WIND from ONTARIO~森の海、水の島~
#8 雪のフクロウを探して――
by Tomoki Onishi
撮影・文/尾西知樹
トロント在住のフォトグラファー、マルチメディア・クリエイター、カヌーイストでサウナー。オンタリオ・ハイランド観光局、Ontario Outdoor Adventuresのクリエイティブ・ディレクターを務める。カナダの大自然の中での体験とクリエイティブを融合させたユニット magichours.caを主宰。
遠く一本の細い電柱の上に、なにやら白い物体が付いている。電柱の上にこんもりと積もっている雪のように見えるのは、英語でSnow Owlと呼ばれる、『ハリー・ポッター』のヘドウィグで世界的に有名になった真っ白なフクロウだ。
後ろを向いているフクロウに気づかれないように息を殺して、そーっと近づく。足元は雪なので、音は吸収されて静かだ。近づいていくと、急にクルッと体勢をまったく変えずに、頭だけ回って発見された!
フクロウは、頭を左右に270度回すことができるので、まるで予測不能な灯台の明かりだ。彼らのサーチの網にかからずに、開けた荒野で近づくことは不可能だ。
電柱の上からフクロウが、「それより、こちらに近づくなっ!!」と警告の鳴き声を発する。天空からの小さな使者が何かの啓示を与えてくれているかのようだ。
脳内では、「北風小僧の〜♬」と懐かしい歌のヘビーローテーションが始まっていた……。
白フクロウは、厳冬期、アラスカやカナダの極北の地から越冬のために、ここ南オンタリオに飛来する猛禽類だ。電柱や農地の柵の上など、高く周りを見渡せる場所にとまって、頭をクルクルと回転させ、ネズミや小動物等の獲物をサーチしている。
オスの成鳥は真っ白で、雪の化身のよう。一方のメスや若鳥には、茶色の斑点模様が入っている。獲物に気づかれないように気配を殺し、冬の景色に同化しているので、探しにくい。雪景色の中で見つけると、じっと寒さに耐える姿に心を打たれる。
氷に閉ざされた湖の真ん中で、風雪の中に佇む姿を見つけたこともあるし、車でハイウェイを走っているとき道標や電柱の上にとまっているのを目にすることもある。その度に冬の使者に出会った気がして、嬉しくなる。
オンタリオ湖畔の雪原で、発見! 雪景色と同化していて、まさに雪のフクロウだ。
農場の柵の上など、冬季の荒涼とした農地は、見通しがよく獲物を発見しやすい。
細長い電柱の上に白フクロウ。この時季は農家の軒先など人の気配のする場所にもいる。
動画でも見られます!
(BE-PAL 2025年2月号より)