バトニングで薪を割る
バトニングにはナイフ1本とバトン用の太い枝が必要。握りやすいように取っ手になる部分は細く削っておくと繰り返し使える。
薪の角に刃が食い込むようにナイフを斜めに入れる。刃の先端ではなく根元側を。
バトンで叩きながらナイフを水平にしていく。ナイフが食い込むようにこれを繰り返す。
8割ほど割り進んだら、ナイフを捻るように動かすと簡単に割れる。ただし、力任せに捻らないこと。
フェザリングで焚き付けを作る
ナイフ作動方式
ナイフの刃の先端を枝の上部に当て、削りながらゆっくりとスライドさせていく。
ナイフが下にいくにつれ、刃の厚い根元のほうにずらしていくと、きれいに削れる。
枝先がクルクルと毛羽立てばOK。全面を加工しておくとなお良し。
ナイフ固定方式
ナイフの位置を固定し、枝をスライドさせて削る方法。この場合はまず根元に当てる。
枝を後ろにゆっくり引きながら、表面を削る。安全だが、薄く削るのはかなり高度な技。
完成! さすが講師の荒井さんはフェザーたっぷり。生徒ヒミカさん、練習あるのみ。
いよいよ着火に挑戦!
ナイフの扱いを覚えたら、いよいよ火おこしにチャレンジ!
荒井さん「野営では、焚き火で暖をとりつつ調理して、タープ1枚で寝床を作ります。何はともあれ、火をおこせるようになること」
いうが早いか、周囲をひと巡りして戻ってきた荒井さんの腕には、立ち枯れた枝やスギの葉が満載。
荒井さん「森に入れば燃料となる材料は豊富にあるので、これをいかに利用して火をおこせるようになるかが大切」
まずは拾ってきた枝で薪を作ることからスタート。
荒井さん「バトニングといって、枝を細かく割って、火がつきやすいように加工します」
ヒミカさん「え、斧ないですけど?」
荒井さん「もちろん、ナイフで! 小口に刃を当てたら、バトンで峰を叩いて割っていくんだよ」
ヒミカさん「ワァー! すごいっっ」
荒井さん「で、割れた薪を削って、焚き付けになるフェザースティックを作ります」
ヒミカさん「羽毛の棒???」
荒井さん「そう、フェザリングっていって、薪の表面を薄く削って毛羽立てます。こうするとより燃えやすくなる」
❶着火材を削り出す
ナイフの峰を使ってファットウッドの表面を削り、削りカスを集めて火種にする。
❷火花を散らす
ファイヤースターターをナイフの峰に素早く擦り、火種の上に火花を飛ばす。
❸火口に火を移す
白樺の皮に炎を移したら、焚き火台の上に用意しておいた白樺の皮に運んで炎を移す。
❹焚き付けを加える
燃えはじめはその上に細かくしたスギの葉や乾いた落ち葉などをのせ、火をおこす。
❺細い薪をくべる
細い枝をひと束火にくべる。同じ方向に揃えて置き、空気の通り道を確保する。
❻太い薪に移行
その上にフェザースティック、太い薪の順で投入。徐々に太い薪に移していくのがポイント。
焚き火台に薪をセットしたら火を起こす。
荒井さん「大事なのは火種。今回は松やにが詰まったファットウッドを削り、その削りカスにファイヤースターターで火の粉を飛ばして着火します」
ヒミカさん「これがやってみたかった〜」
荒井さん「はじめてだから、何回かやってみると……」
ヒミカさん「センセイ、つきました!」
一発OK。才能ありかも。
荒井さん「あらら、そしたらそれを白樺の皮に移して、薪にくべて!」
一気に慌ただしくなる。火つきのいいスギの葉を加え炎を立てたら、フェザースティックをくべて火を育てていく。
ヒミカさん「ついたーーー!! 私の腕⁉︎」
荒井さん「いやいや、ナイフのおかげでしょ。焚き火を育てたように、ナイフもちゃんとメンテして、自分仕様に育てましょう」
炎が安定したらこっちのもの。あとは薪をくべながらコーヒーでひと休み。自分の持っている力を引き出してくれるのもナイフの魅力。
ナイフのメンテナンス
砥石で研ぐ
砥石は荒砥#1000、中砥#1500、仕上げ砥#5000の3種類を使用。ほかに牛のヌメ革、オイルを用意。
しっかりと刃の根元を固定する。砥石と刃の角度は18〜23度に保つようにする。
手がぶれないように固定し、刃の根元から先端に研いでいく。先端は少し角度を上げる。
革を使って磨く
バリを取るために革でこする。革の表面でエッジを整えるように左右に刃を引きながら磨く。
オイルで仕上げる
刃にツバキオイル(酸化しにくい)を塗る。刃にオイルを垂らし、指でエッジに向かって塗り広げる。
木製の柄や革のシースにはオイル(写真はクマの脂)を塗る。まずは指で全体に塗布する。
布切れで薄く塗り広げる。表面が滑らかになるうえ、革は浸透してひび割れしにくくなる。
※構成/大石裕美 撮影/中村文隆
(BE-PAL 2020年6月号より)