いよいよ、春本番、というか、「夜は寒いなぁ…」と言っていたら、すぐに夏の気候がやってきそうな陽射しの日もある。ベランダにメダカ飼育容器を置いておくと、この時期でも水温が30度C以上になってしまうこともあり、今年は早めに葦簀などを使って、陽当たりの良い場所に置かれたメダカ飼育容器には、陰を作るようにして、水温が高くなり過ぎないようにしたい。
この「水温が高い」ことで出現率を高められるメダカがいる。ダルマメダカと呼ばれる体が著しく縮んだ体形を持ったメダカである。ダルマメダカは、楊貴妃メダカ、幹之メダカを始め、ほぼ全ての体色変異型に存在する。その寸が詰まった丸い体形は、品種を問わず可愛らしい印象で人気が高い。特に女性からの人気が高く、これからの時期、ダルマメダカはどこのメダカ販売店でも積極的にストックされる。
ダルマメダカは、fu 遺伝子という脊椎骨を短くする遺伝子によって出現するもので、水温が30 度C以上で明確にその特徴が現れる。そのため、夏場など高水温が続く時に採卵すると、ダルマや半ダルマの個体が多く出現しやすくなる。学術的にはチヂミメダカと呼ばれており、水温20度Cで発生させると10〜20%の発現を示し、28度Cで発生させると100%近い発現を示す(松田,1959)という報告がある。
fu 遺伝子は「癒合する、溶和する」という意味のFused の頭文字をとったもので、ドワーフ遺伝子とも呼ばれる。ダルマメダカは単に体の短い奇形なのではなく、野生のメダカでも見られる遺伝子による体形である。fu 遺伝子には主に5 タイプの遺伝子がありダルマと半ダルマとではfu 遺伝子が異なるので、完全なダルマ個体を殖やすには完全なダルマ同士で採卵していくべきで、「普通体形と半ダルマで採卵するとダルマが採りやすい」という話は迷信のようなものである。ただ、産卵行動が下手なため、交配するなら、ダルマメダカのメスに普通体形のオスを交配する方法も適している。
ダルマメダカでも体形には良し悪しがあるので、種親に使うなら、体形の良い個体だけを選ぶようにしたい。他の普通体形のメダカの種親選びより、しっかりと判別した方が良い。
ダルマメダカの稚魚は、フ化した当初は普通体形のメダカとほぼ違いは見られないのだが、1cmを超えた頃に普通体形のメダカより体が短くなる特徴が出てくる。そこまでは加温器具を使って、卵の時期から28度C以上の水温を保つようにすると良い。ダルマメダカは普通体形のものより泳ぎが下手なのは体形的に仕方のないことで、十分に餌を食べさせるなら、普通体形の幼魚とは別容器にして飼う方がしっかりと育てることが出来る。
また、ダルマメダカが光体形になると、各ヒレの大きさが強調され、見応えのある姿になる。
写真/森 文俊、東山泰之 文/森 文俊