
2019年公開の映画『The Mustang』(邦題:ムスタング)は刑務所内での更生プログラムとして、このMustang Makeoverに取り組んだ収容者と馬の交流を描いたものです。
よく西部劇などでカウボーイや先住民が馬に乗るシーンを見るせいか、馬はアメリカを象徴する動物のような印象がありますが、実はマスタングは北米原産の野生動物ではありません。16世紀頃にスペイン人が北米大陸に持ち込んだ馬が野生化したものです。それまで北米大陸には馬はいませんでした。
アジア・ヨーロッパ大陸では匈奴(きょうど)を始めとする騎馬民族が猛威を振るい、日本では源義経率いる騎馬隊が鵯越(ひよどりごえ)の断崖絶壁を馬で駆け下りたりしていた頃、北米大陸の先住民たちは馬には乗っていなかったはずなのです。
ということで、マスタングにまつわるクイズ4問です!
【第1問】マスタングの原産地として正しいのは?
a) アフリカ
b) ヨーロッパ
c) 南アメリカ
d) アジア
マスタングは北米原産ではないことは前述した通りです。それでは、その祖先はもともとどこから来た馬でしょうか?
正解は「b)ヨーロッパ」です。 英語の”mustang”はスペイン語のmestengoに由来し、その意味は「迷子」あるいは「主人のいない家畜」なのだそうです。
つまりマスタングの祖先は人に飼われていたはずで、野生の馬という表現は厳密には正しくないのかもしれません。
【第2問】マスタングの主な生息地は?
a) カナダ
b) ロッキー山脈
c) 西部草原地帯
d) フロリダ湿地帯
現在も野生環境で生きるマスタングは主にどの地域に生息しているでしょうか?
正解は「c) 西部草原地帯」です。モンタナ、ワイオミング、ユタ、コロラド、ネバダ、ニューメキシコといった諸州のことです。マスタングは草や木の葉、低木の枝などを食べる草食動物で、乾燥地帯でも生きられるように適応しています。
【第3問】アメリカ政府によるマスタング管理の目的は?
a) 競馬
b) 家畜
c) 生態系保護
d) 観光
アメリカ自然史博物館の公式ウェブサイトによれば、かつては数100万頭を超えていたと思われるマスタングですが、1971年に「野生馬および野生ロバ保護法」(Wild Free-Roaming Horses and Burros Act)が制定された頃には2万頭以下まで減っていたそうです。主にペットのエサ用に乱獲されたためと考えられています。同法によって保護されるようになったマスタングは徐々にその生息数を増やしています。
アメリカ政府がマスタングを管理する目的は何でしょうか?

“Horses” by blmcalifornia is marked with Public Domain Mark 1.0.
正解は「c)生態系保護」です。 米国土地管理局(BLM)や農務省森林局(USFS)が主にマスタング管理を担当しています。マスタングを絶滅から守ることはもちろんですが、逆に個体数が増えすぎると、放牧地の草原が過剰に消費され、他の野生動物や家畜に影響を与える可能性があります。やみくもに保護するのではなく、動物と土地の持続可能性を保つバランスが重要になります。
【第4問】マスタングがサラブレッドより優れているのは?
a) 高くジャンプする
b) 速く走る
c) 泳ぎが得意
d) 耐久力が強い
私たちが競馬場でよく見るサラブレッドは競走用に品種改良された馬です。頭が小さく、脚は長く、筋肉は引き締まり、とても美しい外見を持った動物です。それに比べると、マスタングの馬格は小さく、胴体は太く、脚は短く、それでいて頭が大きく、スタイル面では大きく劣って見えます。
しかし、マスタングにはサラブレッドより優れた長所があります。それは何でしょうか?
正解は「d)耐久力が強い 」です。 マスタングは長い世代にわたって野生環境に適応してきました。独立心が強いことに加え、長距離移動に耐えるスタミナに優れています。1日に何10㎞も移動することもできます。1991年公開のコメディー映画『シティ・スリッカーズ』でも、主人公たちはニューメキシコ州からコロラド州まで馬に乗って移動する2週間のカウボーイ体験旅行をしましたね。
陸上競技にたとえるなら、サラブレッドはスプリンターで、マスタングは長距離ランナーです。自動車にたとえるなら、サラブレッドはスポーツカー、マスタングは頑丈な4WDか軽トラックのようです。フォード社が「マスタング」という名のスポーツカーを製造販売していますが、その命名は間違っていなかったかと、個人的には感じています。
