泊まれるダム!? 台湾最大のダム「曾文(ゾンウェン)水庫」の多彩な見どころをご紹介
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    2025.01.11

    泊まれるダム!? 台湾最大のダム「曾文(ゾンウェン)水庫」の多彩な見どころをご紹介

    泊まれるダム!? 台湾最大のダム「曾文(ゾンウェン)水庫」の多彩な見どころをご紹介
    台湾南部の嘉義県に、台湾最大のダムがあります。そのダムは「曾文(ゾンウェン)水庫」。週末は多くの観光客で賑わっています。
    多くの観光客の目的は「曾文水庫遊覧船ツアー」。遊覧船が1~2時間かけて曾文水庫内のさまざまなスポットを回遊し、豊富な知識とユーモアを併せ持つガイドが、船上で曾文水庫の魅力を説明してくれます。

    しかしここを訪れるのは観光客だけではありません。「宿泊客」もいるのです。ダムなのに宿泊客…?!一体どういうことなのか。その秘密に迫ります。

    (上掲写真/出典:交通部観光署西拉雅国家風景区管理処)

    「台湾最大のダム」曾文水庫、日本最大のダムを上回る大きさ

    「台湾最大のダム」というキャッチフレーズに惹かれ、息子と2人で曾文水庫を訪ねてみました。ダム湖近くにある展望台から見下ろすと、端が見えないぐらい大きな湖が広がっています。

    展望台兼レストラン。お土産も売ってます。(出典:交通部観光署西拉雅国家風景区管理処)

    どこまでも広がる湖。

    曾文水庫の総貯水容量は7億800万立方メートル。日本で総貯水容量が最大なのは岐阜県揖斐郡揖斐川町にある徳山ダムで、総貯水容量は約6億6,000万立方メートル。つまり曾文水庫は、日本にあるどのダムよりも大きいのです。このダム湖の豊富な水が、台湾の西南部に広がる嘉南平原の農作物を育てています。

    展望台は観光客でごった返していたので「さすが台湾最大のダム。観光客、多いですね~!」と口にしたところ、スタッフの方から「実は、観光客だけじゃないんです。宿泊客もいますよ。しかも3日とか4日とか連泊する人も!」との衝撃のコメントが。

    えっ…ダムに宿泊?しかも連泊?一体どういうことなの??と一気に疑問が噴出したところ、「遊覧船に乗ってくれれば、その答えがわかります」とのこと。

    …これは、(もともと乗るつもりだったけど)乗らない訳にはいきませんね…!?

    というわけでまずは遊覧船ツアーを楽しむことに。

    たっぷり2時間、曾文水庫遊覧ツアー

    私たちが参加したのは13:30からスタートする2時間のツアー。2時間かー、さすが台湾最大のダムは規模が違うなー!と感心しながら船に乗り込むことに。乗船料は平日300元(約1500円)、休日350元(約1750円)。13:30からのツアーなのですが、13:10頃には、乗り場に長い列ができていました。ツアーの人気ぶりが伺えます。

    ここから左端の船に乗ります。

    船はほぼ満員の40人近い乗客を乗せて、定刻通りに出発。

    途中、湖上にあり野生のイノシシが生息している「山猪(シャンジュー)島」に立ち寄ります。船の上からイノシシの餌投げタイムがスタート。総勢30匹はいるのではないか?!というイノシシが一斉に餌に群がります。すごい迫力。…迫力がありすぎてちょっと怖い。餌をもらえないあまり興奮し、どんどん船側に近寄ってくるイノシシも。15分ほどの餌投げタイムが終了し、船が島から離れると、イノシシたちは意外にもあっさりと島内の草むらの中に戻っていきました。暗黙のルールがあるようです。

    イノシシたちの群れ。(出典:曾文水庫旅游網)

    そのあと船はさらに15分ほど進み、到着したところは「釣り場」。正式名称は「大埔郷公所釣魚平台」といい、大埔の郷公所(日本では町役場に相当する公的機関)が管理しています。2007年にオープンした場所で、面積は900平米、耐荷重は15トン。同時に200人が上陸できます。

    湖上に浮かぶ釣り場。

    遊覧船がこの釣り場に停泊するのは、ここでしかできないアクティビティを楽しむため。湖上に浮かぶこの釣り場、釣り人が持ち帰らなかった魚を狙って、オオカンムリワシやトンビなどの猛禽類が集まる場所になっているんだとか。遊覧船ツアーのガイドさんからの簡単なレクチャーを受け、ここで30分程度、釣りと猛禽類鑑賞を楽しみます。遊覧船ツアーが2時間って長くない?と思っていたのですが、さきほどのイノシシ餌やりといい、こちらの釣りといい、さまざまなアクティビティがセットになっての2時間たっぷりコースだったんですね…!

