世界的な聖地・パワースポット、セドナに住んで24年になる写心家・NANAさんは、セドナの大自然をガイドしながら、住んでいる人だけが触れられる四季折々のセドナの大自然を写真に収めています。数々のミラクルな写真を撮影しているNANAさんに、「自然写真の撮り方」について、お伺いしてみました。
――NANAさんは、セドナで毎日撮影しているんですか?
NANA さすがに毎日はしていませんが、私は、この何日かワイズワイス彗星漬けになっていましたね(笑)。夜はタイムラプスで彗星を撮影して、昼は撮影したデータの画像処理をやっていました。何しろ「次に見れるのが5000年後だから、記録しておかなきゃ」と思って、撮影していたんです。でも、アリゾナも、モンスーンの季節に入って雲が多くなってきたのと、月が満月に向かって日に日に明るくなってきたので、まともに撮影できたのは3回だけでしたが…。
NANA セドナにはたくさんの美しい撮影ポイントがあります。夕方の光で撮影すると美しさが際立つレッドロックもあれば、朝日が差し込んでくる時間が美しいスポットもあります。私は、「今日は雲が綺麗だから、あそこで撮影しよう」とか、その日のお天気の様子を見ながら、その日の撮影場所に向かうこともあるし、日没や、月の満ち欠けによって、月の出や月の入り、新月の星空などを目的に撮影に行くこともあります。
――素晴らしい自然写真は、どうしたら撮れるんですか?
NANA 素晴らしい自然写真を撮る人には、共通した何かがあるように感じます。それは、猟師の人が狩りに行く時に山の神に祈るように、自然への畏怖の念と感謝を持っていることなんじゃないかな、と。友達の写真家と「自然への感謝の気持ちを持っていると、ミラクルな瞬間に立ち会えるよね」と話をしたこともありました。
私も常に「こんな素晴らしい光景に出会わせていただいて、ありがとうございます」という感謝の気持ちで撮影しています。自然へのリスペクトと、撮らせていただいている、という謙虚さを持つことが自然写真を撮る上では大切なんじゃないかな、と思います。
母なる大地、母なる地球へのリスペクトを持って、自然の中で写真を撮る。それが自然写真の撮り方ではないかな、と思っています。素人の人がプロの写真家と同じような写真を撮ろうとして、無理をすると危ないこともあります。グランドキャニオンなどでは、危険を冒してでもいい写真を撮ろうとして、滑落してしまう事故も、実は結構あるんです。また、脱水症になって命を落とす人もいます。ですから、決して自然を甘く見てはいけません。カメラだけではなく、行く場所に適した靴や装備、水や食糧など、万全の準備をすることも必要です。
――どんな風に撮影したらいいか、具体的に教えていただけますか?
NANA そうですねえ。もちろん、カメラの機種やレンズが良ければ、それに越したことはないですが、最新のスマホのカメラは、とても性能がいいので、結構、いい写真が撮れますよね。どんなカメラであっても、何を主人公にしたいのか、例えば、主人公にしたいのは山なのか、人なのか、夕日なのか、夕日に染まった景色なのか、1本の木全体なのか、1枚の葉っぱなのか、など、主人公を決めて、そこにストーリーを描くように撮ると、写真の味わいが違ってくると思います。それから、ちょっとしゃがんでみたり、アングルを変えて見ると、また違った世界が見えてくるかもしれません。
NANA 素晴らしい景色の場所で撮っても、思い描いていた天気じゃなかったりした時は、もし通える場所であるなら、何度も行ってみる。同じ場所でも、季節や天候や時間帯によって、二度と同じ光景はないですからね。
例えば、レッドロッククロッシングから見たキャセドラルロックという岩は、西日が当たった時が最高に美しい。また、私が「マジックアワー・ポイント」と呼んでいる場所は、夕映えの空が美しいんです。
夕映えというのは、日が落ちた後、東の空が紫っぽく染まってくる現象で、その時間帯をマジックアワーと呼ぶんですね。そして、西の方が晴れ渡っていれば、夕映えの東の空の地平線近くには、ヴィーナスのベルトと呼ばれるピンク色の層の下に地球影がベルト状に青く見える。同じ場所でも、何度も通っているうちに、どの時間帯がベストなのか、わかってくるんですね。それで、その場所を「マジックアワー・ポイント」と勝手に名付けたんです(笑)。
――夜空の写真を撮る時には、どうしたらいいでしょう?
