アウトドアが盛んなオレゴン州ポートランド在住。東京・サンパウロでの広告代理店勤務を経て、現在はフリーライターとして日本のメディアに現地情報を寄稿している。
旅行、お酒、食事、キノコ狩り、カヌーなどが大好きです。オレゴン・マイコロジカル・ソサエティ会員。
足の下に広がる菌類の世界
今の季節、山や森に出かけると見かけるたくさんのキノコ。地上に出てくるキノコは、果樹に例えるならリンゴに当たるほんの一部だって知っていましたか?
キノコは、「キノコの神経システム」と言われる「菌糸」を地下の奥深く、土壌の至るところへと伸ばす、実は巨大な存在です。
森を歩けば、あなたの踏み出した一歩の下には、300マイル(約483km)分もの菌糸が隠れていることもあるそうです。
そして、この菌糸体は、コンピューターネットワークと同じデザインを持ち、太古の昔から様々な情報や養分を木々や生物へ伝達することで地球のメカニズムを支えてきたことが分かっています。また、近年は、存続の危ぶまれる地球の未来を救ってくれる存在になると期待もされています。
そんな謎と可能性に満ちたキノコの世界を描いた映画が、今年の秋、アメリカで公開されている『ファンタスティック・ファンガイ(Fantastic Fungi)』。私の暮らすポートランドでも公開されたので、早速、見てきました!
専門家が語るキノコの可能性
映像作家ルイ・シュワルツバーグ氏が監督する『ファンタスティック・ファンガイ(Fantastic Fungi)』は、時間もミクロ・マクロのスケールも自在に操り、様々な色や形をしたキノコの成長から、太古の地球や地中に広がる菌糸体ネットワーク、マジックマッシュルームのサイケデリックなトリップまでを鮮やかな映像で見せてくれます。
また、キノコ界では有名な真菌学者でビジネスオーナーのポール・スタメッツ氏、代替医療のパイオニア、アンドリュー・ワイル医師、作家のマイケル・ポーラン氏、スザンヌ・シマー教授など個性豊かな専門家が、それぞれの視点や経験からキノコの知られざる生態やその力についてわかりやすく語ります。
例えばキノコが乳がん、アルツハイマー病、PTSDといった症状を治癒する可能性について。また、マジックマッシュルームのトリップが、末期ガンなどで苦しむ人たちの価値観を変え、より生を楽しめるようになるという実験も興味深いものでした。
更に、キノコには地球環境にとって害となるものを栄養として取り込んだり、分解する力があるそうです。二酸化炭素を取り込んで地球温暖化を防いだり、原油や毒性のある重金属などを分解して環境汚染を解消してくれるなら、キノコが地球を救うといっても過言ではないと思います!
それにしてもキノコには、食用以外にも様々な可能性があることに驚かされ、ますますキノコが好きになりました。日本でもこの映画が公開されることがあったら、ぜひ観に行ってみてくださいね。