都会から離れて、自然の多い地方に移住を考える人が増えてきたように思います。いざ移住となるとどんな手続きが必要で、費用がどれくらいかかるのか、気になりますよね。そこで、実際に東京から岡山の山奥に移住をした筆者が、移住に際して気づいたことや、具体的なプロセス、移住に伴うさまざまなコツ、また移住先での取り組みなどについてご紹介します。
地域おこし協力隊として移住を決意
2020年3月末に、地域おこし協力隊の制度「ローカルベンチャースクール」(ローカルベンチャー=地方でのベンチャー的起業) を利用して、東京都から岡山県英田郡西粟倉村に移住しました。 これは起業を目指す人向けのプログラムで、西粟倉村における2020年の採用は4名ほど。
2019年秋に応募し、書類選考、面接(プレゼンテーション)などの審査を経て、事前研修を受けてから、晴れて移住となります。 移住が決まってから、実際に引っ越すまでの期間はおよそ2カ月半。時間があるように思えても、さまざまな手続きを済ませたり、荷物を整理したりで、あっという間に引っ越し当日を迎えてしまいます。 そこで、移住をする際にかかった時間や費用について、ポイントをお伝えします。
移住データ
移住前:東京都
移住先:岡山県英田郡西粟倉村
勤務先:地域おこし協力隊の協力隊員
準備期間:応募から引っ越しまで約6ヶ月
引っ越し期間:移住確定から引っ越しまで2か月半
準備にかかった資金
合計:約60万円
内訳:ペーパードライバー教習(5.5万円)、引越代(宅配便6万円)、家具家電類の買い足し(25万円)、車購入(中古車23万円)
移住の手続き
住民票の転出届、転入届、運転免許証、銀行口座などの住所変更(所要期間 約1カ月)
移住前と移住後の生活費内訳
家賃:before8.7万円(1K30㎡) → after 2万円(平屋、車庫付き 2K40㎡)
生活費:before9万円 → after4万円 (食費、光熱費など含む)
※冬になれば光熱費は高くなりそうですが、生活費は殆どかからなくなりました
一番気になるお金事情についてですが、収入は東京にいる頃よりも減った分、家賃や食費が半分以下になったため、生活の質自体は殆ど変わっていないと思います。
実際に引っ越してきて思ったこと
さて、以前も染織の修行で東京を離れて倉敷に住んだ経験があったので、「都会から離れて住む」ということには、少しは慣れていると思っていました。 移住者も多くて街へのアクセスも悪くない西粟倉村ですが、移住直後だからこそ見えてきたこと、感じたことがあります。
物件の選択肢が限られる
まずは、家探しについて。西粟倉村内には、不動産屋はありません。受け入れ先に仲介を頼んだものの、3月末時点で入居できる家が、古民家平屋1軒、新築平屋1軒、新築アパート1軒の、合計3軒のみ。私の仕事は染織で、機織り機を置くスペースが必要なため、古民家平屋の一択となりました。しかし前の住人がまだ住んでいたこともあり内覧ができず、ドキドキの引っ越しに。
田舎の一軒家というと、古いけどとにかく広くて庭に畑もあって、というイメージでしたが、単身者用ということで、8畳と4.5畳の2Kというこじんまりとした家です。建物は相当古いですが、内装は3年ほど前にリフォーム済みで、トイレも洋式水洗(西粟倉村は上下水道整備済みです)。お風呂も、バスタブは古いけど、シャワーも給湯も完備です。そして全室フローリング。エアコンも一基ついています。 家賃は安くなりますし、多少広くなりましたが、望んだ物件に巡り会えるかどうかは状況次第だと思います。
さらに西粟倉村に限っては、移住者の数に対して圧倒的に空き家が少ない状況。いまや人口の1割以上を移住者が占め、空き家が不足しているため新築している程で、新築物件の家賃もそれなりに高いと言えるでしょう。
自家用車は必須
西粟倉村は列車が通っているとはいえ、村内にはバスもタクシーもありません。買い物ができるところも、道の駅や小さな商店のみで、スーパーマーケットやコンビニ、ホームセンターなどは隣町まで行かなければならないため、車は必須です。 東京に住んでいると車の免許はなくても生きていけますが、田舎暮らしとなった場合、車がないと生活が出来ないと思ったほうが良いでしょう。 今回、納車されるまでの約1か月間は、同期の仲間に車を出してもらって買い出しに行ったり、ネットで必要なものを購入したりしていました。
移住を失敗させないポイントとは?
いくつかポイントを挙げるとすれば、この2つかなと思います。
移住先の情報をなるべく多く入手しておくこと
実際に引っ越しをするまでの間に2〜3回は訪れておくことをオススメします。できれば異なった季節に訪れて、自分のライフスタイルに合うかどうかも確認しておくと良いでしょう。
先輩移住者が他にいるかどうかをヒアリングしておくこと
同じような境遇で田舎暮らしを始めた先輩がいると、いざというときに助け合えたりするものです。私の場合は地域おこし協力隊の同期や先輩方がいたので、買い物に連れて行ってもらったり、車の手配をお願いしたり、今でも困ったことがあると相談に乗ってもらったりしています。
西粟倉村の場合、村の人が移住者に慣れているというのも大きなメリットだと感じています。人口の少ない田舎に引っ越しをするということは、近所のお付き合いも大事になるのですが、この村のように移住者に対して適度に距離を持って接してくれるのは、とてもありがたいと感じます。
西粟倉村とはどんなところ?
さて、最後になってしまいますが、西粟倉村についても少しご紹介します。 人口約1,500人という小さな村で、2004年の「平成の大合併」と呼ばれる市町村合併にNOを突き付け、自立の道を選んだことで話題になりました。2008年に「百年の森林構想」を掲げ、50年前に先人が植えてくれた森林を整備し、持続可能な森林経営をし、50年後に「百年の森林に囲まれた上質な田舎」になることを目指しています。
近年この理念に共感した若い人たちの移住が増え、この流れを加速させるために、2015年から、民間企業であるエーゼロ㈱と村役場がタッグを組んで、「起業 +移住」をコンセプトとした「ローカルベンチャースクール」プログラムをはじめました。
他にも、環境モデル都市としてバイオマス等の再生可能エネルギーに取り組み、エネルギー自給率100%を目指していたり、「brighten our forests, brighten our life, brighten our future!! 生きる を楽しむ」をキャッチコピーに、ひとり一人が人生を楽しめる地域づくりに邁進しています。
次回は、この西粟倉村の取り組みについてご紹介していきます。