途中下船のつもりだったハワイにそのまま50余年
昨年亡くなられた篠遠喜彦(しのとう・よしひこ)博士は、ポリネシア研究に半世紀を注いだ太平洋考古学のパイオニア。博士を偲び、一周忌を期にシンポジウムが開催される。
さまざまな発見と功績を残した篠遠博士。博士とハワイとの結びつきをひもとくと、旅人あるあるな面白い事実が! じつは、もともとハワイではなく、サンフランシスコを目指して日本を発ったという……。
1950年代、20代半ばの篠遠青年は千葉県市川市にあった日本考古学研究所に勤務。まだ戦後間もないその頃に、考古学界では大きな発見があった。それは、日本にも旧石器文化があったと裏付ける石器が群馬県(現在のみどり市)で出土したことだ。それまで日本列島には旧石器文化は存在しない、と考えられていたが、定説を覆す出来事だった。
これに興味を持った篠遠青年は、アメリカ留学を決意。アメリカン・インディアンの旧石器文化の研究をし、のちに日本に戻って調査してみたいと考えていたという。そして、1954年、29歳のときに留学先のサンフランシスコに向けて横浜から船で旅立った。
単身渡米の途に就いたが、経由地のホノルルで途中下船してハワイ島での発掘を見学するようにとの電報が入る。その発掘をたばねていたのが、ビショップ博物館のケネス・P・エモリー博士だった。ハワイ島では日本仕込みの発掘技術に現地のアメリカ人は驚いたという。
あくまで目的地はサンフランシスコ。ハワイは途中下船のつもりだったが、エモリー博士の強い勧めで、なんとそのまま留まることに! 篠遠青年は留学先をカリフォルニア州立大学からハワイ大学へと変更。以来、50余年にわたってポリネシアの考古学を専攻し、さまざまな発見などの功績を残すするようになる……。
人間、なにがおこるか分からない。
誰でも参加できるシンポジウム。建物も一見の価値あり
篠遠喜彦(しのとう・よしひこ)博士の一周忌を迎え、追悼シンポジウムが今週末、2018年11月3日に開催される。このシンポジウムは、博士を偲び、生前の活躍に大きな影響を受けた研究者や大学教授、ジャーナリストが集い、未来へ向けて語り合うというものだ。
1日行われるシンポジウムのプログラムには、「1960年代末のハワイ」、「ポリネシアの遺跡」、「3万年前の航海」などなど。ハワイが好きな人、ポリネシア文化に興味がある人、冒険に興味がある人、カヌーが好きな人……に、とても興味深い内容が盛りだくさん。それが、なんと無料で聴講できるというのだから見逃せない、いや、聞き逃せない!
会場は、東京海洋大学越中島会館講堂(越中島キャンパス)。越中島会館は、旧水産講習所の本館として1935年(昭和8年)に竣工。現在は、国の有形文化財だ。キャンパス内にある他の校舎群にも戦前の建造物が見られ、とても歴史が感じられる。
11月3日は、文化の日。南太平洋の文化に触れてみてはいかがでしょう。
シンポジウム開催概要
篠遠喜彦博士追悼シンポジウム
楽園考古学を越えて
南太平洋ー考古学の挑戦と冒険
日時:2018年11月3日(土・祝) 10~17時(開場9:30)
会場:東京海洋大学 越中島会館 講堂(東京都江東区越中島2-1-6)
アクセス:JR京葉線・武蔵野線「越中島」駅下車、徒歩約2分。地下鉄東西線・大江戸線「門前仲町」駅、または「月島」駅下車、徒歩約10分。
定員:400名
参加費:無料。事前申込み不要。当日は定員弐なり次第、入場を〆切予定。