やりたいことがいろいろあって、田舎暮らしを始めた。自分で家を建てることとか、畑で野菜をつくることとか、ヤギやニワトリを飼うこととか。それから、寒い冬を薪ストーブで過ごすこともそうだ。
田舎暮らしを始める7~8年ほど前、長野県白馬村に暮らす友人の家で初めて薪ストーブの暖かさに触れた。それは、電気や石油が生む熱とは明らかに違う、それまで体験したことがない自然の優しいぬくもりだった。何より家の中で薪を燃やし、火を眺めて過ごせるというのが素晴らしかった。
薪ストーブを導入するための絶対必要条件とは?
薪ストーブには焚き火と同じロマンがある。ただし、ひとときの焚き火と違い、冬の間薪ストーブを日常的に使うためには覚悟もいる。燃料を切らさないように薪を作り続けるという覚悟だ。
それで私は田舎の情報網と自らのアンテナを駆使して、あちらこちらの伐採現場に出かけ、一升瓶を手土産に、処分に困った伐採木を譲り受け、燃料をまかなっている。手間のかかる仕事だけれど、最近じゃツテが広がって「木を切ったから引き取ってくれ」と連絡をくれる人も多くなり、大いに助かっています。
大変な薪作りもアウトドアアクティビティのようなもの。疲れるけれど、結構、楽しい。
50万円の薪ストーブが持つ価値とは?
おいおい鉄の箱とステンレスの筒だろ、なんでそんなにすんのよ。いくら何でも高過ぎるんじゃないの?無理だ。とても手が出ない。初めてその金額を聞いたときは、正直そう思った。
でも今は、50万円の薪ストーブにはそれだけの価値があると自信をもって言える。まず、デザインが美しい。炉の中で燃える炎は、エンターテイメント的でさえある。薪ストーブは家の中心に据えられる核になるものだ。火を焚かない夏の間もインテリアとしてそこにあり、毎日眺めて過ごす。そういうものはケチっちゃいけない。暮らしがつまらなくなる。自分がこれだと信じられるものだったら、そこは投資すべきだ。5万円の薪ストーブはどうしたって5万円のデザインを越えられない。
なんてことを言ってはみるけど、欧米製の薪ストーブももうちょっと安価になってくれると嬉しいのですが。
本体よりも煙突が大事! 煙が排出されなくちゃ火は燃えない
我が家には、母屋と、書斎にしている古民家と、多目的小屋にそれぞれ一台ずつ、3台の薪ストーブがある。冬の暖房はそれだけだ。一台でそれぞれの建物全体を暖めることができる。で、ランニングコストはゼロ円だ。
ピザやダッチオーブン料理もおまかせあれ
薪ストーブは料理ができるのもいいところだ。ストーブトップではいつでもやかんの湯がたぎり、火が落ちついて燠がいっぱいになった炉はオーブンになる。炉の中にダッチオーブンやスキレットを突っ込んでピザやグラタンが焼ける。
薪ストーブには灰を取り出すための受け皿がついているが、そこで焼きイモを焼けるのも最近知った。時間はかかるがイモは60~80℃の熱でじっくり火を通すと甘くなる。
薪ストーブの心地よさをワンシーズンでも体験してしまったら、もうそれがない冬は考えらない。毎日、家の中で燃える炎を眺めて過ごせる。寒い冬にこれ以上の娯楽はないじゃないか。