FILE.116は、中野区の塔の山です。
第116座目「塔の山」
今回の登山口は、JR東中野駅です
前回に続き、今回も中野区の山行です。目的地の塔の山は、実は駅チカだったりします。その分、書くことがあまりないかもしれないと不安を感じつつ、前回と同じJR東中野駅西口登山口(=最寄り駅)から出発します。
塔と神社を横目に塔の山へ
駅を出て山手通りを歩いていくのですが、すぐに2つの大きな塔が山手通りの真ん中に見えてきました。歩道から眺めるとかなりの存在感です。
不思議に思って調べてみました。早速、塔の名前が「首都高中央環状線山手トンネル換気塔」であると判明。高さが45mもあるそうです。それなりの距離からでも広角レンズでなければ全体を捉えられないほどの大きさです。
この塔の役目は、その名の通り、首都高のトンネルの換気です。トンネル内で発生した排気ガスの放出を目的に、低濃度脱硝設備が導入されています。低濃度、常温、大風量のトンネル内空気を対象とし、狭い換気所スペースに対応した設備です。高い塔から換気すること、低濃度脱硝設備を設置することにより、換気塔周辺の環境負荷の低減に努めているんだそうです。
ちなみにこの塔、2008年グッドデザイン賞を受賞しています。確かに(というのも変ですが)、2つの塔が周辺の景観にマッチしていて特に違和感はありません。
その首都高中央環状線山手トンネル換気塔を横目に見ながら新宿方面に進んでいくと、気になるお店がありました。店名は「リズ」。ふと見ると、看板に「映画監督小林悟ゆかりの店」と書いてあります。残念ながらあまり映画に詳しくないので、小林悟さんと聞いてもピンときません。気になってGoogle先生に聞いてみると、ピンク映画の巨匠のようです。
もともと、このお店は新東宝の看板女優だった光岡早苗さんが、女優業のかたわらバー「リズ」を開業したのが始まりだそうです。その後、小林悟監督がお店を継承し、監督がお亡くなりになった後はご家族が引き継いでいるそうです。
おでんをメインに、カラオケスナックの面影を残しつつな居酒屋さんだとか。先代店主である小林悟監督の月命日の毎月15日に、店からのレクイエムとして、「リズの会」を催しているそうです。ますます寒さが増す季節ですし、ちょっと寄ってみたくなりました。
そのまま、山手通りをさらに進んでいくと、中野氷川神社がありました。
中野氷川神社
1030(長元3)年に源頼信が平忠常(たいらのただつね)討伐の際に武蔵国一宮・大宮氷川神社より勧請して祠(ほこら)を建立。1477(文明9)年には、太田道灌(おおたどうかん)が豊島泰経(としまやすつね)・泰明(やすあき)兄弟討伐の際に戦勝の祈願し、勝利後に凱旋し後に社殿を建てたそうです。
明治から戦前まで、この辺りは旧日本軍の高級将校たちが多く住んでいたそうで「軍人町」と呼ばれていたとか。石柱に刻まれた神社の名称の文字は本庄繁(ほんじょうしげる)陸軍大将によるものだそうです。
気になってキョロキョロして見てみると、意外に色々とあるものですね。さらに進むと、目当ての塔の山に関わる情報を発見しました。
山手通り沿いに進むと、区立塔山小学校の手前に桃園川緑道があります。気になって寄り道すると、小学校の正門付近に中野塔の碑がありました。碑には、中野三重塔と江戸名所図会とだけ書いてあります。もしや、ここが塔の山なのでしょうか。でも、まだ坂の序盤なので再び山手通りに戻り、さらに坂を登っていきます。
さらに中野東中学校まで坂を上がると、路地を入った所に、「石棒さま」という石碑が祀られていました。話によると、空襲によって破壊され、焼けただれた笠付の庚申塔なんだそうです。戦後まもなく、地元の人々が崩れ落ちた石片を集めてセメントで固め、改めて祀ったそうです。セメントで固めたその姿が石の棒のようになったことから、石棒さまと呼ばれるようになったそうです。
目的の山は突然に…!?
石棒さまを過ぎ、中野東中学校の敷地の角に来ると、今度は柵に囲まれた不自然な一帯がありました。
その柵に囲まれた敷地内に、石碑と案内板が見えます。案内板では「宝仙寺三重塔跡」と題し、以下の内容が説明されていました。
・ここから100mほど離れた場所に、中野村の飯塚惣兵衛夫妻が施主となり、寛永13年(1636年)に三重塔を建立。
・その塔は昭和20年の空襲で惜しくも焼失。
・その塔にちなみ、周辺の旧地名が塔山(とうのやま)だった。
東中野駅からここまでの道のりで、「塔の山」や「塔山」という名前の建物や学校をいくつも見かけました。すぐ近くには丸の内線の中野坂上駅もあります。今ではほぼ面影はありませんが、その昔、この一帯は山だったのかもしれません。
三重塔の存在、そして旧町名が塔山であることが記された案内板があるのは、中学校の敷地の一角。普通に歩いていたら、そのまま通り過ぎてもおかしくないような場所です。でも、あくまでも山行として街を歩くことで、山の痕跡(らしきもの)に目を留めることができました。
やはり、興味を持ってセンサーを敏感にすると、日常風景が違って見えたり意外な発見があったりすることもあるんですね。今回も、なかなか興味深い山行でした。
次回は、新宿区の中井御霊神社です。