【佐藤ジョアナ玲子のアマゾン旅 vol.14】一緒に舟で旅する人を探すも、出会う旅人は超個性派ばかり…どうする?
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    2024.12.07

    【佐藤ジョアナ玲子のアマゾン旅 vol.14】一緒に舟で旅する人を探すも、出会う旅人は超個性派ばかり…どうする?

    【佐藤ジョアナ玲子のアマゾン旅 vol.14】一緒に舟で旅する人を探すも、出会う旅人は超個性派ばかり…どうする?
    こんにちは!川下り大好きなジョアナです。「私の愛しいボロ舟ペケペケ号に乗って、一緒にアマゾン川を旅してくれる人はいないかなあ」。そう思ってペルーのイキトスで探し回ったら、個性派揃いの旅人たちと出会いました。そんななか、最終的に名乗りをあげてくれたのは、意外にもインドア派の旅人でした。これから待ち受けるワイルドなアマゾン旅を一緒に生き残れるのか、一体どうなる!?

    候補者その1:哲学する男

    イキトスの宿

    イキトスで泊ったLa Casa Del Frances(フランスの家)という宿。

    旅人が集まる場所へ行けば、きっと川下りに興味を持ってくれる人がいるはず。旅の新たな相棒探しの拠点として私が宿泊したのは、ペルーのイキトスにあるLa Casa Del Frances(フランスの家)というホステルでした。かれこれ何年も自転車で南米を旅している友人に勧められた宿で、聞くところによるとイキトスでお値段は最安値級。お金はないけど、時間と体力はある。そういう人が行く宿なのです。

    早速、宿泊している人たちに声をかけていきます。アマゾン川の下流地域、コロンビア、ブラジル方面を目指している人は是非、我がペケペケ号へ!

    「ああ、それなら、あそこの自転車の人がコロンビアまで行く船を探してるってよ」

    荷物をたくさん積める旅自転車

    自転車旅の途中という宿泊客が乗っていた、荷物をたくさん積める旅人用の自転車。

    いやいや、この自転車デカすぎ!こんな荷台が付いている自転車、初めて見ました。残念ながら、ペケペケ号に載せるにはちょっと大きすぎるかな。

    ほかの宿泊客は、手作りアクセサリーを路上で売りながら旅をしている親子など。大学生のバックパッカーはおらず、全体的に年齢層が高めで、話しかけようにも旅の玄人独特のオーラにたじたじです…。

    カンボと呼ばれるカエルの毒を皮膚に垂らす施術をする人

    カンボと呼ばれるカエルの毒を皮膚に垂らす施術をするオレゴンさん。

    すると、新たな候補者が突然現われました。アメリカ・オレゴン州出身、オレゴンさん(仮名)です。出身地以外の背景はよくわからない男性ですが、彼はカンボの先生をしているそう。

    カンボとは、カエルの毒のこと。ペルーでは古くからカエルの毒を使った民間療法があるのです。カンボを腕などに一滴たらすと、体がカーッと熱くなる。その熱が、頭へ昇って、それからお腹に下りてくる。そして、嘔吐する。吐くと、体の毒素が排出されて、様々な不調が改善するのだとか。

    「毒っていうのは、病原菌のことだけじゃないんだよ。身の回りにある、いびつな繋がり、例えば、お酒とか、ギャンブルとか、そういうものを断ち切る手伝いもしてくれるんだ」

    オレゴンさんはそう言うけれど、本当かなあ。だって、私は飲み過ぎて吐いても、またしばらくするとお酒を飲んじゃうし。毒にまみれて生きていくのも、人間的な気がします。

    川に浮かぶペケペケ号

    川に浮ぶペケペケ号。イキトス滞在中は、宿から歩いて5分くらいのところで預かってもいました。

    そんな彼にペケペケ号の話を伝えると興味をもって、こんなことを聞いてくれました

    「How strong do you feel yourself in your heart? (自分自身の強さを、あなたは心の中でどれくらい感じている?)」

    アウトドアの世界の人で、強いなあ、カッコいいなあと尊敬してる人はたくさんいるけれど、私はただ、気の向くまま、川に流されるだけの旅人。強さも自信もないけれど、川の流れに乗っていれば、確実にどこか遠くへ運んでくれることだけは知っています。

    残念ながらこのあと、オレゴンさんはクレジットカードがATMに吸い込まれる事件が発生し、一緒に旅をすることはできませんでした。

    候補者その2:胸がドキドキ!情熱のイタリア人

    イタリア出身のサルディーニャさん

    左がサルディーニャさん。

    思い切って宿を変えてみたら、素敵な出会いがありました。

    「ペケペケ号の話を聞いてから、昨日の夜、寝れなくなってしまったんだ。もし自分で舟を操縦してアマゾン川を旅したら。そんな冒険を想像したら、胸がドキドキしてたまらないんだ」

    そう声をかけてくれたのは、イタリア・サルディーニャ島出身のサルディーニャさん(仮名)。彼はフェリーでアマゾン川を旅する外国人グループのひとり。お金で買えない経験ができる、特別な旅がしてみたいんだと語ってくれました。そうだよね、ドキドキするよね!乗っちゃいなよ!

