索を行う優れもの。これなら電欠などの不安も少し解消され、遠方のキャンプ施設を目指せそうです。
貯めた電気を取り出すだけでなく、外部電源を車内に引き込むこともできる
効率的な充電をおこなうことでN-VAN e:は“走るポタ電”として能力を存分に発揮できます。ホンダアクセスの純正アクセサリー、AC外部給電用の「パワーサプライコネクター(29,700円)」で車両の普通充電コンセントから最大出力1,500Wの電気を取り出し、車外で家電などが使えます。
車内で家電などを使う場合は「外部電源入力キット(37,400円)」が便利。キャンプ施設などの外部電源から車両に電力を取り込むことで、車内に装備されたAC100Vのコンセントから最大出力1,500Wの電気を取り出せます。夜間の車中泊などでホットプレートや電気ケトルなどの家電も使えます。
「オール電化アウトドア」も夢じゃない
このように、積載性に優れ、広いラゲッジを自在にアレンジできるN-VAN e:は、用途や目的に合わせてアウトドアギアを柔軟に積載できます。こうした自由度の高い実用性に対応するため、荷物をかけるフックや棚などの専用パーツも揃っています。
そして「走るポタ電」としての使い勝手を、より向上させる電化用アクセサリーも豊富。外遊びやキャンプでアクセサリーを活用して、ピュアEVならではの静かでクリーンな「オール電化アウトドア」を楽しんでみては?
【ホンダN-VAN e:(e:FUN/FF)】
- 全長×全幅×全高=3,395×1,475×1,960mm
- ホイールベース:2,520mm
- 最小回転半径:4.6m
- 最低地上高:165mm
- 車両重量:1,140kg
- 駆動方式:前輪駆動
- モーター:交流同期電動機
- 最高出力:47kW(64PS)
- 最大トルク:162N・m
- 一充電走行距離:245km(WLTCモード)
- 車両本体価格:¥2,919,400~(税込み)
問い合わせ先
ホンダ
TEL:0120-112010