キャンプやハイキングなど、外遊びを楽しむうえで、これからも地球には気持ちよくあってほしいもの。そのためにも“エシカル生活”を始めてみませんか? 「エシカル」とは、自然と人と動物がちょうど良いあんばいで共存できる世界を目指すこと。日本人が古くからもってきた「おかげさま」「足るを知る」といった考え方を実践することが、“エシカル生活”につながると考えられています。ここでは、楽しみながら日々に取り入れられる、エシカルな物事を紹介していきます!
第一回:100年先を見据えて。無農薬有機栽培にこだわる『NAKAMURA TEA LIFE STORE』
今回お邪魔したのは、お茶ブランド『NAKAMURA TEA LIFE STORE』のお店。創業100周年を迎えた静岡県藤枝市のお茶農家・中村家が手がける、「カラダに優しく、いつまでも安心して飲めるお茶」を紹介しています。古くから革製品などの職人の住むエリアであり、近年では気鋭のお店や作家も集まる東京・蔵前に、2015年に場所を構えました。
幼い頃から慣れ親しんできた、お茶のある生活を伝えたい
お話を聞いたのは、中村家のご主人と幼馴染であり、2013年に『NAKAMURA TEA LIFE STORE』を共に立ち上げた西形圭吾(にしがた・けいご)さん。パッケージやWEBサイトなどのデザインを手がけ、お店にも立ちます。
ーーそもそも、なぜお茶を紹介しようと思ったんですか?
「僕たち静岡県民にとって、急須でお茶を飲むことは日常です。大人も子どもも、水を飲むようにお茶を飲んでいる。僕は18才で上京したんですが、一人暮らしの荷物にも急須を入れました。
ところが、うちに遊びに来た県外の友人にお茶をふるまうと珍しがられる。物心ついた頃には急須を使っていましたから、これが当たり前だと思っていたので、驚いて。
お茶を急須で淹れる文化が薄れるということは、ゆくゆくはお茶の売れ行きにも影響します。実際、僕らと同世代の30代とか、もっと若い世代の人たちにとって、お茶はちょっとハードルの高いもの。淹れ方が難しいとか面倒とかっていうイメージがあるみたいですね。
中村君とは、以前から『何か一緒にやりたいね』と話していました。そこで、こういう県外の人たちや若い世代のお茶に対するリアクションを目の当たりにして、お茶をもっと身近なものにしたいと『NAKAMURA TEA LIFE STORE』を立ち上げたんです」
ーー扱うお茶は全て、無農薬有機栽培でつくられたオーガニックなものだそうですね。
「はい。今から30年ほど前、先代が農薬で体を壊してしまって・・・。それが農法を切り替えるきっかけになりました。
お茶は、一般的に複数の茶葉をブレンドして作られることが多いです。でも『NAKAMURA TEA LIFE STORE』では、ブレンドしていないものがメイン。それぞれの茶園で穫れたお茶の個性を活かしたくて、茶園ごとに製造しています」
ーー先ほど『Garden No.2』をいただきましたが、すっきりとした味わいで、香りが口いっぱいに広がります。お茶の個性って、明確に違うものなんですか?
「同じ茶木でも、収穫時期が2週間違うだけで味わいは全く別ものになりますよ。しかも、茶葉が若ければ良いというわけでもなく・・・。頃合いを見極めて収穫するのにも、目利きが要ります」
ーーなるほど。しかし、渋いイメージのあるお茶ですが、これは思わず手に取りたくなります。
「味を知ってもらうには、まず僕らと同世代の人たちに『いいな』と思ってもらえるものにしたくて。生活に自然と馴染むデザインを意識しました。
特別な装飾を施してるわけじゃないんですよ。生産者の名前・生産年月日・畑の名前・場所を示す緯度・生産方法をあしらっただけ。缶は、合羽橋の専門店に相談して、あえて塗装を施していません。だから使ううちに錆が出るんですが、それも味(笑)。こういうシンプルな形になったのは、お茶を生活のものと捉えているからかもしれません」
新しいお茶を作るには、最低でも3年。美味しいお茶が採れる茶木の寿命は30年
ーー現在、並べている製品は全て定番だそうですが、新製品の予定はありますか?