    しかし一晩冷静に考えた結果、やっぱり家族を置いては死ねないと、もと来た団体と一緒に去ってしまいました…。

    候補者その3:アウトドア初めて男

    この先、一緒に旅をするTさん

    右にいるのが、一緒に旅をすることになったTさんです。

    3人目の候補者にして、ようやく同行者が決定しました。「ペケペケ号、良いじゃん、おもしろそうじゃん」と即断即決で仲間入りを宣言してくれたTさんです。

    実は彼、アウトドアの旅は今回が初めて。いえ、アウトドアが初めてのインドア派というのは、最初に話したときは知らなかったんです。だって、アマゾンへ来る旅人はアウトドア派ばかりだと私は思い込んでいたから。Tさんは、出身地アメリカのインフレがひどく、値上げの嵐に嫌気がさして、物価の安い南米旅を始めたのだそう。あちこち旅するうちに、気が付いたらアマゾン川、というワケらしいのです。

    スーツケースを持って現われたTさん

    出発当日の朝、スーツケースを持って現われたTさん。

    出発の朝、待ち合わせ場所に現われたTさんを見て、私はビックリ仰天!ス、スーツケースを持っている。しかも2つも。嘘でしょう!?

    そりゃあ、海外旅行をしているんだから、スーツケースを持っているのはあたり前だと読者の皆様は思うかもしれません。でも、私はずっと貧乏バックパッカー的な旅行ばかりしていたから、スーツケースで旅行をする人と交流するのは、かなり久しぶりだったのです。

    ペケペケ号の先頭でアマゾン川の風を満喫するTさん

    ペケペケ号の先頭でアマゾン川の風を満喫しているTさん。荷物入れに使っている大量のバケツが、このあと事件を引き起こします。

    新たに始まった二人旅。楽しんでもらえるといいなあ。今夜泊まるのは、インディアナ村の船着き場。そこで、早速プチ事件が起こりました。

    インディアナ村の船着き場

    インディアナ村の船着き場。林の向こうに村があります。

    地図で確認すると、お店が並んでいる村の中心部は砂浜のすぐ裏手にありました。Tさんが偵察に向かいますが、崩れやすい砂の斜面と木に阻まれて、村まで出ることができません。

    そんなはずはない。だって、ほかにもこの砂浜に泊めている舟があるんだから、どこかに村への抜け道が絶対あるはず。交代して、私も偵察に出かけました。

    インディアナ村の看板

    なんとか林を抜けて、村の中心部で看板を発見。インディアナというとアメリカの州のイメージですが、アマゾンにもインディアナがあるんです。

    「ほら、やっぱり。少し浜を遠回りして歩けば、村に繋がる道に出るよ」。意気揚々とグッドニュースを伝えに戻ると、うかない顔で浜に棒立ちになっているTさんの姿がありました。

    「じ、実は…。悪いお知らせがあるんだ…。」。な、何!?一体どうしたの?

    聞くと、スマホを落としてしまったらしい。まさか、川に?いえ、落としたのは食料品などを入れているバケツの中。それで、スマホをバケツの中から取り出そうとした拍子に、バケツごと川にドボンと落としたそう。食料の一部が川に流されてしまったけれど、幸いスマホは故障なく無傷。今夜はもうキャンプ飯は頑張らずに、屋台でご飯を買って済ませることに決めました。

    屋台で買ってきたフライドポテト

    屋台で買ってきたフライドポテトを食べながらラム酒で晩酌。

    アマゾン川流域の村で定番の屋台料理のひとつがフライドポテト。薄切りのソーセージなどをトッピングして、ソースをいっぱいかけて食べます。なにはともあれ、今日も美味しいご飯に辿り着いて一安心。もしかしてTさんって、おっちょこちょいなのかな。私もそそっかしい性格だから、これからはドジ二人のアマゾン旅ってこと?不安だなあ。

    私が書きました!
    建築学生
    佐藤ジョアナ玲子
    フォールディングカヤックで世界を旅する元剥製師。著書『ホームレス女子大生川を下る』(報知新聞社刊)で、第七回斎藤茂太賞を受賞。中日新聞の教育コラム「EYES」に連載。ニュージーランドとアメリカでの生活を経て、現在はハンガリーで廃材から建てた家に住みながら建築大学に通っている。

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