その名の通り、真っ白な砂が広大な地域に広がっています。と言うより、白い砂以外に見るものがない、とても珍しい国立公園です。あまりにも即物的な命名もどうかと思いますが、ここだけはそれ以外の言葉では表現できません。
その代わり、白いと言っても並みの白さではありません。これってホントに砂? 塩か雪じゃないの? と問いたくなるレベルの白さです。私はこれまでにも砂丘とか砂漠の名がついた土地をいくつも訪れてきましたが、砂が砂に見えなかったことは初めてでした。
「ホワイトサンズ」への道
ホワイトサンズに行くのは困難と言うほどではありませんが、それほど簡単なことでもありません。最寄りの空港はアルバカーキ。ロサンゼルスから直行便で2時間弱です。ホワイトサンズは空港からさらに300km以上離れています。国立公園の周辺には鉄道の駅もバス停もありません。空港でレンタカーを借り、大平原のなかをひたすら車を走らせることになります。
なにしろ、ニューメキシコ州は日本のおよそ80%の面積を持ちながら、約200万人しか住んでいない州なのです。人口密度で比較すると、50倍くらいの違いがあります。映画『オッペンハイマー』を見た人は人類最初の核実験が行われた、あの大平原を思い出してください。
走れども、走れども、地平線の向こうまで道路は続くようですし、すれ違う車もめったにありません。上に飛鳥なく、下に走獣なし、とは大げさですが、そんな気分にさせてくれるドライブが3時間くらい続いた後、国道54号線をアラモゴードという小さな町で国道70号線に分岐してしばらくすると、ホワイトサンズは道の右側に唐突と言ってよいほどのあっけなさで現れます。
まるで白銀の世界(だけど雪じゃない)
国道から入ってすぐに観光案内所とギフトショップがあります。私が訪問した2024年12月時点では、公園への入場料は自動車1台につき25ドル(約4000円)でした。
公園の面積は約583平方kmあって、東京23区全体(約627平方km)より少し小さいだけです。もっとも、訪問客が立ち入ることができるのは、その広大な地域のほんの一部に過ぎません。Dunes Driveという名の片道約13kmの道路が南北に走っています。
道路の両側は真っ白な砂丘です。あまりに白すぎて、まるでスキー場のなかを走っているようです。その砂は石膏の結晶からできているから白いのだということですが、それがなぜこれほどの広さになるのか、なぜ平原のなかに突然できるのか、私には見当もつきません。
雪遊びのような砂遊び
公園内には所々にピクニックエリアが設けられています。この地域の天候は年間300日以上が快晴だということで、テーブルには強烈な日光から身を守るための屋根とBBQコンロまでついています。
いくつかのトレイルが定められていて、案内板に従って砂丘を歩くことができます。短いもので1.6km、もっとも長いものでも8kmなので、気軽にハイキングを楽しめます。私も歩いてみました。周囲の景色を眺めていると、まるでクロスカントリースキーをしているような気分です。
トレイルの難易度はさほど高くありませんが、直射日光を遮るものは何もありませんので、安全のためにサングラスと飲料水は必携です。日焼けを気にする人はさらにスキンケアが必要になるかもしれません。
砂丘の傾斜を活かして、スキー場でよく見かけるプラスチック製のソリを使った遊びも人気のようです。大勢の子どもたちがキャッキャと大騒ぎしながら斜面を滑っているところを見かけました。もちろん雪ではなく砂まみれになるのでしょうが、とても楽しそうでした。もう少しだけ若ければ、私も仲間に入れてほしかったくらいです。ソリは入口の観光案内所でレンタルもしていました。
ホワイトサンズ訪問に際しての注意
ところで、ホワイトサンズ国立公園は米軍のミサイル基地と隣接しています。上空で軍のテストが行われることもしばしばで、そのようなときは公園への出入りは禁止されます。訪問の際には直前に下の公式ウェブサイトでスケジュールを確認することをお勧めします。
そこまでして行く価値はあるのか? 私はあると思います。 アメリカにある砂丘と言えばデスバレーの方がはるかに有名ですが、そこの砂丘とホワイトサンズのそれを見比べてください。
文中で真っ白な砂だと何度も何度も繰り返しましたが、それが比喩でも誇張でもないことが分かっていただけるでしょうか。
米国国立公園公式ウェブサイト内ホワイトサンズ観光案内ページ:
https://www.nps.gov/whsa/index.htm