
廃校となった富岡小学校を活用したグランピング施設「ETOWA KISARAZU(エトワ木更津)」。
近年、全国各地で続々とオープンしている「グランピング」。手軽にアウトドア体験ができるためキャンプ好き以外にも人気で、グランピング施設周辺の地域活性化にも繋がっています。
2022年に誕生した、千葉県の「ETOWA KISARAZU(エトワ木更津)」もその一つ。遊休の公共施設を活かしたグランピング施設で、地域の人と繋がり、地域の魅力を発信する新たなスポットとなっています。
「地域の魅力をお借りしています」と話すのは、エトワ木更津を運営するコスモスイニシアの髙野隼平さん。どのようにして地域活性化に取り組んでいるのか、その背景や具体的な取り組みをお伺いしました。
千葉県木更津市と協力した公民連携事業が「エトワ木更津」に

株式会社コスモスイニシア R&D部門 R&D戦略部 新規事業推進一課 髙野隼平さん。
大和ハウスグループのコスモスイニシアが運営する「エトワ」は、国や地方自治体が所有する公共施設などを活用したアウトドアリゾート。2020年に1施設目のETOWA KASAMA(エトワ笠間)が誕生し、エトワ木更津は2施設目となります。
「エトワ」が誕生したのは、遊休化した公共施設の問題が背景にあります。使われなくなった公共施設はそのままにしてしまうと、老朽化や町の魅力の低下など新たな問題に。
地域の公共施設を有効的に活用することを目的に、エトワ笠間は茨城県笠間市と、エトワ木更津は千葉県木更津市と協力した公民連携事業として進行しています。

開放的な元校庭に設置されたドッグランと客室。
「エトワは不動産事業を営む弊社がSDGsの観点で、何かできないかというところからプロジェクトがはじまりました。
エトワ笠間は地域に愛されていたものの運営面でテコ入れしたいと考えていた『あたご天狗の森スカイロッジ』を、そしてエトワ木更津は児童数減少により廃校となった『富岡小学校』を活用しています。
自然豊かな地域だったこと、そしてスクラップアンドビルドは環境への負荷が大きいことなども踏まえ、既存の公共施設を活かしたアウトドアリゾートを展開することとなりました」(髙野さん)

エトワ木更津内の「会と話 by THE COFFEE」。土日祝は宿泊者以外も利用可能。
全国には多種多様なグランピング施設がある中で、エトワが大切にしているのは「地域の魅力を発信すること」。
エトワ木更津のオープン時には木更津内で魅力を探し、木更津駅近くにお店を構えるスペシャルティコーヒー専門店「THE COFFEE Kisarazu」に出会ったと、髙野さんは振り返ります。

香り高い「ハンドドリップコーヒー」850円(税込)、「カフェラテ」750円(税込)。
「木更津市は地域を盛り上げようとしている方がとても多く、弊社としても地域の魅力をお借りしたい、と考え、さまざまな人にご協力いただいています。THE COFFEE Kisarazuは店舗に突撃して代表の近井博規さんに直談判し、エトワ木更津へと出店いただきました」(髙野さん)

食べ飲み放題プランで楽しめる、木更津発「ベアーズ」のオーガニッククラフトビール。
そしてオープン後も地域の輪は広がり、エトワ木更津はより地域の魅力が楽しめる施設へと進化。エトワは100種類以上のアルコールとソフトドリンクなどが食べ飲み放題のプランが人気で、その中にある木更津発「ベアーズ」のオーガニッククラフトビールは近井さんの紹介で縁が繋がり、提供を開始しています。
開業から2年以上が経過し、地域全体にも良い影響が。木更津市役所も、それを実感していると言います。
「地元企業と協同でイベントを開催することや、地元産の農作物等を積極的に利用することにより地域経済の活性化が行なわれるなど、良い影響があります。また、木更津市を含む近隣4市から従業員を雇用するなど雇用の創出にも寄与しています」(木更津市役所 資産管理部財産活用課 西岡秀晃さん)
大人のための小学校で、焚き火とビールを。エトワ木更津の楽しみ方

客室「4beds cabin」。左がリビングで、右がベッドルーム。
ここからはエトワ木更津で実際にどんな体験ができるのか、詳しくご紹介します。まず、チェックインは18:00~20:00。一般的な宿泊施設と比べると遅いですが、チェックアウトが13:00とゆっくりなのがポイントです。
そのため東京近郊に住んでいる人なら仕事終わりに木更津に向かい、宿泊するのもおすすめ。アクセスは車が便利で、木更津東ICより約5分です。

