8月11日、もうすぐ山の日がやってきます。気温30度超えが珍しくなくなってきた今日このごろ…。手っ取り早い避暑地としておすすめなのは、なんといっても「山」です。山歩きにトライするにはそれなりに準備と心構えが必要ですが、ここ最近は入門書やハウツーブックが多く発行されています。かつては、山岳部や山岳会などに所属して、山のノウハウを先輩に習うのが慣例でしたが、昨今は本や雑誌がそうした先輩役を担うことも少なくありません。
さて、今回は、これから山歩きをはじめたいと考える方へ、山に行きたくなる山の本をご紹介します!
まるでビジネス書!「なぜそうするのか」が明快な異色の登山入門書
『バックパッキング登山入門』四角大輔著 枻出版社 1,600円+税
日本における登山の歴史は長い。時代の移り変わりとともに、登山のスタイルも変化しいまはかなり多様化したといえるが、往年の考え方やスタイルはいまも主流といえるだろう。決してそれが悪いということではないが……。そうしたいわゆる旧態にはとらわれず、独自に山歩きを探求し楽しんできた筆者の経験をまとめたものが本書だ。
筆者は、四角大輔氏。かつてはミリオンヒットを飛ばす音楽プロデューサーとして活躍、現在はニュージーランドの湖畔で半自給自足の暮らしを送る、いわば森の生活者。忙しなく働く時間のなかでも必ず時間を作り、山へでかけていた様子がノウハウの隅々から感じられる。
61項目にもおよぶメソッドは、エッセイのようにサラリと読み進められるが、随所に知恵が散りばめられており登山経験者でも、なるほど~!と膝を打つ箇所多々あり。四角氏のライフワークのひとつ、釣りの項目があるのは氏ならではだ。そして、どの項目も「なぜそうするのか」という説明がとても明快。ビジネス書も手がけているせいか、一般論で濁すようなところがなく筆致によどみがない。自身で考え調べ実践し蓄積してきた、まさにノウハウなのだろう。少ない休みをいかに有効に使おうか?と考えるビジネスマンにもおすすめだ。
老舗山岳雑誌の編集長を歴任した「山の大先輩」がいざなう技術教本
『萩原編集長の山塾』萩原浩司著 山と溪谷社 1,600円+税
登る山、道具の選び方といった基本的な話から、高山植物や山岳写真などの山の楽しみ方、山紹介のガイドページまでも備えた総合的な山の教科書。写真が多く掲載され、入門者にもわかりやすく解説されている。登山初心者の素朴な疑問を、豊富な写真で段階をおってていねいに解決してくれる内容だ。筆者は、山岳雑誌の編集長を歴任した萩原浩司氏。昨今はNHK-BS『実践! にっぽん百名山』や『Let’s Climbing』での解説、MCでお茶の間にも知られている。
山歩きをしてみたいけど、なにからはじめればいいの?というときに、いろいろ筋道をつけてくれる一冊になるだろう。長年の登山経験を振り返り書かれたコラムの数々も読みごたえがある。
読むと山に行きたくなる!すぐに実践したいテクニックが満載
『トレッキング実践学[改訂版]』高橋庄太郎著 枻出版社 1,500円+税
本書は2010年に発行された『トレッキング実践学』の改訂版。山歩き、いわゆるトレッキングに出かけるための計画から実践までを順をおって解説している入門書だ。入門書とはいえ、山歩きの中級者にもおすすめしたい。基本的なハウツーに加えて、知っているようで知らなかった、知ってるつもりだった、あるいは、そうすればよかったのか、という学びが多いのが特徴。筆者の高橋庄太郎氏は、出版社の編集者を経て、山岳専門誌を中心に活躍しているフリーランスライター。北アルプスなどの山々はもとより北海道から沖縄まで、全国各地のあらゆる場所を歩いている実践者で、その豊富な経験が本書にもたっぷり繁栄されている。
日本初のUL(ユーエル)解説書、ビギナーでも取り入れられるぞ
『ウルトラライトハイキング』土屋智哉著 山と溪谷社 1,500円+税
ウルトラライトハイキング(UltraLightの頭文字をとってUL。ユーエルと呼ばれることが多い)をひとことで説明するのは難しいが、山歩きスタイルのひとつといえるだろう。しかしそれは、装備を単に軽くするための方法論ではなく、上級ハイカーのみが実践できる高度な技術でもないことが本書を読めばわかる。筆者は東京・三鷹でULをテーマとした店「ハイカーズデポ」を営む土屋智哉氏。氏は冒頭で、“「シンプルさ」や「自然との関係」にこそウルトラライトハイキングの核心がある”と説いている。日帰り山登りから、このULは実践することができるのだ。その考え方とやり方をイラストと文章というシンプルな構成で解説。
今月はどこにしようか?気負わないゆったりの山登りへ
『山登り12カ月』四角友里著 山と溪谷社 1,500円+税
全国各地37の山歩きを12カ月で分けたガイド&エッセイ。これまで紹介した4本とは異なり、入門書というものではないが、美しい山谷の風景の写真が多く「ああ、ここ行ってみたい」そんな思いにかられる内容だ。行き先に迷ったときに開いてみるのもいいだろう。紹介されている山情報では、食や温泉など周辺も網羅した旅要素もある。筆者は山スカートを広めたアウトドアクリエイターの四角友里氏。筆者が持つ柔らかな雰囲気が漂う、全編やわらかめのガイドブックだ。
※構成/須藤ナオミ