大田区・萬福寺で感じた徳川家ゆかりの大工にちなんだ山の雰囲気【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.134】
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    2025.03.23

    大田区・萬福寺で感じた徳川家ゆかりの大工にちなんだ山の雰囲気【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.134】

    大田区・萬福寺で感じた徳川家ゆかりの大工にちなんだ山の雰囲気【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.134】
    東京23区内、特に山手線の内側はビル街や飲食店街、住宅街ばかり。そう思っている人が多いかもしれません。でも、目を凝らせば東京都心にも「山」はあります。そんな東京の山の世界を、日本で唯一のプロハイカーである斉藤正史さんが案内します。

    FILE.134は、大田区の木原山です。

    第134座目「木原山

    今回の登山口は、JR大森駅です

    JR大森駅西口登山口。

    今回は、JR大森駅西口登山口(最寄り駅)からの出発です。今回も、登山口=最寄り駅の選定で悩みました。前回の洗足池公園は3路線からアクセス可能で登山口をどこにするか迷ったのですが、今回の目的地はどの駅からも遠い場所にあります。しかも、周辺には(失礼ながら特筆すべきことがなさそうな)住宅地が広がっています。そのため、適当なルートを歩いてしまうと、後々記事を書く段階で自分の首を絞めることになりかねません。

    とはいえ、前回も少し触れましたが。山形在住の僕にとって大田区は縁もゆかりもありません。地の利も予備知識もない初めて降りた大森駅から山手方向に向けて、恐る恐る足を踏みだしました。

    坂道と住宅街が織りなす山行ルート

    まずは、駅前の通りを梅屋敷駅方面に歩いていきます。すると山手方向にその名の通り、日当たりの悪い闇坂(くらやみさか)が見えてきました。闇坂を登ると、すぐに住宅街に入ります。予想通り、案の定の住宅街なので、特に書くことが見当たらなくても焦らずビビらず、長丁場の道のりをグングン歩いていきます。

    文字通りというか、やや薄暗い闇坂。

    闇坂を上がると高級住宅街が広がっていました。予想通り、案の定パート2。それにしても、やっぱり何もありません。途中、住宅街で獅子舞を発見し、これは!と思って調べてみたものの、何も情報はありませんでした…。

    そんなこんなで住宅地を抜け、環状7号線を渡って南馬込文化センター方向に進みます。すると現れたのは、またしても坂。今度は右近坂(うこんざか)です。この坂は江戸末期にできたものといわれています。坂の名の由来については、近くに「おこん」という女性が住んでいたからなど諸説あるようですが、明らかではありません。正直、ネタとして弱いですね…。

    右近坂。

    その右近坂を上がると、都営馬込アパートがあり、アパート沿いの道を進んでいきます。すると、川端康成の似顔絵のある案内板と、「日の当たる坂道」で有名な石坂洋次郎の似顔絵のある案内板があるではないですか。案内板を読むと、石坂洋次郎は作家になる前、臼田坂の登り口にあるアパートに住んでいたそうです。また、川端康成も臼田坂の中腹辺りに住んでいたことがあるそうです。

    意外にもかわいい似顔絵が描かれた川端康成と石坂洋次郎の案内板。

    さらに辺りを見まわすと、「馬込文士村散策のみち」というマークを発見しました。調べてみると、大正末期から昭和初期、当時の住所でいう東京府荏原郡入新井村、馬込村に多くの文士、芸術家が関東大震災後に移り住み、互いの家を行き来するなどして交流を深めていたそうです。そんなことから、いつしかこの辺りを「馬込文士村」と呼ぶようになったとか。そんな文士たちの住んでいた場所に居住跡案内板などが立てられ、散策路にしているそうです。

    その案内板から10mほど進むと、臼田坂があります。臼田坂の名前の由来は、周辺に臼田さんが多く住んでいたからだそうです。なる…ほど…。臼田坂を上がると、お地蔵さまもありました。

