続々と生まれ続ける新品種
改良メダカの面白さと魅力は、既存の品種を交配して、新たな表現のメダカを作ることができるところである。
それぞれのブリーダーが自由にハウスネームと呼ばれるニックネームを付けて楽しまれている部分がある。
現在のところ、同じような表現のメダカに、複数のハウスネームが付けられ、改良メダカの世界では、正式な品種名を決めるルールが確立していないため、混乱を招いている部分はあるのだが、品種名レベルにハウスネームが評価されるようになるのは、ハウスネームを付けた人がいくらアピールしても、メダカ愛好家たちの多くが半年後、一年後に使うようになって認められる部分が強い。
改良メダカを様々な交配から新しい表現のメダカに!これは改良メダカを飼育、繁殖している人のモチベーションを高める要因となっており、改良メダカを長年撮影してきても、撮影するメダカがエンドレスに毎年、少しずつ加わってくるのである。
今年も新しい表現を見せるメダカを撮影させて頂いた。
非透明鱗紅白の、ハウスネーム“小町”である。
2018年末に少量がリリースされたメダカで、本格的なリリースは2019年春からを予定されているそうである。
メダカ繁殖に生きた、花の育苗と錦鯉飼育の経験
このメダカを作られたのは、愛知県田原市在住の小野久仁雄さんである。小野さんの本業は花の育苗で、アルストルメリアを中心に美しい花を作っておられる。その小野さんがメダカに興味を持たれ、繁殖されるようになって8年が経つと言われる。魚類の飼育は錦鯉で経験されていたそうで、繁殖はメダカが初めてだったそうである。それでも小野さんの観察眼と日々の世話の良さによって、すぐに当時、珍しかったメダカをまとまった数を殖やせてしまったと言われる。「それなら!」とメダカ繁殖の副業を始められたそうである。
小野さんのメダカは小売りはされておらず、(株)清水金魚の観賞魚の市場に出され、観賞魚大手の卸、問屋経由で全国の小売店に流通してきた。フルライン(フルボディと呼ばれる)の幹之(みゆき)メダカとその赤さに定評のある“紅帝”は小野さんの代表的な品種で、人気のある出品魚となっている。
この“小町”、透明鱗紅白の一系統、“凛音(りんね)”に煌(きらめき)紅白、そして、黒幹之から少数が出てきたと言われる白桃色のメダカを交配して作られたそうだ。
こちらが元親となった“凛音”である。
こちらが煌の紅白タイプである。
そして、白桃色のメダカと小野さんが言われたメダカがこのタイプだそうだ。
多くの改良品種が知られるメダカの世界でも、錦鯉同様、紅白、三色柄のメダカは特に注目度が高い。小野さんが作られる“小町”は朱赤色の濃さも良いのだが、何より、白地の白さがここまで明瞭なメダカは多くのメダカ愛好家にとって垂涎の的になるだろう。リリースと同時に、多くのメダカ愛好家の注目を浴びることだろう。
多くのメダカ愛好家の手に渡る日はもうすぐである。
写真・文/森 文俊