新連載 文化系アウトドアのススメ  Vol.1 大和葛城山の山麓をゆく
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    2018.12.09

    新連載 文化系アウトドアのススメ  Vol.1 大和葛城山の山麓をゆく

    「文化系アウトドア」を広めたい!

    お初にお目にかかります。フリーライター兼編集者の武藤郁子と申します。
    本連載で大プッシュしようとしている「文化系アウトドア」という言葉。
    皆さん、あまり聞き覚えがないのではないかと思います。

     これを私は、「文化を求めて外に出かけていくこと」という意味で使っているんです。
    実は8年ほど前からホソボソと使ってきました。

    「文化活動は、インドアだけじゃ完結しない!やっぱりアウトドアがないと!」
    ――そんな思いから、使い始めた言葉なのです。

     私は、歴史や寺社が特に好きなので、そのあたりに偏るんですが、本を読んだり、調べたりしていると、どうしても、その場所を歩いてみたくなります。

     そうして実際にでかけてみると、行ったからこそわかることが、本当にたくさんあります。

     さらに、偶然出会ったことについても、帰宅してから調べてみる。そんなふうに細かいことにいちいち引っかかっては面白がって、感動を二倍、三倍に増幅させているのです。

     皆さんにも、そんな「文化系アウトドア」スイッチを、頭の隅にちょこっと設置してみてほしいなあ、というのが私の願いです。

     ちなみに私の周りには、そんなスイッチを持っている人がたくさんいます。この記事を読んでくださってる皆さんの中にも、きっとたくさんいらっしゃるはず!

    本連載では、私のつたない体験を通して、皆さんと情報を共有したり、面白がりポイントを増やしていけたらいいな、と願っています。

    修験道の祖・役小角の姿を求めて葛城をゆく

    さて、記念すべき最初のお話は、奈良県と大阪府の境目にある「葛城山」です。
    実は長年、葛城山とその山麓は、ぜひとも歩いてみたい場所でした。

     それはなぜかと言えば、このエリアが日本文化において非常に重要な「修験道(しゅげんどう)」の始まりの場所だからなのです。

    「修験道」は、日本人の精神世界、そして自然とのかかわりを語ろうとしたら避けて通れない、大きな潮流。一言でいえば、日本ならではの「山の宗教」です。

     その修験道の祖とされているのが、役小角(えんのおづぬ)という人物です。
    7世紀後半に実在した人で、信じられないような伝説に彩られた超人です。現在では、神仏として崇拝されています。そんな小角が生まれ、修行した場所というのが、この葛城山系とその山麓なんです。

     実は、昔は葛城(木)山というと、現在の金剛山のことを指しました。大きな意味では現在の葛城山も含めて葛城山と呼んだらしいのですが、単体で言うと、現在の葛城山は戒那山(かいなさん)と近年まで呼ばれていたそうなんです。
    この戒那山は、大和国(奈良県)の呼び方で、役小角という人は、その麓からほどない茅原(ちはら)という場所(「吉祥草寺(きっしょうそうじ)」)で生まれたと伝わっています。

     

    吉祥草寺。まずは役小角の生地でご挨拶。御所駅から歩いて約10分。

     文化系アウトドアで、最も重要なスキルは〝深読み力″

    ――ここで、「文化系アウトドア」において最も重要なスキルをご紹介します。

     それはずばり……「深読み力」です!

    例えば。

    このエリア(奈良県御所(ごせ)市)の地図やガイドブックを見てみます。ここで、「文化系アウトドア」スイッチをオン。

     すると、古くて由緒の正しい神社が密集していることに気付きます。

     「なるほど……。名神大が6社も密集してる。つまり古代に、そうとう大きな権力がここにあったんだな……」

     ……といったふうに、深読み力全開にして、想像してみるんです。これが大切。

    (ちなみに、「名神大(社)」という言葉、ちょっと覚えておいてください。古くは神社の社格を表わす言葉だったんですが、今もヒョロッと解説に書かれたりします。平安初期に朝廷がとても大切にしていた神社に、この社格が与えられているんです。つまり、権力集中ポイントです。要チェック!)

    さて、話は葛城山山麓に戻ります。

    目の前に広がるのは、のどかな農村風景です。

     しかし、約1600年前には、ここに強力な氏族――後の時代で言えば、藤原氏みたいな存在の氏族の本拠地があった。権力者の住む場所だったんです。ですから、当時の大王(のちの天皇)にまつわる遺跡や伝説も多く残されています。

     権力があるということは、きっと豪華なお屋敷があったことでしょうし、大陸から輸入された最先端の文物も、たくさんあったはずです。外国人も多く住んでいたでしょう。

     当時、このエリアには、葛城(かつらぎ)氏と鴨(かも)氏という古い氏族が住んでいました。葛城氏は大王(おおきみ)の正妃を輩出してきた名族、そして鴨氏は大物主(おおものぬし)神の子孫、三輪氏の分流で、代々神に奉仕する特殊なテクニックを持った一族だったように思われます。小角は、この鴨氏に属する氏族の生まれです。

     

    葛城坐一言主(かつらぎにいますひとことぬし)神社。御所駅から徒歩で約45分。車で約10分。主祭神の一言主神は、葛城氏が奉じていた託宣の神。名神大社。

     そう考えていきますと、当時、役小角が生まれたこの地は、外国の最先端文化もあり、古来の日本文化も濃厚に蓄積された、文化の中心地であったろうことが想像できるのです。

     まず、そんな想像を前提に風景を眺めてみます。するとあの葛城山という存在が、単なる山ではないということが、わかってくる気がするのです。

     さあ、それを踏まえて、いよいよ山頂へ向かいましょう!

     (「vol.2 葛城山の頂きで『国見』気分」に続く)

     プロフィール
    武藤郁子 (むとういくこ)
    フリーライター兼編集者。出版社を経て独立。「文化系アウトドア」を自称、ありをる企画制作所を設立する。現在は歴史系小説などの編集者、ライターとして活動しつつ、歴史や神仏、自然を通して、本質的な美、古い記憶に少しでも触れたいと旅を続けている。共著で書き下ろした『今を生きるための密教』(天夢人刊)が12月17日刊行予定。

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