絵本作家:村上康成さん
絵本やワイルドライフアートなどで、独自の世界を展開。「ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞」をはじめとした各賞を受賞。
写真の向こうへと入っていき、奮い立たせてくれるような世界を描いた傑作たち。
「小学生のころ、地元の付知川(岐阜県)に潜って眺めた、アマゴが泳ぐ水中世界が、あまりにも強烈だったんです」
そう話してくれたのは、絵本作家の村上康成さん。原風景を抱きながら絵本作家になるべく上京し、『アユ・ヤマメ・イワナ』に出会うと、週末ごとにヤマメ釣りに出かけた。
「ヤマメそのものはもちろん、彼らが生息する環境そのものが美しく、健康的な自然にある象徴として、憧れていたんです」
そうして最初に手がけたのは、ヤマメの絵本『ピンク、ぺっこん』(徳間書店)だった。
「そういう経緯からか、写真集は奮い立たせてくれるような世界を描いたものが好きですね」
それは、自身の表現者としての思いにも通じるという。読む人が絵本に入り込み、いつしかその人自身の物語になるような世界を描きたい……。
「そんな、想像を楽しむ余地のある本が、ぼく自身好きなのでしょうね。写真の世界に入っていけるもの、そんな気持ちを呼び覚ましてくれるもの……それがぼくと写真集の関係であり、ぼくの作品もそうあってほしいと願っています」
野鳥:鳥たちの生態をユーモアを添えて記録した一冊
『WING―野鳥生活記』
「鳥たちの愛らしい生態を、ユーモアをこめてていねいに記録した写真集。抱卵するアジサシが涼みに出た瞬間、チドリがやってきて自分の卵と間違えて抱卵する……みたいなシーンも。最後はアジサシに怒られるんですけど(笑)」
和田剛一著 ¥2,600 1995年小学館 127㌻ 26×22㎝
渓流魚:原風景にも重なる、思い出の写真集
『イワナ・ヤマメ・アユ―清流に躍る』
「表紙の写真は、ぼくの原風景である付知川の水中世界のよう! 1979年の出版当時、渓流の水中写真は見たことがなく、感激しました。子供のころから渓流魚への思い入れが強く、そういう意味でも大切な一冊です」
どのページにも思い入れがあるが、印象的なのはイタチがヤマメを捕らえる写真。「ヤマメが生息する環境そのものを、愛しています」
桜井淳史著 ¥2,900 1979年平凡社 122㌻ A4変形判
魚類:魚好きの心をくすぐる、眺める肴
『ビジュアル版日本さかなづくし』(全4巻)
「魚は見ることも釣ることも、食べることも好き。全4巻のこの図鑑は、各魚介類の捕獲法や釣り方、それにまつわる歴史的な背景や風物詩、さらには料理法などが網羅され……いわば、極上の眺める肴です(笑)」
阿部宗明・末広恭雄監修
1985年 講談社
トラウト釣行記:野生鱒の生態記録とアメリカ原野の旅模様
北アメリカ 全野生鱒を追う―全23種類の探査釣行』
「フライフィッシャーマンの夢みる世界が詰まった一冊。北米に生息するトラウト23種を釣り、生態写真を記録しているのですが、そこにいたる旅の描写もすばらしい。余談ですが、この旅に何度か同行させてもらいました」
和田悟著 ¥2,700 2000年
山と溪谷社 191㌻ B5判
※構成/麻生弘毅 撮影/永易量行
◎紹介している本の書誌情報は、すべて発行当時のものとなります。
(BE-PAL 2020年7月号より)