世界中で愛される折りたたみ自転車、ブロンプトンとは
昨今、健康面や経済面から自転車通勤が見直されている。通勤時間を運動の時間として充てられたり、帰りにいつもと違ったお店に立ち寄ったり、多くのメリットは以前から語られているところだが、自転車の保管場所や突然の荒天への対応など初心者にとって敷居があるのも事実だ。
そこで注目が集まっているのが「Brompton(ブロンプトン)」という名の折りたたみ小径車だ。’80年代にイギリスで発売されて以降、同じスタイルで世界中から愛されている名車だ。私自身スポーツサイクルを10台以上所有しているが、初の折りたたみ自転車としてブロンプトンを最近購入した。実際に手にすることで、なぜこの自転車が世界中で愛されるのかが少し理解できたように思う。そこで、少し皆さまにご紹介したいと思う。
折りたたみ自転車に対する先入観
まず、折りたたみ自転車に対して、皆さまはどのようなイメージをお持ちだろうか。私は「自転車としての性能を落としてでも、無理に折りたためるようにした中途半端なもの」という先入観があった。激安品がホームセンターで並んでいることも多く、メンテナンスもされず駅前に放置されている姿を目にすることも少なくない。また自転車の骨格ともいえるフレームを真っ二つにしてヒンジをつけてしまうのは剛性的に心許ない。軽快に街中を走り抜けることとは無縁なイメージだった。それはブロンプトンが折りたたまれている姿を店頭で見かけても同じで、実際に自分で手にしてみるまでは気が付きにくいものかもしれない。
随所までこだわり抜かれた折りたたみ性能
私がこのブロンプトンについて何より先に語りたいのは、折りたたみ性能に対する並々ならぬこだわりだ。「折りたたむ時間が短い、折りたたんだ状態が小さい」というのはよく知られたところだが、ギミックはそれだけにあらず。まず油汚れが気になるチェーンは全体の内側へ格納され、折りたたんだ状態だと外から触ることすら難しい。同じく汚れがつきそうなタイヤも抱えた際衣服に接触しづらい位置に収まっていて、持ち手(サドルかフレーム)のバランス的にも、体の位置からうまく離れるような状態になっている。
また、下げたシートのチューブがフレームのストッパーになるなど、格納状態から勝手に広がらないようにするための工夫が随所になされている。「折りたたむための動作」と「たたんだ状態を維持する機構」が複雑に組み合わさっているところは、開発者の計り知れない研究の成果を強く感じさせる。「この部分って、わざとこういう作りにしてるのか…」と気がつくたびに、どうやってこの自転車を作り出したのか、よけいに謎が深まっていく。
当然、折りたたんだ状態が小さければ持ち運びも楽で、輪行をするにしても、車に積んで出かけるにしても、さらには乗り終えて家の中で保管するにしても最低限の場所しか取らない利点は素晴らしい。私の場合、玄関の端に鎮座させることにした。またシートのパイプ根本に添えられた小さなタイヤは、格納すると本体の下部で地面と設置し、折りたたんだまま転がして運ぶこともできる。
気になる走行性能について
特筆したいことは折りたたみ性能のみにあらず、自転車ゆえにその乗り味にも注目したい。小径車は通常そのホイルサイズの小ささから、走行中にふらつくことが多い。このブロンプトンの場合、短いハンドルがタイヤの中心からダイレクトな位置にセットされているため低速の不安定感は否めない。ただし、ほかの小径車に比べてホイルベース(前タイヤから後ろタイヤの中心までの長さ)が明らかに長いため、中速〜高速域での安定感は目を見張るものがある。私は”M6L”というモデルから内装変速を取り外した外装2段の仕様で購入したが、走り出しにもたつきもないし、普段スポーツ車に乗り慣れている自分にとっても違和感のない変速機能が味わえた。
カスタムについては、いまのところ内装変速の取り外し、ヘッドパーツの交換を購入時にお願いしたくらいで、改造というほど何も触っていない。前述の通りこのブロンプトンは折りたたみ機構を正しく作動させるため、ブレーキワイヤーの長さなどが、かなりタイトな設計になっている。その分、自転車そのものの構造をしっかり理解したうえでカスタムする必要があり、ある意味で自転車趣味を深く広く掘り下げられるともいえる。
高いバランス感覚で作り出された一台
街中を軽快に走るにしても、さっと折りたたんで公共交通機関で移動するにしても、どちらにも高い機動性を発揮するこのブロンプトン。自転車初心者にも、玄人にもぜひオススメしたい一台だ。
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ミズタニ自転車株式会社
ブロンプトン ウェブサイト:http://www.mizutanibike.co.jp/brand/brompton/