高知市にあるジビエ料理専門店「ヌックスキッチン」(発売中のBE-PAL2月号「ほんとうにおいしいジビエレストラン特集」にも掲載!)は、どの料理も抜群に美味しいと、口コミで噂が広がり、県外からも飛行機に乗って訪れるお客も絶えない。
ヌックスキッチン店主・西村直子さんによると、世界の著名な美食家が訪れたとき「どうしてお肉がこんなに美味しいのか!?」と、根掘り葉掘り聞かれたという。
お店のコンセプトは「お箸で食べられるジビエ料理」。
日本でもまだ高級感が漂う「ジビエ」という響きだが、「ジビエを食べる食文化をもっと広げたい」、「誰でも気軽に箸でつまめる料理にしたい」というのが西村さんの思いである。
「美味しさの秘密」を西村さんに聞くと「なんちゃーない。特別なことは何にもしてないき」(土佐弁訳 大したことないわ。特別なことは何もしていないわよ〜)との答え。
「誰でも簡単に作れる」と西村さんは言うのだが……。
女優に「美しさの秘訣は?」と聞いたときに、「特別なことは何もしていないわ」と答えられたときと同じ気持ちになる。
しかし、「特別なことは何もしていない」の言葉にこそ、美味しさの秘訣があった。
ヌックスキッチンの料理はシンプルな味付けが多い。ソースや付け合わせではごまかしのきかない、肉そのものの美味しさが味わえる。
それは高知県産のジビエ肉へのこだわり、世界60カ国を訪問し、料理の腕を磨いてきたご自身の肉質を見極める目利きへの自信ゆえだ。
本来の美味しさを味わってもらうべく、西村さんはそれぞれの肉にあった調理方法と味付けを、その日の肉質を見て決めている。
「牛肉や豚、鶏は部位によって調理法が変わります。でも数年前までシカは部位ごとに、肉質や味わいが違うという事実に気づいている人がいなくて、例えばシカのロース肉を、適していない煮込みにしたり、固い部位なのにシンプルに焼いてステーキにして食べたり。
そこから『シカはかたい。バサバサする』という先入観が生まれてしまうことがあったと思います」と西村さん。
「お店では基本的に後ろ足を骨つきで購入し、肉質を見極めながら調理法やメニューを変えています。後ろ足でも部位を5〜6つに分けるんです。
当店の看板メニュー、シカのシンプルローストには、後ろ足の柔らかい極上の部位のみ、使用しています。煮込みには適さないけれど、弾力のある部位は、薄切りにして漬け込んだり、コロコロステーキに使っていますよ」
「煮込みに適する部位はシチュー、アヒージョなどにしています
。骨つきスネ肉は骨つきのまま丸ごと煮込みむポトフなどに。骨からだしがでてストック(洋風だし)がいりません。また、残った骨はぶつ切りにして、だし代わりに使用しています」