    臼田坂。

    金剛地蔵尊(臼田地蔵)。

    実は、馬込文士村と呼ばれたエリアには紹介した以外にも見どころがたくさんあるので、ゆっくり散策するのにオススメです。ただ、この日の僕の目的はあくまで登山なので、先を急ぎます。

    臼田坂を登った先を進み、小林古径旧居跡方向へ歩いていくと、今回の目的地である「萬福寺」にたどり着きます。自分でもなぜか分かりませんが、きちんと事前に調べずに目的地に向かうと高確率で裏口に着きます。今回も例外ではなく、いつものように裏側から萬福寺の境内に歩を進めました。

    今回の目的地の山に関係する、萬福寺とは

    萬福寺
    1190~99年(建久年間)に、大井村丸山の地に密教寺院として創建。開基は梶原平三景時公(かじわらへいぞうかげとき)と伝えられています。梶原景平は、安時代末期から鎌倉時代初期にかけての武将であり、 鎌倉幕府の有力御家人のひとりです。

    萬福寺は、1320年(元応2年)に火災にあい、第六代の梶原掃部助景嗣(かじわらかもんのすけかげつぐ)が居城とともに馬込へ移転したと伝えられているそうです。

    今回の目的地は、萬福寺ではありません。この連載は「TOKYO寺社ガイド」ではなく、「TOKYO山頂ガイド」なので。では、なぜ萬福寺に伺ったのかというと、今回の本当の目的地である「木原山」の手がかりが萬福寺にあるのです。木原山を登る(探る)前に、まずある女性マジシャンのお墓にお参りします。「史跡初代松旭斉天勝(しょうきょくさいてんかつ)墓処入り口」から入っていきます。

    松旭斉天勝(しょうきょくさいてんかつ)
    松旭斉天勝は明治後半から昭和初期まで興行界で活動した奇術師、女性マジシャンです。女流イリュージョニストである二代目・引田天功(プリンセス・テンコー)の師にあたる初代引田天功は天勝の弟弟子である松旭斎天洋の門下だそうです。ちなみに松旭斉天勝の墓所は台東区西徳寺。夫の菩提寺であるこの萬福寺にも分骨されています。

    史跡初代松旭斉天勝墓処入り口。

    史跡初代松旭斉天勝の墓 眼下に街並みが広がっています。

    そして、ここ萬福寺には木原義久の墓があります。

    木原義久と木原山
    木原家は徳川家の木工頭でした。もとは尾張にありましたが、家康の上洛(じょうらく)とともに江戸に入ったそうです。そして、大森山王高台を木原山として木原義久が所領し、居を構えて江戸幕府の棟梁を長くつとめました。木原山の正確な場所は不明ですが、現在の大森駅にほど近い、山王3丁目から山手側の高台あたりが木原山と呼ばれてたそうです。

    ここまでいくつかの坂を上がってきたことからも分かるように、萬福寺は高台にあります。そして、木原義久の墓から望む街並みも、山頂からの景色といっても大げさではないほどの眺めです。この墓所が木原山に含まれるのかどうかは分かりませんが、少なくとも木原山から連なる台地であることは間違いないと実感できました。

    木原義久の墓。

    木原山の由来が記されている案内板。

    馬込文士村には多くの文人の足跡が残っていますし、萬福寺にも見どころがたくさんあります。ただ単に山頂だけを目指す駆け足の山行だと、見落としてしまうものも多いのだろうなと反省。子どものころに落ち着きがないと注意されたこともありますが、今以上にキョロキョロしながら山頂までの道のりを味わいつくそうと気持ちを新たにし、下山したのでした。

    次回は、大田区の大倉山です。

     ※今回紹介したルートを登った(歩いた)様子は、動画でもご覧いただけます。

    私が書きました!
    プロハイカー
    斉藤正史
    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。最新情報はブログを。

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