「実は、100周年の2019年に向けて、3年前から中村君と企画していたんです。新しい茶木を静岡県藤枝市に植えて、収穫したものを昔ながらの手揉みの技術で仕上げようと。それに向けて、中村君は、『手揉み保存会』という会に所属して修行も積んでいたんですけれど・・・。
実際に収穫の時期がきたら、思っていたより収穫量が少なくて。これは、普通に販売するのは難しそうだぞ、と。だから、まずは2019年10月末に蔵前界隈で開催されるイベント『第5回 蔵前展』で、中村君が手揉みする姿を見ていただきつつ試飲と購入もしていただける催しを考えています」
ーー新製品作りが茶木を育てるところからとは、知りませんでした。自然相手のことですから、台本通りにはいかないんですね。
「そうですね。新鮮で美味しいお茶を収穫できる茶木の寿命は、植えてから30年が目安と言われています。だから、新しい茶木を植えるのは、お茶農家にとって大きな出来事なんです」
ーー今後に繋がる、新たな一歩になることを願っています!
「はい。2020年には、しっかり収穫できる予定なので、どうぞ楽しみにしていてください」
僕らのおすすめは“キャンプでお茶”
ーー美味しく淹れるには、コツがありますか?
「難しく考えることは、何もありません。一つコツがあるとすれば、沸騰したお湯をそのまま注ぐのではなく、飲むためのカップに一度、沸かしたお湯を淹れて、それを急須に注いでください。エグみが出にくく、澄んだ本来の美味しさが味わえますよ」
ーー(一番茶をいただいた急須をのぞいて)ああ、まだまだ良い香り・・・。水のように飲む地元の方は、出がらしの量もすごいでしょう?
「そうですね(笑)。だいたい三番茶までいただいたら、飲み終わった茶葉にポン酢をかけて食べたり、炒ってふりかけにしたり、佃煮にしたり。捨てることなく、最後まで楽しめますよ」
ーーゴミが出ないなら、キャンプに持っていくのもいいですね。あ、でも急須が必要か・・・。
「茶こしがあれば大丈夫。お好きな茶葉、お湯、茶こし、カップがあれば、いつでもどこでもお茶は楽しめます。僕も中村君もキャンプが好きなんですが、お茶を持って行って楽しんでますよ」
ーーキャンプでお茶、いいですね。大人も子どもも一緒に楽しめそうです。今度、試してみます。
きほんのお茶の淹れ方
- お湯を人数分のカップに注ぐ。一人分の目安はおよそ80ml。
- 急須(茶こし)に茶葉を入れる。一人分の目安はおよそ3g(ティースプーンすりきり1杯)、二人分はおよそ5g(ティースプーン山盛り1杯)。
- カップのお湯を、ゆっくり急須(茶こし)に注ぐ。お湯の温度の目安は、1煎目が70度、2煎目が80度、3煎目が90度と、徐々に熱くしていく。
- 急須の場合は抽出時間を置いたら、ゆっくり均等に注ぎ分ける。時間の目安は、1煎目が1分、2煎目が5秒、3煎目が10秒。
『NAKAMURA TEA LIFE STORE』共同経営者・デザイナー 西形圭吾さん
静岡県藤枝市出身。デザイン会社や映像編集スタジオ勤務を経て、フリーランスに。デザインや映像制作業務を行う傍ら、2013年より無農薬有機栽培の日本茶ブランド『NAKAMURA TEA LIFE STORE』を運営する。
<『NAKAMURA TEA LIFE STORE』概要>
住所:東京都台東区蔵前4丁目20-4
営業時間:12:00~19:00
定休日:月曜
Tel:03-5843-8744
住所:東京都台東区蔵前4丁目20-4
WEB:https://tea-nakamura.com/