インディーズブランドならでは小粋な工夫を満載!
「多用途、丈夫、長持ち」というテーマをウリにした新しいバイクブランドが東京で生まれた。「Pep cycles」は、メッセンジャーや、自転車店・自転車メーカー勤務を経て独立した海老根拓さんが2018年に立ち上げた。販売する自転車は、現在、1モデル(完成車とフレーム&フォークの販売がある)のみ。フレームの設計からパーツ構成の決定、試作品のテスト、台湾の業者への発注、そして、販売店への営業までたった一人で行なっている生粋のインディーズバイクブランドだ。
用途の変化にも対応できる高い拡張性
「自分自身、サイクリングに行ったり、MTBで山を走ったり、レースに出たり、街をのんびり流したり、いろいろな自転車の楽しみ方を経験してきました。年齢や住環境、気分など、その時々で、乗りたい自転車や走る場所って変わっちゃうんですよね。そのたびに自転車を買い足すのも悪くないですが、様々な用途に幅広く使える拡張性の高い自転車が1台あったら、それでいいんじゃない? なんて考えたんです。そんな自転車を作るなら、競技車に求められる軽さよりも、丈夫で長持ちするほうがいいじゃないですか。そうやってカタチにしたのが、NSというモデルです」と、海老根さんは、自身のブランドのルーツを丁寧に説明してくれた。
フレームは丈夫なスチール製
この自転車のフレームは、クロモリというスチール素材でできている。カーボンのような強烈な軽さはないが、そこそこ軽く、乗り心地が良く、丈夫で、それほど高価ではない。スポーツバイクのなかでは、長年に亘り根強い人気を誇る定番のフレーム素材だ。完成車として販売されているNS-S1は、アップライトなハンドルに、あえて変速機がないシングルスピード仕様とし、これにちょっと珍しい27.5×1.5インチのタイヤを装備している。パーツ構成により、シンプルな見た目に演出されているが、じっくりとフレームを見ると、拡張性を高めるためのマニアックな工夫の跡が各所に見られる。
雨でも安心のディスクブレーキ
フレームの大きな特徴は、ディスクブレーキ仕様という点。天候に左右されない高い制動力を得られるだけでなく、径の異なるホイールの搭載が可能になる。さらに、後輪の軸を受ける部分(リアエンドスロット)を、水平にデザインすることで、後輪の位置を前後に18mm調整できる。これにより、650B(27.5インチ)と700C(29インチ)という、2サイズ(B、Cは、それぞれ規格名)のホイールに対応している。ちなみに、装着できるタイヤ幅は、650Bが2インチ(約50㎜)まで、700Cが45㎜まで。
カーボンフォークへの交換も考えた設計
ハンドル直下に位置するヘッドと呼ばれるチューブは、上が細く、下が太くデザインされた「テーパードヘッド」と呼ばれるタイプを採用。スチール製のノーマルフォークから、カーボンフォークへの交換を可能にするため、そして、フロント周りに荷物を積んだときの剛性をあげるためという。このヘッドのおかげで、カーボンフォークのみならず、グラベルバイク用のサスペンションにも交換できる仕掛けだ。ほかにもリア変速機、ラック、泥除けを取り付けるための台座など、各所に工夫が凝らされている。
この日、海老根さんが用意してくれたのは、完成車のNS-S1と、フレーム&フォークで販売されているNS-FSにご自身でパーツを組み込んだもの。それぞれを乗り比べてみた。
リラックスしたポジションで乗れる!
NS-S1は、アップライトなハンドルと適度にソフトなサドルのおかげで、視界が広く快適なポジションで乗れる。細すぎない1.5インチのタイヤは、少々荒れた路面でも、心配なく走れる。もちろんアスファルトの上なら軽快に進む。変速機はないけれど、ギア比が重すぎないので、坂道も平地も無理なく乗れる。むしろ変速をする手間や、変速するタイミングを考える作業がない分、楽に乗れるくらいだ。
どうしても変速機が欲しい、という方もご安心を。リアハブ(後輪軸の部分のパーツ)は、あとから変速機を取り付けることを想定し、多段用のハブにスペーサーを使ってシングルギアに変換しているので、ホイールを交換することなくそのまま多段ギアを組み込める。ハンドリングについては、若干のクセはあるが、慣れれば問題ないレベル。変速機がない完成車で105000円(税別)というのは、割高な印象を与えるが、そのままで乗っても気持ちよく、後々様々な改造がしやすいことを考えれば、悪くない価格設定である。
好みのパーツで組めるフレーム&フォーク販売もあり
NS-FSにも試乗させてもらったが、これはお世辞抜きに素晴らしい。NS-S1と同じフレームだが、カーボンフォークを搭載しているため、路面から受ける振動が格段に少ない。スチールフォークのモデルよりも、しっかりと地面を抑えているような感覚も心地よい。700×40Cという大径かつ幅広のタイヤとの相性も良く、完成車で感じたわずかなハンドルのクセもきっちり消されていた。しかも、グイグイと進む。乗った瞬間にバイクパッキングに出かけたくなった。このフレームセットが、75000円(税別)というのは、大手ブランドでは真似ができない破格では?
Pep cyclesは、現在、全国約40か所の販売店で購入できる。詳しい商品情報、販売店検索、今後の試乗会スケジュールなどは、Pep cyclesのWEBでチェックできる。
Pep cycles
http://pepcycles.com/