約250万年の彼方にあるアンドロメダ座大銀河(M33)。
空気が澄んで、星を見るにはいい季節です。キャンプ場などいつもより暗い場所へ行ったとき、ぜひ探してほしいのが、アンドロメダ座にあるアンドロメダ座大銀河と、さんかく座の銀河です。肉眼で見える銀河です。
星雲から銀河へ。宇宙が一気に広がった
アンドロメダ座は星座そのものより銀河のほうで知られているでしょう。星座のほうも、1等星こそありませんが、3つの2等星をもち、ペガスス座とカシオペヤ座に挟まれているので、案外、見つけやすいと思います。
アンドロメダ座大銀河は、M31というカタログ番号で記されることもあります。Mは、18世紀の天文学者シャルル・メシエの頭文字。メシエは彗星探しに力を注ぎ、彗星と見間違えそうな星雲や星団を観測して記録しました。それがのちにメシエ・カタログと呼ばれる星雲・星団カタログとなり、現在でも重宝されています。M31 はメシエが31番目に記録した天体でした。
星雲や星団というと、有名なのは、すばるの和名でおなじみのプレアデス星団(M45)やオリオン座大星雲(M42)、かに星雲(M1)などでしょうか。地球からの距離は、すばるは約400光年、オリオン座大星雲は約1500光年、かに星雲は約7200光年です。みな、天の川銀河の中に存在します。
アンドロメダ座大銀河もメシエが発見した当時は、「星雲」と呼ばれていました。これが銀河だとわかったのは、20世紀に入ってからです。アメリカの天文学者エドウィン・ハッブルが、巨大な望遠鏡で観察を続け、「アンドロメダ星雲」が天の川銀河の外側にある証拠をつかみました。90万光年の彼方にあると推測されたのです。
天の川銀河の直径は10万光年です。それよりはるかに遠くにあるアンドロメダ星雲はもはや星雲でなく、天の川銀河の外側にあり、天の川銀河と同じように無数の星からなる銀河であることがわかったのです。
人間にとって天の川銀河がすべてだった宇宙が、一気にとてつもなく大きく広がりました。宇宙観を変える大発見でした。その後、アンドロメダ座大銀河までの距離は200万光年以上だと判明しています。正確な距離については様々な説がありますが、現在では約250万光年だとされることが多いです。
アンドロメダ座に双眼鏡を向けてみよう
ちょっと暗い場所に行けば、アンドロメダ座大銀河は肉眼で観察できます。双眼鏡を向ければ確実です。
探し方はそれほど難しくありません。宵のうちに南の空高くを見上げると、大きな四辺形が見つかります。ペガスス座の四辺形です。その一角の2等星アルフェラッツは、実はペガスス座ではなくアンドロメダ座の星です。
アルフェラッツが見つかったら、東の方に向かって2つの2等星が並んでいるのが見えるでしょう。ミラクとアルマクです。ミラクが見つかったら、そのすぐ北にある4等星(アンドロメダ座μ星)を探します。ミラクからμ星に伸ばした線を倍の長さに延長した位置に、アンドロメダ座大銀河があります。
理論上、肉眼で見えるいちばん遠い「さんかく座の銀河」
アンドロメダ座のすぐ南側に、「さんかく座」という三角形をした星座があります。とても小さく、明るい星も、有名なエピソードもないので、ほとんど知られていません。しかしここに、理論上、通常の視力で見えるもっとも遠い天体、さんかく座の銀河M33があります。
十分に暗い場所であれば、さんかく座は文字通り三角形なので、見つけるのはそれほど難しくはないでしょう。三角形のてっぺんの星と、アンドロメダ座のミラクを結んだ線上の、さんかく座寄りにM33はあります。または、ミラクを挟んでアンドロメダ座大銀河の反対側を探す方法もあります。
こちらも約250万光年と、アンドロメダ座大銀河と同じくらい遠くにあります。距離の推定にばらつきがあるのも同じですが、一般的にはさんかく座銀河の方が遠いとされることが多いです。暗い場所なら肉眼で見えるといっても、アンドロメダ座大銀河と比べると、かなりぼんやりして見つけるのに苦労すると思います。双眼鏡で見るのがおすすめです。
250万光年。天の川銀河のはるか向こう、想像を絶する距離から届く光をキャッチしてください。
構成/佐藤恵菜