新型コロナ禍で在宅の時間が増えたことからか、運動不足の解消のためにジョギングをする人を多く見かけるようになりました。
「ジョギングって走れば良いんだから誰でもできるだろう」と思われがち……というかその通りではあるのだが、きちんと身体作りをするためには、走るペースやフォームが重要になってきます。
ノープランなペースで走ると、前半は快走していたのに中盤からバテバテとなり、後半には歩くのもままならないといったことも起こりかねません。
同様に、間違ったフォームで走ると、一歩ごとに身体に余計な負荷を掛けることに。これから長距離または長期にわたり続けていきたいと思うのならば、その一歩ごとの負荷の蓄積が膝や足首、腰など、様々な身体の故障につながっていく可能性もあります。
本来なら、トレーナーに見てもらうのがベストだが、さすがに日々の健康促進のために行なうジョギングに、コーチを付けるのはもったいない。そこで今回は、ド素人でも自分の走りをビジュアルで把握できるスマートフットウェア『ORPHE TRACK(以下:オルフェ トラック)』を試してみました。
自分のフォームを分かりやすく可視化してくれる
『オルフェ トラック』は、様々な計測センサーを備えたトレーニングシューズです。
まずは計測センサーのデバイスを充電した上で、シューズのインソールに装着します。Bluetoothでスマホの専用アプリと連携させてジョギングすると、一歩一歩の足の運び方が記録されていきます。
記録されるのは、足の着地する様子やペース、一歩ごとの足の運び方などです。
足が足裏の踵側で着地しているか、または爪先側で着地しいているのか(フォアフットやミッドフット)、左右にブレることなく綺麗に地面を踏んでいるかなどを、リアルタイムでも把握できます。
もちろん、足の裏の感覚が敏感な人は、センサーがなくても、自分の足の運び方を感覚的に把握できるでしょう。でも筆者を含めて初心者には、到底難しいことです。
そこで『オルフェトラック』で記録しておき、データをスマホアプリに蓄積し自身のランニングフォームなどをデータでチェックできるんです。
「あぁ、足が傾いて着地しがちだなぁ」とか「着地時にかかとに大きな負荷がかかり過ぎているのかもなぁ」などといったことが、誰にでも分かるというわけ。
ランニングして、その後に自分のフォームを確認する。そして次回のランニング時に、足の運び方を修正する。また、その次のランニング後にチェックして、さらに効率的に走れるようにする……といった具合に、正しい走り方を習得していけるトレーニングシューズなのです。
アプリで自分の走りが可視化される
まずは走る前に、Bluetoothでスマートフォン(アプリ)とシューズにセットしたデバイスとを連携させます。接続自体は簡単で、アプリの指示に従って、スマートフォンとシューズを近づければ、数十秒で連携できます。
アプリを起動させたまま走ると、アプリに自分の着地の状態がビジュアルで、ほぼリアルタイムに表示されます。着地がヒール寄りなのかフラットかフォアなのか、着地角度(プロネーション角度)やストライドの高さや長さ、もちろん距離や時間、ペースなども分かるのです。
さらに便利なのは、スマートフォンを持たずに走っても、走り終わってからデータをアプリに転送できる機能です。ジョギングの開始と終了を、デバイスが自動で検知してくれるのです。
スマホと連携しながら走り始めても、連携せずに走っても、データをアプリへ転送。アプリへの転送が終わると、走りの評価が見られます。
アプリでは、脚力/安定性/接地安全性/左右バランス/反発力がレーダーチャートで表示されます。それぞれがA〜Eの5段階での評価。そのうえ、短いコメントで、フォームを褒めてくれたり、今後の課題を提示してくれるところも秀逸です。
別ページでは、着地がヒール寄りであること、プロネーション角度、ストライドの長さや高さがビジュアルと数値で表示されます。そのほか1kmごとのペースタイム、着地の様子、さらに細かいペースや着地、プロネーション角度、ストライド、ピッチ、接地時間、着地衝撃力などの変遷がグラフで表示されます。
これらのデータを見て、完璧に自分の走りを分析するのは、素人の筆者には難しいです。ただ、まったく何も分からない状態よりは、次はもう少しペースを上げてみたら、安定性はどうだろうか? などと考える素材にはなります。
ただし、必ずしもジョギングに最適なシューズというわけではありません
『オルフェトラック』はランニングシューズというより、トレーニングシューズに近い存在です。正直に言えば、長距離走向けのシューズと履き比べると、走りやすいシューズとは言えません。
『オルフェトラック』は、あくまでも走行データを収集するためのスマートフットウェアだからです。
緩衝材となるインソールの中ほどに硬いセンサーデバイスをセットするわけですから、違和感があることのは当然のことです。
筆者が初めて『オルフェトラック』で走った時にも、いつもと比較してスピードが乗らず、それだけでなく走行途中から足の各部にいつもより多くの負荷がかかっていると感じました。また、無理のないペースで走っているつもりなのに、呼吸が乱れました。
対策として2回目以降は、走り出す前にウォーキングを10分くらいするようにしました。また、いつもよりも出来るだけ踵で着地しないよう心がけました。すると、最初の時よりも、かなり自然と走れるようになりました。
このように走るのにちょっとコツが要るんです。
ただ、この違和感が改良される可能性が高いです。というのも今年のはじめに、『オルフェ トラック』を開発したno new folk studio社とアシックスが、共同でスマートランニングシューズを開発中だと発表し、今年中には新製品が発売される予定だそうです。
筆者の場合で言えば、目下、『オルフェトラック』のシューズで走る時には、だいぶペースを落としています。いつものランニングシューズで走った場合とは、結果が異なっているはずです。
なおかつ自分の走りを分析するためのデータが収集できれば、より楽しく、そして継続的にジョギングを続けていけるでしょう。
本製品でも十分な情報を知ることができますが、前述のような違和感が軽減されるかどうか、アシックスとの共同開発による新製品の使い勝手や履き心地も楽しみなところです。
SPEC DATA
サイズ:24/26/27/28cm
重さ:約350g
no new folk studio | ORPHE TRACK(オルフェトラック)
https://orphe.shoes/track/
構成・文・写真/河原塚英信