アウトドアといえば、思い浮かぶのが「登山」と「キャンプ」。ふたつとも、いろいろな装備と準備が必要そうで、少し手が出しづらいという印象を抱いている人も多いはず。
アウトドアを楽しむ方法がわからないという人はまず、低山のハイキングから初めてみてはいかがでしょうか。
まちの喧騒から離れて楽しむ紅葉
先日、長野県長野市の「1166バックパッカーズ」というゲストハウスに宿泊してた折に、スタッフである溝川真由美さんから、ゲストハウスから徒歩で1時間、車で30分ほどのところにある「地附山(ぢづきやま)」を紹介していただきました。
ゲストハウスを訪れたのは、ちょうど紅葉の時期。きれいな紅葉が見られそうだな、と期待しつつ、溝川さんと山へ向かいます。
地附山の登山口は2箇所ありますが、今回は防災メモリアル「地附山公園」から出発して比較的簡単なルートを辿ります。まず進むのは、“一般向け”と案内されている「つづらトレイル」。
登山道はずっとなだらか。前年の落ち葉に滑らないか不安に感じることもありますが、その影のところどころには松ぼっくりが。なんでも無いようなことでも、山だと少し特別な気分になります。
この地附山、途中までは斜面に沿って登山道ができています。ビューポイントは、山腹と山頂の2箇所のみ。それ以外は、木々に眺望を阻まれています。それがかえって木漏れ日を作り、ちょうど時期を迎えていた紅葉もあいまって、とてもきれいな光景が目の前に広がります。
「この光の感じ、とても好きなんです。1時間程度移動すれば、まちの喧騒から離れられるのも良いですよね。もう車の音も聞こえません」
と溝川さん。耳を澄ませてみると、たしかに聞こえるのは、木の葉のすれあう音や鳥の声だけ。
道中で出会う、山の栄華の名残
ルートの半ばを過ぎた頃、もう一つの登山口「跳駒トレイル登山口」を起点とする「跳駒トレイル」に合流します。それからしばらく歩いていると、もう使われていないロープウェーの装置がありました。
ここは、地附山にあった「ロープウェー山頂駅」の跡です。駅ができたのは、1961年のころ。そのころは地附山は観光地として栄え、動物園や食堂などがありました。それが1964年、長野市街地から飯綱高原まで抜ける「戸隠バードライン」が完成したことによって、人が山を通り過ぎてしまい、徐々に衰退してしまったのだとか。登山道沿いに、ロープウェー以外の当時の施設跡を見ることができます。
それから30分ほど進むと、ようやく山頂に到着しました。山の標高は733メートルです。
山頂での食事は達成感と開放感がスパイス
ちょうど10時にゲストハウスを出発したので、到着したのはちょうどお昼時。少し下って、スキー場跡を見下ろす峰でお昼休憩します。
「ちょっとまってくださいね」
と、溝川さんがバックパックに手を入れると、中からりんご、ナイフのあとに、メスティン、エスビットストーブ、ホットサンドメーカーといったギアが次々と飛び出します。
「トランギアのメスティンひとつあれば食材の持ち運びや調理にも使えます。エスビットストーブはドイツ製で、折りたたんだ中に燃料がしまえてとてもコンパクト。ホットサンドメーカーはスノーピークのもので、取っ手が折り畳めるので、収納にも持ち運びにも便利。どれも、重宝しています。ゲストハウスでホットサンドをつくったりもしているんですよ」
メスティンには、溝川さん特製のサンドイッチが収まっていました。パンは溝川さんが焼いたベーグル。間にジンジャーポークと卵、キャベツの千切り、トマトをはさみ、ホットサンドメーカーに置きます。
溝川さん特製のサンドイッチは、10cm以上の厚さです。ホットサンドメーカーを閉じることができるのか、少し不安を感じるほど。
「(ゲストハウスのオーナーの)飯室さんにも『こんな分厚いの、きちんと収まるの?』と心配されます笑。でもだんだんと閉じていくので、意外と大丈夫なんですよ」
このホットサンドメーカー、本来は食パンの耳を落としてから使うタイプのもの。ベーグルを使うのは本来の使用方法とは違うので、難易度が高いのです。注意していないと具がどんどんこぼれていってしまったりバランスを崩してしまうことも。
ところが溝川さんは、手慣れている様子。焼き始めると、見る見るサンドイッチがホットサンドメーカーに収まっていきます。
調理は30分ほどで終了。ゲストハウスの近くにあるコーヒー豆の販売専門店「ヤマとカワ珈琲店」のドリップコーヒーも入れて、りんごをデザートにいただきます!
一口かじると具がこぼれ落ちそうになり慌てましたが、カリカリに焼けたベーグルの食感と肉の旨味、卵焼きの柔らかい食感がたまりません。
登山の入り口として、まずは、と地附山でハイキングをしましたが、山頂へついた達成感と空の下でたべる開放感に、地附山の昼食は今年一番においしい昼食となりました。
溝川さんは、山頂で飲んだコーヒーの美味しさをきっかけにアウトドアにはまったと言います。山歩きだけを楽しみに行くのではなく、山頂での食事を楽しみに山に登るのも良いかもしれません。
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◆地附山問い合わせ先:長野市観光課 026-224-8316(直通)
構成:松本麻美