    大人数でも楽しめます。(出典:曾文水庫旅游網)

    長時間ツアーの謎が解けたところで我々も釣りにチャレンジ。
    約40人の乗船客は、ガイドさんに指定されたエリアに一列に並び、思い思いに釣りを楽しんでいます。隣の熟年ご夫婦は「ダム湖の周遊を楽しむのであれば他のダムでもできる。でもダム湖のど真ん中での釣りと野鳥の鑑賞は、他のダムではできないでしょ。これがやりたくてここまで来たんだよ!」と気合十分。

    自然ゆたかなダム湖の豊富な栄養分のおかげか魚の数も多いようで、30分ほどの間に、3匹の魚が釣り針にかかりました。隣の熟年ご夫婦は1回のキャスティングで3匹も捕まえています。さすが、これがやりたくてわざわざ来られただけのことはある…!

    異国での釣り体験にチャレンジ。

    釣れました!

    30分ほどの釣りタイムが終わると、ガイドさんの合図で、バケツに入れてあった魚たちを順々にダム湖に投げ入れます。すると、弧を描いて上空を飛んでいたオオカンムリワシやトンビが一斉に水面近くまで急降下。同じ種同士で牽制しあったり魚を奪い合ったり、水面近くで繰り広げられる猛禽類のバトルはなかなかの大迫力。トンビ同士が争っている中、小型の鳥がひょいっと魚を横取りする場面が見られるなど、野鳥たちの生存戦略を目の当たりにすることができました。

    猛禽類たちの仁義なき戦い。(出典:曾文水庫旅游網)

    30分ほど猛禽類の鑑賞を楽しんだ後、船はゆっくりと釣り場を離れます。その頃になると、小腹が満たされた猛禽類の群れも水面を離れ、ゆっくりと旋回しながら上昇気流に乗って高く上がっていきます。「タカ柱」という現象ですね。

    空高く舞い上がる。

    「釣り場」行き専用の埠頭も

    遊覧船での釣り体験ではなく、釣りをとことん楽しみたい人のために、釣り場行き専用の船も出ています。曾文水庫内の「大埔」という埠頭から出発。湖上にある釣り場までは、船で10分~25分。その時々のダム湖の水位によって所要時間が変動するというのも冒険心がそそられます。

    船は、8時から20時までの間で1日5往復。3時間おきに出ています。

    24時間有効のチケットを購入し、いざ乗船。15分ほどで釣り場に到着です。釣り場には、釣りスペースとは別にテントサイトも設けられています。このテントサイトの利用者が「観光客以外」の属性の人たち…つまり「宿泊者」ですね。釣り場内はトイレ完備で、火の使用もできます。

    釣り場滞在チケットは24時間有効ですが、24時間以内であればどの船に乗って帰ってもOK。このため朝8時の船で釣り場に来て、11時~17時の船で帰るという日帰り組が多いそうですが、中には「連泊する」という猛者も…。最初から複数枚のチケットを購入しておけば、24時間×購入枚数の滞在が可能であるため、「奥さんと喧嘩したら釣り場で数日間過ごし、ほとぼりが冷めたころを狙って家に帰る」という常連客がいるそう。「籠城」ならぬ「籠(釣り)場」。夫婦喧嘩の末にダム湖まで来て、「今回は3日分買っておこう」と腹を括って釣り場を住処に決め込む中年男性。なんだか愛すべき存在です。釣り場は猛禽類の生態系保護に役立っているだけではなく、夫婦間の関係性維持にも役立っている貴重な場だったのですね。

    ちなみに釣り場が最もにぎわうのは中秋の名月の日とのこと。秋の日、美しい満月が湖面に映る中、大切な人たちと湖上の釣り場で飲み食いしながらひとときを過ごす…なんとも趣のある過ごし方ではないですか。湖上の「常連客」のみなさまも、このときばかりは是非ご家族で来ていただきたいものです。

    曾文水庫は、「西拉雅(シラヤ)国家風景区」という国立公園エリアにあります。「国家風景区」は台湾全土で13か所が指定されており、西拉雅(シラヤ)国家風景区はその中で最も新しい13番目の国家風景区として、今注目のエリアでもあります。

    二寮という景勝地。西拉雅(シラヤ)国家風景区にはこんなに幻想的な場所も。(出典:交通部観光署西拉雅国家風景区管理処)

    交通アクセスは?

    曾文水庫へは、台湾高速鉄道台南駅から台湾鉄道とバスまたはタクシーで1時間30分ほど。台湾最大のダム湖に浮かぶ釣り場で、野趣あふれる体験を楽しみたい方はぜひ。

    私が書きました!
    台湾在住ライター
    市川美奈子

    静岡県出身。一児の母。民間企業、国際協力団体(北京駐在)などを経て、2013年から行政機関で勤務。20234月から台湾駐在。夫を日本に残し、「ワーママ駐在員」として小学生の息子と共に台湾で暮らしている。帰国時は主に静岡県内でキャンプ・グランピングを楽しんでいる。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員

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