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大きくなってしまうとアクが出たり、硬くなってしまいますが、小さいうちなら、おいしく食べることができます。春の野原で、おいしい雑草探しをしてみませんか?
雑草は食べられる?
雑草の話をすると「食べてみたい!」という声をよく聞きます。書店でも食べられる雑草を扱った本を見かけるので、雑草を食べてみたいという人は案外、多いようです。
「雑草」の言葉の定義について以前、Googleレンズの記事でご紹介しました。
小学館の新選国語辞典(1989年)では「しぜんにはえた、つまらないいろいろの草。」、三省堂の新明解国語辞典(2021年)では、「あちこちに自然に生えているが、利用(鑑賞)価値が無いものとして注目されることがない草。」と解説されている雑草。
「つまらない草」「利用価値のない草」が雑草なのだから、「食べられる雑草」なんて、なんだか矛盾しているようにも思えます。
はたして雑草は食べられるのでしょうか?
平安時代の雑草は野菜だった
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ナギ(ミズアオイ)
最初に歴史を振り返ると、平安時代に食べられていた野菜の中には、ウリやナス以外にナギ(ミズアオイ)やノビル、スベリヒユなどの雑草が含まれていました。
ちなみに、現代ではジャガイモ、キャベツ、タマネギ、ネギなどの作付けが多く、雑草はほとんど食べられていません。
困ったときの食糧は雑草
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クズ
昔の人々は雑草を野菜の一種として食べていたわけですが、天候不順などの影響で作物が不作になった際には、非常食にもなっていました。江戸時代の史料を読むと、飢饉などで食糧が不足したおりに当時の人が田んぼのあぜの雑草、木や竹の葉まで食べたことが分かります。
現代ではフェンスに絡まるために厄介者となっているクズの根や、踏み付けに強いオオバコ、黄色い花を咲かせるジシバリなど、様々な雑草が食べられていました。
「七草がゆ」が伝える雑草食
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スーパーで売られている春の七草
七草の中身をあまり意識せずに食べている方も多いかもしれませんが、1月7日に無病息災を願って食べる七草がゆの中には雑草が入っています。
7種の植物のうち、
- なずな
- ごぎょう(ハハコグサ)
- はこべら(ハコベ)
- ほとけのざ(コオニタビラコ)
の4種が雑草になります。
その他の3種は
- せり
- すずな(カブ)
- すずしろ(ダイコン)
です。
七草がゆの風習はとても古く、始まりは平安時代ころまでさかのぼるようです。
そうした風習が現代まで残り、雑草4種を含む七草をスーパーで簡単に買えるということは、実はすごいことかもしれません。
初心者におすすめ!食べられる春の野草4種
もはや雑草ではない?おいしい雑草
ヨモギ
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ヨモギ
春の和菓子に当たり前のように入っているのがヨモギです。ヨモギは、鮮やかな緑色と爽やかな香りが特徴です。
スーパーでも草だんごや草餅、ヨモギまんじゅうが売られていまし、甘味以外にも、天ぷら、刻んだヨモギを混ぜたヨモギご飯、ヨモギの葉のお茶などに利用されています。
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ヨモギまんじゅう
人通りの多い道路脇にもよく生えていて、繁殖力が強く珍しくないため雑草とみなされがちですが、古くから食用のほか、お灸の「もぐさ」や漢方薬として利用されてきました。
食用にする場合には、あまり人が立ち入らない空地で採取する方がおすすめです。小さいものであれば2月ころから採取することができます。
大きく育ったものは繊維が硬くなるので、若芽を摘むと食べやすいです。
ツクシとスギナ
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ツクシ
見た目がかわいらしいツクシですが、結構、早めに枯れてしまうので、10センチくらいに育っているものを見つけたときには、すぐに採取してください。
ツクシは、塩ゆでしてアク抜きをした後で炒め物、おひたし、佃煮、卵とじなどにして食べることができます。江戸時代には一時期、塩漬けにしたツクシが駿府(今の静岡県)の名物になっていたようです。
ツクシが枯れた後にはスギナが生えてきます。
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スギナ
スギナは、乾燥させたものをお茶として飲むことができます。
イタドリ
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イタドリ
川岸や土手などに育つ雑草。春の若芽を茹でてよく水にさらし、酢味噌や油炒め、天ぷらにして食べることができます。
タンポポ
