もはやレトロな山暮らしの必需品!ストーブの燃料に”石炭”を使ってみたら…
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    2025.03.11

    もはやレトロな山暮らしの必需品!ストーブの燃料に”石炭”を使ってみたら…

    もはやレトロな山暮らしの必需品!ストーブの燃料に”石炭”を使ってみたら…
    皆さん、薪ストーブで石炭を燃やしたことはありますか?私はちょっと辺鄙なところに引っ越したことをきっかけに、石炭で暖を取るようになりました。一体いつの時代の生活やねん!?

    私がストーブ生活を始めるまでのこと

    裏山でキャンプしながら自転車で大学へ通っていた頃の筆者

    ストーブ生活を始める前の筆者。裏山でキャンプをしながら自転車で大学へ通っていました。

    石炭ストーブとの出会いは突然のことでした。BE-PAL.netでも連載形式でご紹介した【佐藤ジョアナ玲子のアマゾン旅】を終えて、なんだか旅の刺激に毒されてしまった私。それまではハンガリーの大学の学生寮で生活をしていましたが、「快適さよりもエキサイティングな生活をしたい」と思い立ち、普通の生活と決別することを決めたのです。

    そこで始めたのが、大学近所の裏山でのハンモック暮らし。森で適当にハンモックを張って寝泊まりし、自転車で大学を往復する日々を送っていました。当然、この暮らしは、寒くなると現実的ではなくなり、次に目を付けたのが地域のスラム街へ入居することでした。

    お世話になったスラム街の家

    お世話になったスラム街の家のひとつ。

    実はこのスラム街は、通っている大学の学生有志で廃材を使って建てた家。実際の住み心地を確かめてみたいという気持ちもあって、その廃材で建てた家や、その隣の家など数カ所を転々としました。

    転々としたというのは、貧困や病気といった問題を抱えた地域で、ここでは書き切れないほどの紆余曲折があり、最終的には犬に1回、ネズミに2回噛まれてしまったから。

    ネズミに襲われたのは就寝中、ガブッと噛まれてイタッと飛び起き、滲んだ血に歯形が浮かんでいるのを見て、「私は、自分で目指しているほどタフな人間ではない」と敗北を受け入れ引越しを決意したのです。

    引っ越しの候補となった物件

    私の引っ越し先、第一候補だった物件。

    知り合いづてに引っ越し先を探してもらうことになり、第一候補に挙がったのがこの家。Aフレーム状の大きな小屋で、いかにも山小屋といった素敵な趣です。

    ここはもともと別荘だったものの、ほとんど使われることはなく、そのうち窓を割って勝手に侵入する人があとを絶たなくなり、家主の訪問時に偶然居合わせた勝手に住み着いている人を「いいよ、そのまま住んで」と明け渡した物件。

    誰かが住んでいれば、少なくともこれ以上侵入者に荒らされることはない、という家主の当時の判断でした。それから5年以上が経ち、さすがにどこかに引っ越したかな、と今回の私の入居先候補に紹介してくれたのですが、残念ながらまだ誰か住んでいました。

    筆者が入居した建物

    現在の自宅。

    廃墟!?に残された薪ストーブを発見

    次に紹介されたのが、私が今住んでいる家。この家も、もともとは夏の間だけ使う小さな別荘として建てられたものですが、20年間廃墟という物件です。

    居室の中に薪ストーブを発見

    居室のなかに薪ストーブを発見!見つけられるかな?

    電気、ガス、水道なし。居室へ向かうと、ゴミだらけ。唯一発見した使えそうなアイテムが、薪ストーブでした。運命的な出会いです。

    敷地に放置されていた車

    敷地に放置されていたクルマ。なぜ放置されたかというと…

    話題を家の外に移して、敷地に放置されていたこのクルマ。一体どうしてここに放置されているのかというと、薪ストーブと大きく関係していました。なんと、これは薪ストーブに使う薪を運び入れたら、家の前の坂を上がれなくなって放置されてしまったクルマなのだとか。

    家の前には急な坂があって、薪を運び入れるにも一苦労。ということで、もとの家主は薪に代わって石炭を燃やしていたようなのです。だって石炭の方が、同じ重さの薪よりもたくさん燃えるから。

    自宅から見える石炭の採掘跡地

    自宅から見える石炭の採掘跡地の巨大な穴。

    おもしろいことに、自宅の窓から谷を見下ろすと、そこにはぽっかり大きな穴があいていて、石炭採掘の跡地になっていました。その昔、石炭が採掘された土地で、石炭を燃やす。このうえなくロマンを感じます。

    年代物の薪ストーブを使ってみた

    廃墟に残されていた薪ストーブ

    廃墟に残されていた薪ストーブ。

    今どき石炭で暖をとる人はあまりいないせいか、石炭の使い方をインターネットで検索してもあまりピンとくる回答が見つけられませんでした。詳しい使い方はともかく、まず大切なことは安全管理。実際に火を起こす前に、煙突が詰まっていないかを確認します。