NANA 星空の撮影は、スマホでは無理ですね。やはり、最低でも20ミリくらいの、なるべく広角で、ある程度明るいF2.8ぐらいのレンズくらいがないと難しいかと思います。私が使っているのは、20ミリのF1.4、もしくは14ミリのF1.8 のレンズです。ここで撮影の仕方を説明し始めると専門的になってしまうので、星空の撮影の仕方は、ネット検索してみてください。私も最初はネットで検索して手探り状態でいろいいろ試してみたんです。いつか、ご希望者がいれば、セドナ星空撮影ツアーとかしたいですね!(笑)
NANA 景色も入れて星を写したいと思ったら、昼間に下見に行って場所を決めて、岩山とかに焦点を合わせてレンズにテープを貼って、ずれないようにしておいて、夜に戻る場合もあります。夜になると暗くて、焦点を合わせるのが難しくなりますからね。もしくは、まだ薄明るいうちに行って、焦点を景色に合わせるか・・・
もし、そういう準備ができなかった場合には、一番明るい星を探して、その星に焦点を合わせます。その後、もちろん、編集は必要です。私はLightroomという編集ソフトを使っています。
NANA 月の出を撮影するには、十四夜がお勧めです。十四夜の月は、当たりが暗くなる前、夕映えの空に昇ってくるからです。でも、場所によっては、岩山が手前にあると、月が見える時間が遅くなるので、十三夜の方がいい場所もあります。
月は毎日、50分くらいずつ遅く昇ってくるので、十五夜になると、月が昇ってくる頃には、すでにあたりが暗くなっていて、月が光の点のようになってしまうんです。ですから、月そのものを望遠レンズで撮ったり、月の光で照らされた景色を撮影するのはいいのですが、周囲の風景との月の出を撮るには、十四夜がお勧めなんです。月をメインで撮るのであれば、望遠レンズがいいと思います。
今日も十四夜の月の撮影に行ってきます! なんにしても、自分がどんなストーリーを撮りたいか?というイメージを持つことが、大切だと思いますよ。
――大自然の中で写真を撮っていて、気づくことは何かありますか?
NANA 一番に想うのは、自分に与えられている、その一瞬、一瞬が、一期一会の出会いである、ということでしょうか。風景との出会いも、一期一会の出会いです。同じ場所であっても、その場所から見る雲の形や、光の具合、咲いている花や、見かける動物など、同じ瞬間は二度とない。よく「同じ毎日の繰り返し」というフレーズを聞きますが、そんなことは絶対にありえない。心のアンテナを広げていれば、毎日、私たちは奇跡に囲まれていることがわかるでしょう。自然の中で撮影をしていると、私たちは、二度とない、かけがえのない一瞬、一瞬を生きているんだ、ということを感じます。
NANA 自然に触れて、自然の美しさを実感して、好きな場所が見つかったら何度も通って、その自然の美しさをどう伝えようか、とイメージすること。そして、また逆に、マザーアースがあなたに何を伝えて欲しいのか、を感じてみること。
まずは自然に触れて、自然を味わって、そして、自分が自然の中で感じた気持ちを大切にしていただきたいなあ、と思います。
NANAプロフィール
東京生まれ。高校卒業後、スウェーデンに渡り、美術学校へ。その後、ストックホルム大学で、スウェーデン語と民族学を学ぶ。帰国後、アメリカ人と結婚し、アメリカ、アリゾナ州セドナに移り住む。セドナの自然を案内しながら、セドナ、そして北アリゾナの自然を撮り続けている。その他、ウエディング写真、ホームページ用写真、記念写真の撮影も行いながら、大自然の美しさを通して、命の尊さを伝えたいと想っている。写心(写真)家・ガイドの他に、誘導瞑想、エネルギーワーク、地元のサイキックなどのセッションの通訳、そして自らもヒューマンデザイン・リーディングというセッションを行う。
NanaさんのHPは、sedonana.com
YouTubeチャンネルはhttps://www.youtube.com/channel/UCvc67HqHocC8U3wDxSQkMSQ?view_as=subscriber
写真/NANA
構成/ 尾崎 靖(エディトリアル・ディレクター)