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タンポポ
タンポポの記事でも紹介しましたが、タンポポはもともと野菜として日本に持ちこまれました。
元禄10(1697)年に刊行された「農業全書」という農業の専門書には、ネギやホウレンソウ、シュンギクなどと一緒にタンポポが取り上げられていて、おひたしや和え物にして食べれば便秘に効くと書かれています。
雑草料理をつくってみよう
雑草を食べようとすると、どれだけの手間と時間がかかると思いますか?高知県でよく食べられているイタドリで実際に試してみました。
まずは食材となるイタドリ探しから始まります。雑草を探すときは、事前にどんな場所に生えているかを図鑑で確認しておくと見つけやすくなります。また、小さな図鑑を持っていけば、その場で確認することができます。
今回は道路脇と、川の土手でイタドリを採取しました(ここまで20分)。イタドリは大きくなると硬くなるので、アスパラガス大のものを選びました。
イタドリの下処理と調理
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表面の皮をむいたイタドリ
採取したイタドリは、皮を1本ずつ取り除いた後にさっと茹でて、その後で水にさらしました。この作業で大体30分かかりました。
イタドリは結石の原因となるシュウ酸を含むので、このような作業が必要になります。シュウ酸はホウレンソウやタケノコにも含まれるので、食べ過ぎには注意が必要です。
水にさらしたイタドリは何度か水を交換して、翌日に豚肉と一緒に醤油、砂糖で甘辛く炒めて一品に。
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イタドリの炒め物
シャキシャキした歯応えがありました。結局、10分ほどで食べてしまったのですが、採集してから料理して食べるまでに1日以上かかりました。
こういう経験をすると、普段の食事のありがたさがよく分かります。
タンポポのジャム
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タンポポの花のジャム(Michikusaさん提供)
まず、材料としてタンポポの花が150個くらい必要となるので、ゲーム感覚で楽しみながら集めてみてください。
次に、みかんやオレンジなどの柑橘類を細かくスライスしたものと、タンポポの花、水を鍋に入れて弱火で1時間程度煮ます。
その後、花と柑橘を濾した煮汁にグラニュー糖を加えて更に弱火で50分煮詰め、とろみが出てきたら終了です。仕上げにタンポポの花を加えて完成となります。
詳しい分量は、この後に紹介するMichikusaさんの本を参考にしてください。
雑草がおいしくなる本
雑草は、調理方法を工夫することで、よりおいしく食べることができます。定番の天ぷらだけでなく、洋食や中華など様々な調理方法を試してみてください。
詳しい調理方法を紹介した本
1冊目はMichikusaさんの『道草を食む 雑草をおいしく食べる実験室』という本です。 著者のMichikusaさんは、岡山県を中心に雑草を暮らしの中に取り入れるワークショップや雑草の観察会を行っています。本には、おいしそうな雑草料理の写真がたくさん掲載されているので、見ているだけでも楽しめます。
もちろん、詳しい調理方法も書かれています。また、採取可能な雑草を春夏秋冬で分けてあるので、雑草を探すときにも役立ちます。
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食べられる雑草の探し方や食べられない毒草を紹介した本
大海淳さんの『野草をおいしく食べる本』では、野原、里山、水辺など雑草の生育地ごとに食べられる雑草が紹介されているので、雑草を探すときに役立ちます。
雑草の調理方法以外にも、雑草の特徴や見分け方、薬用効果など幅広い情報が掲載されています。本の後半では毒草も紹介されており、食べられない雑草についても知ることができます。
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小説を楽しみながら雑草の調理も学べる本
映画化もされた有川ひろさんの『植物図鑑』は図鑑ではなく小説ですが、雑草のカラー写真や雑草料理のレシピも掲載されています。
さやかという女性と、やけに雑草に詳しい謎の男性・イツキの恋愛模様と、雑草料理が盛沢山の小説です。2人の恋の行方は読んでのお楽しみですが、タンポポの葉の炒め物やおひたし、ノビルのパスタなどおいしそうな料理がたくさん出てきます。
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毒草に注意!
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スイセン(食べられません!!)
今回は、食べられる雑草を紹介しましたが、名前の分からないものは絶対に食べないようにしてください!雑草の中には毒を含むものがあるので、要注意です。
雑草以外でも、春にはニラとスイセンを間違う食中毒がよく起きるので、気を付けてください。