ヒメダカや白メダカ、青メダカが広く知られてきた改良メダカの世界が、ここ10年ほどの間に、多種多様な姿に変貌してきた。その品種数は200とも300とも言われるまでになっているのである。その品種数の増加と共に、改良メダカの飼育人口も右肩上がりに増えてきている。
「改良メダカの飼育者が増えてきた要因は?」といえば、何より、飼育容器、飼育器具にこだわることなく、容易に飼育出来る点であろう。古くは、日本家屋に置かれた水瓶や井戸の貯水槽などでヒメダカがボウフラ退治のために普通に飼育されていたが、改良が進み、体色が色鮮やかになったことに後押しされて、再び、多くの人に楽しまれるようになってきたのである。
そして、春から秋、気候が適している時期なら、健康なメダカは毎日、産卵をしてくれるのである。この「毎日、産卵する」ことが、メダカの改良に大きく寄与しているのである。
様々な体色を獲得した改良メダカ。まだまだ、これからも新しい表現を見せるメダカが全国各地で発表されるのは間違いない。
冬場なら、熱帯魚を飼育する感覚で、保温器具を用いて飼えば、夏場と同じように飼育、繁殖も楽しめるのである。改良メダカの世界は、これからもっともっと広く楽しまれていくことだろう。
今回から、魅力的な改良品種を毎週、1~2品種ずつ紹介していくことにする。
この写真を見て、何の群泳だと思われただろう?これは、“雲州三色”と呼ばれる改良メダカの一品種の群泳である。今日の改良メダカは、まるで錦鯉の三色のように見えるまで改良が進んでいるのである。
『雲州三色』
2017年、その魅力が一気に爆発したと言える非透明鱗三色が、島根県出雲市在住の野尻治男氏が作られた、“雲州三色”である。“雲州三色”の魅力は、何といっても基調色の白地の美しさと黒ブチの明瞭さである。作出過程で一度、琥珀透明鱗メダカが交配されているのだが、そこから遺伝した透明鱗性は3年ほど前からほぼ出なくなったそうである。それも野尻さんの白地と黒ブチ(野尻さんは墨と呼ぶ)にこだわった選別により、透明鱗の遺伝子は完全に淘汰されたようである。更に黒ブチを明瞭にする方向で交配が行なわれており、錦鯉の三色が見せる美しさを、この“雲州三色”がより高い次元で実現させることだろう。写真は2018年5月に撮影したもので、2017年に撮影した個体より美しさ、そして美しい個体の出現率は確実に上がってきている。
『あけぼの』
非透明鱗三色といえば、“雲州三色”より先行で有名になった、岡山県笠岡市在住の小寺義克氏が作られた“あけぼの”を忘れる訳にはいかない。5年前に小寺さんが楊貴妃メダカにラメ幹之メダカ系統のメダカを2回交配され、その後、さらに楊貴妃メダカ×幹之メダカから得られた個体を交配して作出された。そこから、小寺さんの厳しい選別で選ばれた個体が種親として使われ、現在の美しい非透明鱗三色の“あけぼの”に改良されたのである。特に朱赤色が濃く現れるのが魅力だ。非透明鱗三色は繁殖させると幹之血統の個体がかなり出てくる。そこから常に美しい個体の出現率を高められているのが小寺さんの“あけぼの”なのである。非透明鱗三色を楽しむなら、一度は飼育しておきたい。