客室「2beds cabin」。
エトワ木更津は2019年に閉校となった「富岡小学校」を活用しており、客室は元校庭に設置されたウッドキャビン!「2beds cabin」、「4beds cabin」、愛犬と泊まれる「DOG cabin」の3タイプで、温もりあふれる空間となっています。
一歩外に出れば自然をすぐに感じられる上に、キャビン内は冷暖房付きでどんな季節でも快適。きれいな共同トイレ・シャワーが元校舎にあり、24時間利用できます。

写真に写っている食べ物、飲み物はすべて食べ飲み放題。
エトワ木更津は素泊まりのプランもありますが、断然おすすめは「食べ飲み放題プラン」。こちらを選択すると18:00〜25:00の間、「Market」に並んでいるおつまみ、お酒、ソフトドリンクなどがすべておかわり自由で楽しめます。
お酒はビールを中心に、日本酒やチューハイなど選び放題。キャンプ飯としても大人気の「缶つま」も、まさかの食べ放題です!

肉料理と相性抜群な、ベアーズの「オーガニックスモークエール」。
そして先ほどご紹介した「ベアーズ」のオーガニッククラフトビールや国産レモンを使ったレモンサワーなどは、タップから好きな量を注げるスタイルです。
燻製の香り漂うベアーズの「オーガニックスモークエール」は、木更津で燻製調味料を作る「かずさスモーク」とクロモジの栽培・加工を行なう「クロモジ屋」とのコラボレーションビール。
元小学校で、好きなようにお酒を飲む……背徳感もありつつ、お酒好きにはたまりません。

食べ飲み放題プランのディナー。
ディナーはアウトドアのBBQサイトで楽しむバーベキュー(18:00〜22:00)。一部をのぞき、ほとんどの野菜やお肉が食べ放題となっています!
野菜はカットされたものをピックアップして、スキレットで焼いて楽しみます。準備も、片付けもしなくていいのは、グランピングならではの醍醐味ですね。

豪快な塊肉のローストポークも、おかわりOK!
お肉はローストポークとローストビーフが20:30までおかわり自由!あらかじめ低温調理した塊肉を、シェフが薪火で仕上げて提供してくれます。ローストポークもローストビーフもとても柔らかく、絶品。そのほか冬は「おでん」も食べ放題で、身体に染みる温かさでした。

薪をくべて、マシュマロを焼くひとときを。
デザートは網で焼く「焼き餅」や、焚き火で楽しむ「焼きマシュマロ」。焚き火は宿泊者が自分で薪を割ったり、くべたりと自由に楽しめます。

この日は満月で星は少なめでしたが、都心と比べると圧倒的に美しい夜空でした。
焚き火やバーベキューを楽しみつつ、上を見上げると美しい星空が。静かな夜に、仲間や家族と星を眺める体験は、心に残ること間違いありません。
チェックアウトは13:00。野外サウナでととのう

8:00〜10:00に楽しめる朝食「おかゆビュッフェ」。
翌朝はゆっくり起きて朝食へ。元職員室がカフェラウンジになっていて、おかゆビュッフェを楽しめます。「白粥」と「季節のお粥」は朝の胃にも優しく、ほっこりするおいしさ。
9:00〜11:30には、このカフェラウンジに併設された「会と話 by THE COFFEE」でコーヒーも注文可能です(別料金)。

バレルサウナは1グループ 3,000円、定員6人。
13:00のチェックアウトまでは、「サウナ」を楽しむのが一押し。2025年1月に新しく「バレルサウナ」が登場し、木更津の自然を感じながら汗を流せます。簡易的ながら水風呂もあり、サウナ→水風呂→外気浴のルーティンも可能。
利用時間はチェックアウト日の10:30〜12:00の90分間で、予約時にオプションで申し込めます。
地域の魅力にふれながら、アウトドア体験ができる「エトワ木更津」。グランピングで快適に過ごせるので、キャンプ初心者の家族や友人を誘って行くのもおすすめです。
エトワ木更津はまだ未活用の校舎もあるほど広く、「これからも進化していく予定です」と髙野さん。地域の課題に向き合い、活性化を目指すグランピング施設に、今後もご注目ください。
・エトワ木更津
HP:https://www.cigr.co.jp/etowa/kisarazu/