    掃除したらススがたくさん出てきた

    掃除したらススがたくさん出てきました。

    ストーブ本体と煙突を繋ぐパイプを外すと、なかから真っ黒のススがたくさん出てきました。煙突のつまりが原因による一酸化炭素中毒を防ぐため、しっかり掃除します。

    煙突内部

    煙突のなかを見上げると、遠くに空の光が見えました。

    壁の穴にスマホを差し入れ、空に向かって写真を撮影。煙突を塞ぐ障害物はなく、遠くに空が写っていました。これなら一応、大丈夫でしょう。

    さて、肝心の石炭の扱い方について、「一度だけ石炭を使ったことがある」という人から実際に話を聞くことができました。「一度だけ」というのも理由があって、着火時に事故が起こったからなのだとか。

    その人は、初めての石炭でなかなか着火しないことに剛を煮やし、液体の着火剤を振りかけて着火。すると、「ボンッ!」という爆発音とともに、窓が開くほどの衝撃があり、煙突とストーブを繋ぐ煙管も脱落。その穴から炎がゴウゴウと漏れて、あわや全焼の大事となってしまったそうです。

    石炭が燃える際に発生するガスと液体の着火剤の相性が悪かったのが原因で、爆発してしまったのだとか。

    「正しい使い方は知らない。でもやっちゃダメなことは知っている。液体の着火剤は使うな」

    石炭の着火風景

    石炭の着火風景。最初は普通の薪ストーブと同じ要領でおこないます。

    果たして石炭に着火はできるのか?

    ということで、ひとまず、普通の薪ストーブを使う要領で着火にトライ。まず、石炭を適量、なかに投入します。ビビって少量だけ、底がちょうど隠れるくらい。その上に、炊き付けを組み、サイコロ状の小さな固形の着火剤で着火。

    石炭に燃え移るまで、ストーブの空気扉は開けておく

    石炭に燃え移るまで、ストーブの空気扉は開けておきました。

    ますは、石炭を入れる扉の下にある、空気を取り入れるための扉を開けて、空気がたくさん入るようにします。しばらく見守ると、ボッと音を立てて石炭が燃え始めました。コツは、焚き付けはよく乾いたものを、細いのからやや太いのまで十分に使って、石炭に引火するまでは無闇にいじらないこと。

    ところで”石炭”と”木炭”の違いってなに?

    石炭で暖を取る筆者

    石炭で暖を取ります。

    ところで石炭って、バーベキューで使う木炭と一体なにが違うのでしょう?

    石炭とは、太古の植物が地中で数百万年かけて化石化したもの。一方木炭は、木材を密閉空間で焼いて炭にしたものです。石炭を使った火力発電が大気汚染で問題視されているように、石炭は燃えるときに黒い煙や様々なガス、そして特有の臭いを発生します。木炭と比べると高温かつ長時間燃えますが、臭いや煙のせいで、調理用には向きません。

    また、石炭は薪よりも高温で燃えるため、ストーブに使用する際は、通常の薪よりも高い温度に耐えられる丈夫なものでなければいけません。熱に耐えられなかったストーブが壊れて火災などの事故が起こる可能性があります。

    一方木炭は、木材特有の良い香りや、薪をそのまま燃やすよりも煙が少なく安定した火力があるため、バーベキューなどの調理にも使われます。

    2種類の石炭

    低グレードの石炭と高グレードの石炭のミックス。黒いのが高グレード。

    ハンガリーの石炭事情

    私が住んでいるハンガリー語で、石炭は「セン」といいます。ハンガリー語がからっきしダメな私が、唯一覚えている単語といっても過言ではありません。私にとって生活に直結する重要な単語なのです。

    値段は、町の石炭屋さんで20kgの袋が約3,000円ほどで販売されています。グレードの異なる2種類の石炭があって高グレードは約4,000円。量に対してどれだけ燃えるかという違いがあり、あまり高温になりすぎても怖いなと、試しに低グレードの石炭を購入。

    その後、高グレードの石炭を購入してみたところ、この高グレードはハンガリー語で黒色を意味する「フェケテ」と呼ばれていました。石炭なんて、どれも真っ黒なのに、なんで「黒」っていう名前にしたんだろう?

    不思議に思っていたのですが、混ぜてみて納得。確かに、高グレードの方が黒味が強い。石炭のことはなにも知らなかったけれど、使いながら少しずつ学んでいくのも楽しくて刺激的。おかげで毎日エキサイティング!です。

    私が書きました!
    建築学生
    佐藤ジョアナ玲子
    フォールディングカヤックで世界を旅する元剥製師。著書『ホームレス女子大生川を下る』(報知新聞社刊)で、第七回斎藤茂太賞を受賞。中日新聞の教育コラム「EYES」に連載。ニュージーランドとアメリカでの生活を経て、現在はハンガリーで廃材から建てた家に住みながら建築大学に通っている。

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